みことは友達数人と学食でおしゃべり中。
そのテーブルの斜め向かい、少し離れた場所に、すちの姿があった。
あくまで“友達”の距離。
周囲には付き合っていることなんて、誰も気づいていない。
でも…
(……また俺の方見てる)
すちはスマホを見ているふりをして、 ちらちらとみことの方を見ていた。
みことは気づいていないふりをして、
机の下でスマホをそっと操作する。
《そんなに見られると、照れるんやけど》
少しして、すちのスマホが震える。
《みこちゃんがかわいいのが悪い。》
(……またこんなこと言って)
みことは小さく笑って、
少しだけすちの方を向いて穏やかな表情を見せる。
すちはそんなみことに満足げに目を細めた。
━━━━━━━━━━━━━━━
みことが男友達と笑いながら話しているのを、 少し離れたテーブルから見つめるすち。
(……みこちゃん、俺以外の前でも、あんな顔で笑うんだ。)
その男がみことの頭を軽くぽんと触れた瞬間… カップを置く音が、ほんの少しだけ強くなった。
みことが戻ってくると、すちは静かに顔を上げる。
「……誰? あの男。」
「え? ああ、同じゼミの人。面白い話しててさー。」
「楽しそうだったね 。」
「うん、めっちゃ笑っちゃった!」
「……そっか。」
すちの声が、わずかに低くなる。
「……な、なんか怒ってる?」
「別に。みこちゃんが誰と話してようと、自由だし。」
「……でも、その言い方……怒ってるときの声だよ、すちくん。」
「……じゃあ言うけど、俺以外に頭触らせないで。笑顔も見せすぎだから。」
「……え、だってただのゼミの話で」
「……無自覚でそういうことするの、ほんと罪。」
すちはため息混じりにそう言って、 ふいにみことの手をテーブルの下で握り込んだ。
「……誰にも見えないとこで、こうやって触らないと、落ち着かない。」
「……すっちー……」
「みこちゃんの全部が好きなんだよ。だからこそ他の誰かがそれに触れるのが、嫌なの。」
みことはそっと手を握り返し、微笑む。
「ごめんね。……すっちーが好きだってこと、もっとちゃんと伝えるね。」
「……口だけじゃ足りない。後でお仕置だから」
「……う…うん、わかった。」
━━━━━━━━━━━━━━━
♡400↑ 次話公開
コメント
2件
今日見つけたんですけど、好きすぎて一気見しちゃいました! こんな表現の仕方があるんだ~と、自分には思いつかないような表現方法で、尊敬します。(語彙力なくてごめんなさい(>_<))