ぎゅっと瞑った目を開けると、そこは土手の上らしく、空が真っ赤に染まっているのが見えた。
「これが…夕焼け?」
私達の世界、つまり創造神か文字に起こした“夕焼け”しか知らない私は、自分の瞳に映る本物の夕焼けにすっかり見惚れてしまっていた。
息をするのも忘れて、ただ夕焼けを眺める。
なんだ、創造神の表現よりもずーっと綺麗ね。
創造神、表現が案外下手だったのかしら。
本物の夕焼け、ずーっと憧れ続けた景色が、目の前に広がっている。
辺りを見渡すと、たくさんの人が、それぞれの場所を目指して歩いている。
そして、土手の下には1本の川が流れていて太陽の光が反射して、キラキラと輝いている。
眩しくて思わず目を細めてしまうけど、目を話すことはできなかった。
ディアがこの景色を見たらなんて言うかしら?
きっと驚くでしょうね。
もう少し、ここで夕日を眺めていよう。
そう思って、土手に座り込む。
太陽はどんどん建物の群れに沈んで行った。
***
辺りが暗くなり、月明かりと街灯の明かりが目立ち出した頃、私は一つ深刻な問題に気づいてしまった。
「待って…私、どこで寝るの?」
心臓が一際大きく脈打ったのを初めに、バクバクと激しく動き出す。
自分の体から、飛び出してしまうんじゃないかと思うくらいに。
身体中がピリピリしてきてた。
今まで見惚れていたはずの夜空が、誰もいない静かな土手が、全て恐ろしく思えた。
「どうしよう、どうしよう、どうしよう!!」
頭を抱えて、そう叫んでみる。
もちろん周りに誰もいないので、私の言葉に答えてくれる者は居ない。
「問題はそれだけじゃないわ! 創造神ってどんな学校に居るの? 創造神の家は? そもそも学校ってどこよ?!」
考えれば考えるほど、この計画は穴だらけだった。もっと時間をかけて、じっくりと情報を集めるべきだった!
というか、ディアは気づかなかったの?!
私はそこまで考えてないわよ!
「い、今何時?」
ポケットに入れた懐中時計を見ると、時刻は夜の10時半。真夜中だ。
もういっそここで寝ようかしら?
そんなことも考え始めた、その時。
「ちょっと、そこの君。」
後ろから、誰かの声がする。
男の人の声だ。もしかして、創造神?
思い切って後ろを振り向くと、そこには自転車を押して歩く、男の人の姿があった。
この人がどんな人かは分からない、ただ分かるのは、今まで土手を歩いていた“普通の人”じゃないことは分かる。
ニコニコと笑ってはいるものの、なんだか怖い。
「は、はい、何かしら…」
「君、中学生?」
「えぇ、そうだけれど…」
これ以外にも、「親御さんは?」とかたくさんの質問をしてきた。
どうやら私みたいな子供は、夜遅くに出歩いてはいけないらしい。
さて、ここで新たに一つ問題が発生した。
私に、「親御さん 」なんて居ないのだ。
創造神が親、という所はあるけれど、そんなこと言っても信じて貰えない事は私にもわかった。
さあ、どうしよう。
目の前の人に散々お説教をくらい、涙目になってきた頃。
「おい、ソラ。そこで何をしている。」
後ろから、少し怒った女の人の声が聞こえた。
今度は何? 私に何をしようって言うのよ!
でも、この人なら助けてくれるかもしれない。
相変わらずうるさい心臓を抑えながら、恐る恐る後ろを振り向いた。
「ソイツの親だ。 さぁ、ソラ、うちへ帰るぞ。」
「えっ? あ、でも……」
「どうした、寝ぼけているのか? 夕飯までには帰ってこいとあれほど言っただろう?」
「はぁ?」
私がピタリと立ち止まると、女の人はキッと私を睨んだ。
「話を合わせろ」とでも言いたげに。
その後ろでは、さっきの男の人が怪訝そうに私達を眺めていた。
「は、はーい。お母様。」
この状況を抜け出すにはこれしかなかったのよ。きっとね。
女の人に手を引かれ、私達は土手の端っこの方まで歩いていった。
***
テスト期間、終わりましたー!ヤッター
それでもう勉強しなくて済みますね!
さて、最近暑い日が続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。私は暑すぎて溶けました。
これから夏休み!という方も多いと思います。熱中症には十分注意してくださいませ、水分補給、大事です。
以上現場より液体になった作者がお送りしました。それではまた次回〜