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麟兎
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#子供
虎神るの🐯✞💛@飽き性
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「結婚するって言ったじゃん」
付き合って数ヶ月の、馬鹿みたいな一言を、別れて数ヶ月で、馬鹿みたいに思い出すことがある。
墨田区の、スカイツリーにやたらと近い最寄り駅、押上を、私は意味もなく歩いていた、今日は休みの割に退屈で、色んなことが嫌になって、宛もなく旅をしてやろうと思ったのだ。
例えば、これから先、別にあの人と居れなくても、笑って、誰かを笑わせて、楽しんで、誰よりも賑やかに、面白く生きていく事ならいくらでもできる、でもこの先誰にも出会わなかったらきっと私は私でなくなる。
改札で止められる、ぼーっとしていると視界の端にも入らなかった人混みが全て敵のように見える。
エスカレーターをわざわざ駆け上がって、通知を片っ端からスライドして消して、踏みつけるようにアスファルトを蹴って、急いだ先に待っている人はいないのに、駅はどうしてこんなにも私を急かすのか
缶コーヒーの空っぽのものが、カランと転がる音がした煩わし見たさでちらりと振り返った時、意味もなく回っていた足が、また意味もなく止まった。
そこに居たのは一人の少女だ、こんな駅には似合わない、古い貴族の幼い令嬢のような服装や髪色、顔立ち、それなのに随分とぐずぐずした顔で痩せた喉で自販機の空ききらないゴミをあさって水を求めていたようで、慣れない黒いコーヒーのせいで、肺に病いでも拵えたように、がはがは、がはがは、と咳き込んでいたのだ
「あ、あなた、何してるの?保護者…親はどこなの?」
焦って聞いた私に少女はこう言う
「水をくれませんか」
慌てて私はカバンに入れていた駅前特有のやたらと値の張る水を差し出した、空気を飲み込むように、水に顔が食い込むように、必死で水を飲む少女はどこか虚ろな目をしていた。
「アンタどこから来たの?」
どうしようもなく意味がわからなくて、元からどうしようもなく何か苛立っていた私は少し強い言い方で聞いた、少女は答えた
「あなたが産んだんだよ」
意味が、分からなかった
「は?」
私は、子供を産んだ覚えはない。もちろん妊娠も中絶もしたことがない、それに、見たところ7〜8歳程度のこの子を私が産んでいたとするなら私は17で子供を産んでいることになる。でも、私は18になるまで恋人も出来たことはない、おかしい、全てがおかしい、でも、確かに私の面影はある、例えば目元は特に私に似ている、コンプレックスだった一重が整った目鼻立ちと合わさって、綺麗な顔になっている。
その口元にある一際大きなホクロに気がついた時、私は心臓を薬剤に突っ込まれたような心地になった、あの人と、同じ口元をしていた。
唖然とする私を気遣うそぶりもなく少女は口を開く
「結婚するっていったじゃん」
「キスして、ハグして、ずっと一緒にいようねって」
「ねぇ、いつか神奈川に家を持って、同棲して、結婚して、子供育てるって言ったじゃん、女の子だったら結衣って名前つけようねって」
私は硬い駅のタイルをガンッと力一杯足で鳴らした
「もうやめて!!!言わないで!それ以上…何も」
ヒステリックに叫んだ、息が、息が、できなかった。
「そんなに怖い顔しないで、お母さん?ゆい困っていたんだよ」
少女は、あっけらかんと続ける、私の気持ちなんて、何も分かってないみたいに。
確かに、私の面影はある、でも口も鼻も、おでこの広さも、だらんとしていて少し具体的な丁寧な言葉を使うところも、全部あの人の一部だった、それに、私の一重はたぶん、こんなに綺麗じゃなかったと思う、今はもう、分からないけど
「私は多分、アンタのお母さんなんかじゃない、きっとあなたは私が知りすぎてしまった人と、私が全く知らない人との子供よ」
子供にそんなに重い事情をぶつけるのは気が引けて、少し言葉を濁した、私が親だとしたら、あんな貴族みたいな格好はさせない、とも思った 彼女はこう言った
「絶対そうだよ、この宝物は全て、お母さんのクローゼットルームから持ってきたんだもん、指輪も、スカートもスカーフも、ラリアットもコレ、全部お父さんからプレゼントされた物でしょ?」
そう言って、シュシュで端を結んで、小さな腰に履いている、高そうなスカートを小さな手で広げた。 目の前で起きていることを飲み込めなくて、咀嚼と反芻と吐き気を繰り返していた。
「あの人は、私のこと、もう嫌いなんだって、もう何も繋がっていないの」
私は涙を堪えてそう言って、そこから去ろうとした
「知ってるよ、だから困ってるの、私のお家無くなっちゃったもん」
またあっけらかんと言って、彼女は背を向けた私の手を握る
「だから、私はアンタの母親なんかじゃ…」
「いいから連れてって、お腹すいたよ」
「交番に突き出すよ」
私は口を尖らせて冷たく言い放った
「いいの?私を捨てちゃうの?お母さん、私のことだけは大切にすると言ったのに、『もう、私に未来はないから』って」
未来はない、そう聞いて、脊髄(せきつい)がくるっと何かを消化し始めた、なにか、大切なものを、私はすでに失っている、そんな気がした。
コメント
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うわぁ、めっちゃ引き込まれた…!😭✨ 最初のモノローグからエモすぎて胸がギュッてなったよ…「結婚するって言ったじゃん」ってタイトル回収、ずるいでしょ…! そして駅で出会った少女の「あなたが産んだんだよ」——もう意味わかんないけど、確かに主人公の面影も元彼の面影もあるって描写が細かくて、めっちゃ気になる…! しかも「未来はない」って言葉が脊髄で消化される感覚、すごくリアルだった…続きが待ちきれないよ…!💕