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(誰からの手紙だったんだろう……)
先程の手紙の事が気になるエリスは前を見ながらボーッとその事を考えていた。
すると、自宅が見えてくると同時に、家に明かりが灯っている事を不思議に思ったエリスはギルバートに、
「あの、ギルバートさん……お部屋に明かりが点いていますけど……」
そう声掛けをすると、
「ああ、問題無い。俺を訪ねて来た人間が居るだけだ。先程の手紙はそれを知らせるものだったからな」
部屋に明かりが点いている理由と先程の手紙がどういうものだったのかを知る事になった。
自宅前に辿り着いてリュダが足を止めたので二人が降りていると、玄関扉が開いて中から人が出てくる。
姿を見せたのは六十代くらいの男で、白髪混じりの腰くらいまである長髪を後ろで一つに束ねている。
そんな彼はギルバートを見るなり背筋を正して一礼した。
「お帰りなさいませ、ギルバート様。ご無沙汰しております」
「ああ、久しぶりだなタルサ。待たせて悪かった。エリス、悪いがリュダを小屋へ繋いで来て貰えるか?」
自宅で待っていた男をタルサと呼んだギルバートはエリスにリュダの手綱を手渡すと、横付けしてある小屋へ連れて行くよう頼む。
「あ、はい。分かりました」
頼まれたエリスは返事をすると、自身に視線を向けていたタルサに軽く会釈をした後でリュダを連れて小屋へと歩いて行く。
(タルサさんって、何者なんだろう? ギルバートさんを『様』付けで呼んでたって事は、ギルバートさんの方が立場的に上だったって事……だよね?)
リュダを小屋へ繋ぎ、水を飲ませて背を撫でながらエリスはタルサについて考える。
年齢的には明らかにタルサの方が上なのだが、身分的にはギルバートの方が上という二人の関係が気になって仕方が無い様子だった。
一方、先に自宅へと入ったギルバートとタルサは、
「それで、頼んでいた件はどうだった?」
「ええ、それはもう、抜かりなく」
「そうか。悪かったな、急に色々頼んで」
「何を仰いますか、私とギルバート様の仲ではございませんか」
「そうだったな」
何やら意味深な会話を繰り広げているものの、表情を見る限りそこまで深刻な内容という訳ではないらしく、時折笑みを浮かべていた。
そんな二人の元へ、
「ギルバートさん、リュダを繋いでお水をあげてきました」
リュダを小屋へと繋いで水をやり終えたエリスが部屋へ入って来る。
「ああ、ありがとう」
向かい合わせに座り、何やら話をしているギルバートとタルサを前にしたエリスは自分が居ては邪魔になるかもと思い、
「あの、お話があるようでしたら私は席を外す方が良いですかね?」
このままここに居ても大丈夫なのかを問い掛けると、
「問題無い。というより、お前が居なくては意味が無いからな。ここへ座ってくれ」
ギルバートは手招きをして自身の横にある椅子へ腰掛けるよう促した。
「失礼します。あの、それで……どのようなお話をなさっていたのでしょうか?」
自分が聞いても問題が無いと分かったエリスは一言断りを入れてギルバートの横の椅子に腰掛けると、二人にどんな内容の話をしているのかを尋ねた。
「まず初めに話しておくと、このタルサは俺たちの味方で協力者だ」
「初めまして、エリス様。私はタルサ・ナユモンドでございます。ご挨拶が遅れてしまい大変失礼致しました」
「いえ、あの初めまして……エリスと申します」
タルサが名乗り、それに返す形でエリスも名乗るも、それ以上踏み込んだ質問が出来ず、タルサとギルバート二人の関係が気になるエリスはどこかそわそわしたまま。
そんな彼女の落ち着きの無さを前に、何かを感じ取ったタルサは、
「ギルバート様、恐らくエリス様は私とギルバート様の関係が気になっているかと」
まるでエリスの心が見えているかのように的確に彼女の心を読み取ったのだ。
「あ、す、すみません……。詮索するつもりはないのですが、その、お二人は年齢も離れていらっしゃいますし、どういう関係なのかが、気になってしまって……」
「ああ、そうか。まあそうだよな。ただ、悪いな、それについては、今はまだ詳しく話す事は出来ないが……タルサは俺が幼少期の頃から付き合いがあって、離れていた時期もあるが、誰よりも一番信頼を置いている存在だという事は知っておいて欲しい」
「は、はい……分かりました」
詳しく話す事が出来ないという意味深な言葉が気になるものの、『今はまだ』という言葉が付いていた事から、いつかは話して貰える事が分かり、今はその説明で納得し頷くエリス。
何にしてもタルサという協力者がいる事は心強く、他でもないギルバートが信頼を置いているというのだから、とても凄い人物なのではないかとエリスは密かに期待していた。