またまた怖い話見つけてきました。投稿遅くなってゴメンナサイ(;・∀・)[あと、この話めっちゃ長くなったから、覚悟しておいたほうがいい。]
「17人目の乗客」
それは、、
朝から空にはどんよりした不穏な雲がたちこめる、
令和○年1月6日のことだった。
市中心部の会社に勤める独身サラリーマンの笹井は仕事後、珍しく同僚と居酒屋で飲む。
というのは明日は彼の誕生日であり、普段から公私ともに親しくしている同僚が祝ってあげようと誘ってくれたからだった。
混みあった居酒屋店内の奥まったところにあるカウンターに彼らは並び座ると、
「いよいよ三十路突入おめでとう。
お前も明日からとうとうオッサンの仲間入りだな」
という同僚の言葉とともに、二人はジョッキを軽く衝突させる。
カチンという小気味良い音とともにしばらく二人は下らない四方山話に花を咲かせていた。
そしてどれ程が経った頃か?同僚はピンク色に上気した顔で笹井にこんなことを問う。
「ところでお前、生まれ変わりとか信じるか?」
いきなりの話題転換に笹井は戸惑いながらもしばらく思案した後、
「そうだな、信じる、、というより信じたいかな」と曖昧に答えた。
「俺もだ。
じゃあもし生まれ変われるとして、次はどうなりたい?」
再び笹井は頬杖をついて考えると、口を開く。
「そうだなあサラリーマンはもう十分堪能したから、今度は全く違った仕事をやりたいかな。
俺、車好きだからトラックやタクシーの運転手とか良いかもな」
※※※※※※※※※※
久しぶりの外飲みで笹井も同僚もかなり酔っぱらい時間感覚が麻痺してしまっていたせいか、二人とも終電を逃してしまう。
それで各々タクシーを拾い、帰宅の途に付く。
自宅マンションまでは約一時間。
運転手に行き先を告げた彼は左側のドアにもたれかかり、流れ行く景色をボンヤリ眺めながらうとうとしていた。
そんな時だ。
「お客さん」と唐突に運転手の声がする。
正気に戻った笹井は右手に視線をやった。
50歳いや60歳くらいだろうか?
白い手袋をした制服姿の運転手の横顔が、ぼうっと視界に入る。
運転手はルームミラー越しに彼を見ながら続けた。
「ああ、すみませんねえ。
ゆっくりなさってらしたのですね。
お客さん、会社員の方ですか?」
笹井が頷くと、運転手は続ける。
「良いですなあ。
私なんか若い時分からずっとドライバー稼業してて、今はしがない個人タクシーの運転手ですわ。
もし生まれ変われたら、私も会社勤めというやつをやりたいもんですな」
「いやいや、この仕事もいろいろ大変なんですよ」
笹井が言うと、運転手は何度か頷きながら
「そうでしょうそうでしょう」と言った後、
「実はね私、お客さんにどうしても言っておきたいことがありましてね」と意味深な感じで切り出す。
「なんでしょうか?」
と言って思わず笹井はキチンと座り直した。
「いや本当に身勝手なことで申し訳ないのですが、一緒に死んでくれませんか?」
「は?」
※※※※※※※※※※
一瞬で車内の空気が凍りついた。
「す、、すみません。
意味が分からないのですが」
彼はとちりなからも、運転手の無表情な横顔に向かって言う。
運転手は一瞬笑みを浮かべた後また真顔に戻ると、口を開いた。
「それはそうですよね。
こんなこと、ただのタクシー運転手からいきなり言われても意味不明ですよね。
まあ驚かしついでにもう一つ言うと、実は私、昨晩家内を殺しちゃったんです」
「え?」
再び車内の空気が凍りつく。
「まあ以前から家内が浮気していることには薄々気付いていたんですがね。
さらに昨晩驚くことが分かったんです。
それは二人の老後のためにと積み立てていた預金を全て、あのバカ野郎が使い込んでいたんですよ。
どうやら男に貢いでいたみたいで、、、
これには私もカアッとなってね。
口論の末バットで思い切りぶん殴ってやりましたよ。
そりゃあもう、顔が潰れて血で真っ赤になるくらいまでね。
それから朝まで家内の遺体と一緒にいて、そのまま仕事に出かけたという次第なんです」
「じ、、自首しないんですか?」
「もちろんそれも考えました。
でもこのまま自首して起訴されても、恐らく死刑にはならない。
だったら自分で自分を始末しようと思ったんですわ」
運転手の突然の言葉に、すでに笹井の酔いは完全に覚めきっていた。
彼は喉裏に激しい動悸を感じながら、運転手に尋ねる。
「運転手さん、あんたの大変な事情はよく分かった。
でも何で俺が道連れにならないといけないんだ?」
運転手はちらりと笹井の方を見てニヤリと不気味に微笑み、
「至極ごもっともなご意見です」と言うとまたフロントガラスに向き直り口を開いた。
「正直誰でも良かったんです。
とにかく本日17人めのお客さんと一緒に死のうと決めていたんです」
「17人め?」
「はい。
昨晩家内が血まみれでぐったりなった時、ふと時計を見ると時刻は1時7分でした。
そして本日が1月7日。
おまけに奇しくも今日は私の誕生日でもある。
このおかしな偶然の一致でこみ上げるものに耐えきれなかった私は、ゲタゲタと笑いだしたんです」
━こんなことあるのかよ!
今日は俺の誕生日でもある。笹井がショックを受けていると、運転手はさらに続けた。
「その時です。
ゾクリと背中に気配を感じ振り返ると、部屋の片隅に奇妙な黒い人影が突っ立っているのに気付いたんです。
私は直感でそいつが何者か分かりました。
すると地の底から湧いてくるような低い声が聞こえてきたんです。
━今日お前が乗せる17人めの者をこっちに連れてこい。
そしたらお前はもう一度この世に生を受けることが出来、今度こそは幸せな人生を送れるだろう。
「そこで私決めたんです。
本日17人めの乗客の方と一緒に死のうとね。
お客さん、それがあなただったんですよ」
車内を重々しい静寂が包み込む。
それを破ったのは笹井だった。
「死ぬって、、いったいどうやって?」
運転手はフロントガラスの方を向いたまま、口を開く。
「なあに、簡単なことですよ。
例えば今この車は片側一車線の国道を北へと走っている。
時速は約63キロ。
この辺は交通量も少ないせいか、走る車もスピードを出し気味だ。
そこで私はさらにグッとアクセルを踏み込んで、ちょうど反対車線にトラックとかが近づいてきた瞬間、右に思い切りハンドルを切ればいいんです。
ご存知かと思いますが、互いにスピードを出している車が正面衝突した時の衝撃といったら、そりゃあもうとてつもないものだ。
恐らくは二人とも一瞬で木っ端微塵でしょうな。
やってみましょうか?」
するとくぐもったエンジン音が響き、車はスピードを上げだす。
笹井の背中がドスンとシートに押し付けられた。
「わわわわ、、、
や、、止めろ!
頼む、止めてくれええ!」彼の悲痛な叫びなどには一切臆することなく、運転手はアクセルを踏み込んでいた。
スピードメーターの針はジリジリ回りだす。
70キロ、、78キロ、、82キロ、、、
前方の車にあっという間に追い付き追い抜くと、またどんどんスピードを上げて行く。
笹井は運転手の背後に移動すると、シートの背面を叩き泣きながら訴えた。
「頼む、、、頼むから降ろしてくれえ」
その時だ。
彼は視界の左に奇妙なものを捉えゾクリと背筋が凍りつく。
そこは運転手の隣の助手席。
三角頭巾のケープを纏う黒い人影がうつむき座っていた。
その横顔は青く骸骨のようだ。
スピードメーターの針はすでに時速100キロに届こうとしていた。
運転手は血走った目で正面の一点を見つめている。
笹井はメーター横の時計に視線をやったとたん、ハッと息を飲む。
1時7分!
次の瞬間、軋むブレーキ音とともに車内は大きく右に揺れ、パッと強烈な白い光に包まれた。
【了】
これ、サイトから引っ張ってきたんだけど、あんま怖くなくね?って思ってる。じゃ☆
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