俺が強さを求めていた意味。
心の底から湧き出る弱者への嫌悪感。
全て、貴女のせいだったんですね、恋雪さん。
無限城で炭治郎と義勇の戦闘で、俺は全て思い出した。
俺が嫌いなのは、井戸に毒をいれるような弱者。親父の最期の言いつけですら守れない自分自身。
女を喰いたくないのは恋雪さんを彷彿とさせるから。
血鬼術の紋様が何故か雪なのも、技名が全て花火に由来しているのかも。
全て思い出した。
親父。
師範。
恋雪さん。
全ての罪を償おう。
そして、また恋雪さんを愛そう。
そして俺は自らの不死の身体に拳を打ち込み、自害をした。
「……っ…ここ、……は……」
そこは、闇と光が交差する場所だった。
「狛治さんっ!!」
「……恋雪…さん。」
「…… ありがとうございます。俺を猗窩座から、狛治に戻してくれて。」
俺の前にいるのは、愛する妻。恋雪さん。
彼女はもう何百年も前に、井戸に入れられた毒によって殺された。
ずっと、待っててくれたんですね。
「……また、俺は貴女を…愛する資格は、
ある……でしょうか……?」
怖かった。返答を聞くのが。
150年も気付かず、気付こうとせず。
自身の妻を放っていたのだ。
……資格なんて、あるはずが
「もちろんです!」
力強い答え。
病弱で床に伏していた彼女から発せられた
声とは思えなくて。
俺はその場で泣き崩れた。
たくさん、たくさん たくさん話をした。
時間が来るまで。
闇が濃くなり、
明かりが減った。
俺がこの先行くのは闇__地獄。
恋雪さんは、天国。
楽しかった。沢山話せて。
でも、これで離れ離れだ。
「……恋雪さん」
「はい?」
「時間のようです。」
そう言って彼女に背を向けた。
俺は振り返らず、
「ありがとうございました。」
そう言って、去ろうとした。
その時、恋雪さんが
足にしがみついてきた。
「いや、いやです!狛治さん!」
「っ!ですが、貴女は何も!!
このままだと闇が明かりを呑み込み
貴方まで地獄へ!!」
「いや!!私!
まだ貴方の口から聞いてません!!」
はっとした。
…そうだ。俺は。
「私も…そっちに連れてって……
狛治さん……」
苦しい。
彼女は
巻き込みたくなかった。
でも。
恋雪さんをおぶる。
「愛しています。
恋雪」
そう言って俺は、
俺達は
闇へと歩むのだった。