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🎼📢🌸 @バスケの試合
ごつっと、嫌な音がした。
審判が笛を吹いてヘルドボールをコールして、折り重なっていた選手たちが一斉にどいていく。
ベンチメンバーがはらはらと見守る中、いちばん下でうずくまっていたのは、いるまだった。
力が抜けたように一息ついた彼も、他のメンバーの手をとってゆっくりと立ち上がり自分のポジションに戻り始める。
が。
試合が再開してもどことなくふらふらしていた。
歩き方もおかしいし、走るなんてできたものじゃない。
ベンチメンバーは足でも捻ったのかと、軽く心配しだした。
でも、そのまま続くプレーの応援をしないわけにはいかず、いったん試合に集中する。
しかし、マネージャーとしてスコアを書いていたらんだけは、ただごとじゃないいるまの異変を見抜いていた。
バインダーとペンを放り出して、迷わずコートに駆けていく。
「いるまっ、いるま!!」
ふらりといるまの身体が傾く。
らんの心臓がどくんと音をたてた。
なんとか抱きとめたが、苦しそうな表情で目を閉じるいるま。
すこしだけらんの方を向いた、気がした。
「やっぱ頭打ったよな…」
脳震盪。
その言葉がらんの脳裏に思い浮かんだ次の瞬間には、もう身体が動いていた。
当然、試合は中断。選手たちがわらわらと集まってくる。
その中で、マネージャーとしてさまざまな知識を詰め込んできたらんはもう焦りはなく、ただただ冷静な表情をみせていた。
大人と協力してテキパキ応急処置を進める彼の目には本気の色が光っていた。
-🌸side-
「いるまっ?」
「ん…らん」
「よかったぁ…いるまぁっ」
「おわ、」
しばらく時間が経って、ようやくいるまが目を覚ました。
寝たままの彼にぽすっと抱きつけば、くすりと笑う声が頭の上から降ってくる。
いるまはそっと俺の背中に腕を回して、やさしくぽんぽんしてくれる。
その仕草が、ちゃんといるまがいるって実感がして安心して、思わず涙があふれる。
「なに、泣いてんの?」
「だって…いるま、いなくなっちゃうかもって…」
ふは、と笑ういるまは俺ごと起き上がると、膝の上に俺を座らせて、真正面から俺をみつめる。
「ありがとな」
その瞳が普段のいるまじゃ考えられないくらい、優しくて、甘くて、あったかい。
今だけはそれが俺だけに向けられている、と気づいて、すこしだけ頬が熱くなる。
そんな俺の手を掬い上げて握りながら、いるまがぽつりと呟いた。
「俺、意識が飛ぶか飛ばないかってときさ。らんの声だけ聞こえたよ」
びっくりして、え、といるまをまじまじとみつめるおれに軽く微笑んで、続けた。
「あんま覚えてないし見えてないけど。でもらんが頼もしくて安心した」
その言葉がうれしくて、報われた気がして、また目に熱いものが込み上げてくる。
「そゆこと…言うなってっ…俺、弱いんだってっ…」
「あー泣くな泣くな」
こてんといるまの胸元に顔を埋めた俺を、半分呆れながらも再びなだめてくれる。
いろんな感情がだんだん落ち着いてきたころ、大事なことを忘れていたことに気づいた。
「あ…みんなに連絡するの忘れてた…」
そう言って、スマホを取り出すためにポケットを探りながらいるまから離れようとする俺を___
「まって」
いるまがぎゅっと抱き寄せて止めた。
「え、//」
「もうちょっとだけ…らんとふたりで、こうしてたい」
耳元でやわらかく響く、いるまの声。
逃がさないというように強く腕が回っていて、いまいるまがどんな顔してるか、わからないけど。
首を動かすと、いるまの耳が真っ赤に染まってるのが視界の端に見えた。
「うん…」
俺まで体温があがってくるのが自分でもわかる。
でもそれ以上に、幸せな気持ちと心地よさで心が満たされる。
いつもよりも断然近い距離。
同時に、心の距離も確実に近づいていて。
ちゃんと相手がだいじで。
お互いに照れくさいこの関係が今はまだちょうどいい。