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𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸ジェル
ジェル「放送始まっちゃうで?」
ななもり「ほんとだね笑」
ななもり「お寝坊さんなんだから笑」
ななもり「みんなも待ってるよ」
手術が終わってかれこれ1時間。
莉犬は、あれから一度も目覚めずにいた。
呼吸もまだまだ浅く、手足も震えていて、
本当に生きているのかと疑ってしまうぐらい弱って見えた。
それでも、ずっと握られている俺とジェル君の手の温もりが、莉犬君にかすかな安心を与えていたらなと思いながら手を繋ぎ続ける。
医者が言うには、まだ戦ってる最中らしい。
放送が始まるまであと30分。
莉犬は起きてくれるだろうか。
時計の針が進む音、機械の規則正しい音。
病室はそれだけが支配していた。
ななもり「ジェル君、俺飲み物買ってくる」
ジェル「ありがとう」
ななもり「何がいい?」
ジェル「コーヒかな」
ななもり「ふふ、思った通りだ笑」
ななもり「莉犬君何がいいかな」
ジェル「やっぱあれやろ、」
ななもり「あれだよね笑」
あれだけで伝わってしまうこの情報は、きっと莉犬が愛されている証拠なのだろう。
ななもり「じゃあ、行ってくる」
ジェル「よろしく頼むわ」
ななもり「はーい」
なー君が立ち上がって後ろを向いたその瞬間、ずっと繋いでいた小さい莉犬の手が若干動いたような気がした。
ジェル「え、?」
ななもり「どうしたの?」
ジェル「莉犬!莉犬が動いた!」
ななもり「ほんとっ!?」
ジェル「ほんま!ほんま! 」
莉犬「んッ…」
ジェル「莉犬俺やぞ」
莉犬「ジェルくッ…」
ジェル「起きてくれて良かったぁッ…ポロポロ」
ジェル「もう話せないと思っとったポロポロ 」
莉犬「ごめ…んッ 」
𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸ななもり
莉犬君が動いた。
その時のジェル君の目はさっき見た目なんかよりもずっと綺麗でキラキラしていた。
こんなジェル君が見れたのは久しぶりだ。
2人の光景を見ただけで涙が出そうだ。
ななもり「莉犬君、おはよぉ」
莉犬「なーくッ…」
まだ少し疲れて話がしにくいのだろうか。
会話をしても何となく、途切れ途切れの言葉がかえってきているような気がした。
ジェル「あ、飲み物」
ななもり「あ、待ってて笑」
ななもり「買ってくるわ笑」
2人を置いて、病室から出る。
ななもり「うぅッ…ポロポロ」
ななもり「良かったぁッ…良かったよぉッ…」
そこには2人には見せられない俺がいた。
ななもり「そうだ、皆にも言わなきゃ…」
そう思って、涙をふいてすと〇りのグループ
L〇NEを開く。
𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸L〇NE
ななもり「起きたよ莉犬君」
ななもり「後で写真送る」
さとみ「マジ!?うわぁ、会いてぇ」
るぅと「ほんとですか!?良かったです…!」
ころん「安心したぁ…笑」
案の定、3人は直ぐに既読をつけた。
もちろん、あの二人はまだまだこのL〇NEなんて見れないんだろうけれど。
そして、俺は気を取り直して自動販売機へと向かった。
𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸莉犬
莉犬「んッ…」
ジェル「莉犬俺やぞ」
莉犬「ジェルくッ…」
ジェル「起きてくれて良かったぁッ…ポロポロ」
ジェル「もう話せないと思っとったポロポロ 」
莉犬「ごめ…んッ 」
目を覚ますと見慣れた2人がいた。
手術をしてから一体どのくらいたったのだろうか。
俺が目を覚まさない間もこの2人はずっとそばに居てくれてたのだろうか。
そう思うと、情けなさと劣等感で心が満たされてしまう。
ジェル君はきっと今俺よりも辛い状況かにいるだろう。
それなのに、迷惑を絶対にかけないと思っていたいた今までの自分が全て無駄になっていったような気がした。
俺はまたジェル君を泣かせたんだ。
そう思うとやっぱり、胸がいたんでしまう。
ジェル「あ、飲み物」
ななもり「あ、待ってて笑」
ななもり「買ってくるわ笑」
あれ、なー君。
もう、居なくなってしまうの?
俺をもう、置いてかないで。
いつの間にかに心は寂しさでいっぱいになっていた。
こんな思いをするんだったら、タヒねばよかったな。
ジェル「莉犬」
何となく声が出ないから、目で反応する。
莉犬「?」
ジェル「今日、放送やですと〇り」
そうだった。
今日はすと〇りの公式生放送だった。
だから3人は俺を置いて居なくなったんだ。
いや、違う。
俺を置いてったんじゃない。
俺がみんなのことを置いていったんだ。
莉犬「そうッだったねッ…けほっ、」
一生懸命に喉から声を出す。
ジェル「一緒に見よーや」
莉犬「ッ…」
本当は……見たくない。
画面の向こうでみんな楽しそうにしてるのを、今の自分が見たら、余計に自分の無力さを思い知るだけ……。
ジェルがそっと手を握り直す。
ジェル「莉犬、放送、一緒に見よか?」
その声に、心がぎゅっと痛む。
莉犬「こくっ、」
小さく、うなずくしかなかった。
手を握るジェル君の温もりが、弱った心をそっと押し戻す。
ジェル「スマホつけるから待っとって」
ジェル「無理せんで、ちょっとだけな」
画面に光が灯り、放送が始まる。
画面越しに見えるのは、るぅと、ころん、さとみくん。
声は遠くて、でも確かに届く。
ああ……見たくなかったな。
俺が死のうとなんかしなかったら、きっとこの場に俺はいたのだろう。
わずかに震える手を握り返し、目で画面を追う。
涙が出そうになるけれど、まだ声を出す力はない。
ジェル「莉犬、無理せんでええんやで」
莉犬はうなずき、画面を見続けることにする。
苦しいけど、温かい。
死にたかった自分と、生きようとしてくれる仲間たちが、静かに交差する。
手を握る温もりと、画面越しの声が、今の俺にとって小さな希望の灯火になっているような気がした。
𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸ななもり
ななもり「よし、3つ買えた」
ななもり「早く帰ろっと、」
ななもり「あ、」
俺の目に写った光景は普段見ない光景だった。
子供「始まったよ!」
看護師「ほんとうだね」
医者「今日はどんな放送だろうね」
子供「あれ、莉犬君がいない」
ななもり「あっ、」
それもそうだ。
莉犬君が放送に来ていない理由は誰にも伝えていない。
何も知らない人から見たら、この光景は異様なのだろう。
医者「きっと、なんかあったんだよ」
医者「心配しなくたって大丈夫さ」
子供「そっかぁ、」
子供「莉犬君の声好きなんだけどな…」
看護師「私と一緒だね」
看護師「私も好き」
子供「俺も見る!」
看護師「お!おいで〜!一緒に見ようね」
子供「始まった?」
子供「俺も見る!」
医者「おいでおいで」
子供「私も見たい!」
最初は3人で集まっていた、病室。
いつの間にかに、5人、6人、10人と増えていく。
男の子も、女の子も、子供も大人も…。
多種多様な人がいた。
そして、皆楽しそうに笑っていた。
ななもり「…笑」
ななもり「楽しそうで良かったなぁッ…笑」
そう思うと、お医者さんと目が合う。
すると、彼はにこっと微笑みかけてくれた。
その瞬間枯れていた俺の心は一気に花が咲いたような気がした。
俺もにこっと笑顔で返した。
𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸莉犬
ななもり「始まったでしょ?」
ジェル「始まったで」
ななもり「後で行きたいとこあるんだ」
ななもり「一緒に3人で行かない?」
ジェル「どこに行くん?」
ななもり「内緒だよ笑」
ジェル「そうなん笑 」
ななもり「莉犬くんは?大丈夫?」
莉犬「行くッ…ごほっ、」
ななもり「あ、飲み物どうぞ」
ななもり「開けるからちょっと待ってね」
ななもり「はいどうぞ」
ななもり「飲めそう?」
ななもり「補助いる?」
莉犬「ちょっと…だけ…」
ななもり「OK!じゃあ、持ってるよ」
莉犬「ありがと…」
莉犬「もう、大丈夫…」
ななもり「はーい」
ななもり「ジェル君のもどうぞ〜」
ジェル「ありがとう」
俺はいちごオレ。
ジェル君は、ブラックコーヒー。
なー君は、カフェオレ。
皆バラバラだけど、どこか似ているような気がした。
さとみ「あー莉犬?」
るぅと「莉犬はね、寝てますよ今笑」
ころん「いっぱい寝なきゃだからね」
さとみ「小さいからな」
るぅと「寝る子は育ちますからね」
ころん「そうそう」
リスナー「可哀想莉犬くん笑笑」
リスナー「お疲れなんですね」
リスナー「莉犬君可愛い〜」
ふとした瞬間、画面から声が聞こえた。
俺のことを話していて、少し心が緊張して強ばった。
ななもり「だってよ莉犬君」
ジェル「大きくならんとな」
莉犬「馬鹿に…しやがって…笑」
ななもり「早く元気になったら、言っちゃえ」
ジェル「そやなぁ、笑」
ななもり「リスナーさんも待ってるよ」
莉犬「そだね…」
心の中でまだ生きていたいと思える自分と、
早くタヒんでしまいたい。
楽になりたい。
と思ってしまう自分が交互に出てくる。
そんな自分が嫌になりそうだった。