テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#執着攻め
15
こはる
中里たちへの復讐を実行した翌日から、シュートは一週間の停学をくらった。2のAも三日間の学級閉鎖となった。シュートに壊された中里たちは全治約6ヶ月と診断され、失った目は全員二度と元に戻らないとのことだった。板倉の顔も全治約3ヶ月と診断されていた。
停学をくらっている間のシュートは、暇つぶしがてらに異世界で建てたマイホームの改装にいそしんだり、モンスターと戦って鍛えたりなどしていた。
自宅の地下室について、父・彰司はネズミなどが入ってこられないよう扉を厳重に施錠するようになった。これに対しシュートは土魔術の錬成で鍵を創り出して、それでいつも通り開け閉めするようにした。
そしてあっという間に一週間が経って、シュートは中学校へ登校する。今度はショートカットとして「空間転移術」ですぐに学校へワープした。
以前と同じ、多くの生徒から注目される中で校門を通過しようとしたところで、生活指導の教師と目が合う。彼は顔を真っ青にさせてシュートから顔を逸らした。シュートは何も言わずに校舎に入って自分の下駄箱へ向かう。
すると自分の下駄箱の前に数人の生徒が立っている。彼らの手にはお菓子のゴミや何かを書いた紙が握られている。それを目にしたシュートは殺意を覚える。
「あァそうか、こんなふざけた真似をしたクズどもは、お前らだったか」
シュートの声に生徒たちはギョッとして振り向く。彼らが知るシュートはまだ異世界へ行く前の彼しか知らず、目の前にいる少年がシュートであることに気付いていない。
「捜す手間が省けて助かるわー。とりあえず今すぐ復讐するか」
そう言ってシュートは「空間転移術」で、下駄箱を汚そうとした生徒たちを異空間へ移動させた。ここなら誰の目に留まることもなく、時間の流れも遅いからじっくり復讐も出来る。
「ひっ、何だここ……!?」「何がどうなってるんだ!?」「う、うわあああ……!?」
突然異空間に飛ばされた生徒たちはひどく狼狽える。考える時間も与えるつもりはないシュートは、一番近くにいる生徒を掴んで、地面におもい切り叩きつけた。
ベキャ 「ぎべぇえ!?」
「お前らが、先週も俺の下駄箱と上履きを汚しやがった連中で良いよな?早く登校してみるもんだな、まさかあんな堂々と犯行に及ぼうとするなんて思わなかったわ。まぁお陰でこうやって、復讐ができるってことで!」
その後もシュートは感情・本能のままに生徒たちを痛めつけて、虫の息になるまで壊した。
「あ”……っ」「助け、て……」「なんで、こ…んな……」
シュートは一人の生徒の髪を掴んで顔を合わせて話しかける。
「お前らはあのクソ女のファンか何かなんだってな。あのクソ女と中里が流した、俺がストーカー野郎っていう嘘の噂を真に受けて、俺に陰湿な虐めをした、ということなんだよな?
正面から殴ることもできない臆病者ども。安全なところから陰湿な攻撃ばかりして、満足か?」
「こ、この悪魔……!板倉さんをよくも、傷つけやがって!」
「その板倉が先に、俺を貶めたんだよ!だから復讐したんだ!つーか何、自分たちは悪いことしてない、みたいな感じ出してんの?嘘の噂を真に受けただけの分際どもが、正義漢ぶって俺を成敗した気にでもなってんのか?
反吐が出るんだよクソゴミどもがっっ」
ブチ切れたシュートは生徒たちの爪や歯も剥いで引っこ抜いた。断末魔の叫びを上げて苦しむ彼らの様を、シュートは冷たく笑いながらさらに痛めつけるのだった。
復讐して壊した生徒たちを屋上へ放って捨ててからシュートは教室へ向かって行く。二年生のフロアに着いたところでいつもと違うことに気付く。すれ違う生徒が皆、シュートを避けているように見える。
実際彼らはシュートの姿を見ると驚き、そして何やらヒソヒソと小声で何かを話し始める。そして誰もがシュートに関わらないように、わざわざ距離を取って避けていく。誰もがシュートに奇異や畏怖の視線を向けている。
二年生たちは既に先週の事件のことを知っている。シュートが化け物みたいに強くなっていて、そんな彼に中里や板倉が病院送りに遭ったことなどを知らされている。
「はぁ~~あ」
周りが何を思い、何を考えているのかシュートには全く分からない。ただ良くない感情しか向けられていないことは伝わっていたのだった。
廊下にいる生徒たちからの鬱陶しい視線を避けるべくさっさと教室に入ると、ここでもシュートに良くない感情が多数向けられる。
「「「「「………………」」」」」
教室を支配しているのは恐怖、そして不快感。すべてシュートに向けられているものだ。シュートが自分の席へ歩いている間も、皆は目を逸らしたり目を伏せながらも彼を見たりしている。
ただ紅実だけには、そういった感情も態度もなく、シュートにどう話しかければ良いのかと躊躇しているだけだった。
(あれだけ暴れたら、やっぱこうなるか。分かってても、さすがにこれはうざいなぁ)
わざとらしく机に足を乗せながら、シュートはあーあーと声を上げる。
「何なのお前ら?さっきから気持ち悪い視線たくさん向けやがって。言いたいことあるなら言えばいいじゃん?」
傲然とした態度をとり、煽る口調でクラスメイトに呼び掛けるシュートに、一人の男子生徒が近づいてくる。クラスのカースト上位にいて、中里たちによる虐めを見て笑ったことがある生徒だ。
「な、何で……普通に登校して来てんだよ…?あんなことしておいて」
「は?何でって、停学が解けたから今日から普通に登校しにきただけだけど?」
「何だよそれ……この、人殺しが……っ」
「いや殺してないから。半殺しにはしたと思うけど」
男子生徒の非難をシュートは鼻で笑う。すると周りから囁き声が次々と上がる。
「あそこまで痛めつける意味あったのかよ……」「あれはさすがに、無いよね……」「ていうか本当にこのまま出席する気なの?」「え、最悪なんだけど……」「怖くて授業に集中できねーよ……」
口々に上がる自分への陰口に、シュートが切れようとしたその時、目の前にいる男子生徒が突然叫び出す。
「早く、出て行けよ!」
男子生徒は体を震わせながらもシュートを睨みつけて言葉をぶつけた。クラスメイトのほとんどが思っていることを、彼が代表して口に出したのだ。
しかしそれは勇気とは言えない。怯えと恐怖故に出た言葉だった。事実男子生徒はパニックを起こしかけている。シュートが怖くてたまらなく、早く教室から出て行ってほしいと願っている。
「はっ、何意味分からないこと言って……あ?」
嘲りながら周りを見ようとしたところでシュートは気付いた。クラスメイトたちが、何故かまとまったように自分を睨んでいるということに。それが段々と一つの塊となってシュートにのしかかるようだった。
「はぁ?何だよその目は」
シュートはその光景が無性に腹立たしく思った。自分を非難する言葉も許せなかった。大きな力を得ても、他人の陰口を流すことが出来ない。体の成長に心が追いついていないから、シュートはこの状況にひどく腹を立てている。
(見て見ぬふりをしたり笑ったりして、俺を見捨てておきながら……何なんだこいつらは。中里たちが明らかに悪いのに、どうして俺が針の筵に晒されなきゃいけないんだ?
こんな時にだけ団結しやがって、質《たち》が悪いにも程がある……っ)
シュートの中から、破壊願望が芽生えてくる。
(こいつら、中里と板倉がどういう奴らなのかちゃんと知らないから…。俺だけが知っている。俺はあいつらに理不尽に虐げられたことがあるから。でもそれは、他の奴らには関係のない話として済んでしまう。だからこいつらには分からない。だから俺だけを一方的に非難しやがる……!)
理屈は何となく分かっているシュートだが、感情が彼らを許すことを良しとしなかった。
とりあえず目の前にいるこいつを壊そう、とシュートは立ち上がって男子生徒を睨みつける。睨まれた男子生徒は顔を盛大に引きつらせて床にへたり込んだ。
「シュート君、ダメだ……!」
紅実が慌ててシュートの前に立ち、彼の腕を掴んで止めようとする。
「花宮、お前はどっちの味方なの?俺か、このクズどもか」
「わ、私は………シュート君とみんながこんな、敵対してほしくないと、思ってる……」
「敵対?そら敵対したくもなるだろ。虐めを見て見ぬふりをしたり見世物として笑ったりするようなクズどもなんか、全員俺の敵だ。
そう、こつらは全員俺の敵だ!」
「………!」
シュートの剣幕に紅実は怯み、身を硬直させる。掴む力も弱くなって腕を離してしまい、シュートに悲しい目を向けることしか出来ないでいる。
「何?お前はまだクラスがみんな仲良くなれたらなーとか考えてるわけ?もうとっくにそんな次元は超えてんだよ。俺とお前らとの関係はもう修復不可能なとこまでいってんだよ」
シュートの言葉に紅実は何も言い返せないでいる。彼女も本当は分かっているのだ。シュートがクラスメイトたちと仲良くするあるいは上手くやっていくことはもう不可能に近いと。
「私が……もっと早く、君が虐められてるのをどうにかしてあげられていたら………」
「力が無いお前に、そんな期待はしてねーよ。まぁお前だけはクズじゃなかった、それだけは分かる」
未だ床にへたり込んでいる男子生徒に蔑んだ一瞥をやったきり、シュートはもう何もしようとはせず席に座った。クラスメイトたちはそんなシュートをいつ爆発するか分からない爆弾としか思わなくなっている。全員もはや生きた心地がしない状態でいた。
そんなクラスメイトたちにとって救いの訪問がきた。教頭がシュートを呼び出しにきたのだ。
「大至急、校長室に来るように」
それだけ言ってさっさと出て行く教頭を見たのち、シュートも教室から出ることにする。その際学生鞄も持っていく。
(もうここには、俺の居場所なんて無い……)
シュートはクラスメイトたちを完全に見限ることにした。悲しそうに自分を見ている紅実に冷たい一瞥を向けて、教室から出て行った。
「毎日毎日……俺を馬鹿にし、蔑んだクズどもが。お前らが俺を見捨てたことへの悲しみとか怒りとか、もう無くなってる。
お前らにはもう、不愉快という感情しか湧かねぇよ。全員、死ねばいいんだ」
紅実や2のAの生徒たちがシュートを教室で目にすることは、この日が最後となる。もう二度と彼をここで目にすることは訪れないことを、後に全員知ることになる。
コメント
1件
うわ……読んでて胸が締め付けられました。シュートの孤独がどんどん深まってて、復讐をしても全然スッキリしないんですね。むしろ「自分はもうここに居場所がない」っていう確信が強くなってしまって、紅実でさえ止められなくなってるのが切ないです。クラスの空気、あのヒソヒソと避ける感じ、すごくリアルで嫌な気持ちになりました。でもだからこそ、次どうなるのか気になります。