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【武装煉翔外伝~真の義を継ぐ侠~】
其ノ二:いざ、日鉱へ!
「ここまで、誰とも会っていないのはおかしい…」
日下を離れ、幾時間がすぎていた。
ここまで、人一人会うことなく進んでいた。
「どうした?」
「この辺はオヤジ…うちの総大将が言うには巌登の領地が近い。巌登の兵がいてもおかしくない…はずなんだが…」
時を同じくして、遠東・真砂。
巌登領
「巌登様は変わられた…私は、あの頃の巌登様を信じ、ここまで来た。なのに…」
「…」
「巌登様の暴虐を見過ごす訳にはいかないッ! 見ただろ、お前も… 」
はるか遠東の地で暴虐の限りを尽くす巌登にたった一人、声をあげた者がいた。
それは、飛颯という侠だった
「民も兵も疲弊していては…」
「飛颯、まさかお前…」
煉翔三年 六月
巌登をはじめとする、巌登軍は南の地・村雨に軍を進めていた。
そしてそれを時同じくして龍と共に日下の地を離れた真義は、その道中…巌登領・道宗の村へ。
「やはりな…ここは、真砂にもほど近い。危険だと思ったが、立ち寄って良かった」
本来の道程を逸れて立ち寄った地ではあったが、真義にはここに来た目的があった。
「そういう事か、真義殿これを知って?」
「正確には、うちの総大将がこの場所に来たことがあるんだ、それで知ってただけだ。」
それは、今は亡き総大将・大義の知人を尋ねることだった。
「すまない、ここから先は俺一人で行く。先に日鉱へ向かってくれないか?」
「わかった。」
龍と別れ、道を進んでいく真義。
「(やはり…ここから先は入れないか…、なにかいい方法は…)…これをあの人のもとに…」
場所は道宗の大門近く。
「おいおい、俺は戦うつもりはないぞ、見ろ…」
「何者だ!」
進軍最中の巌登領地へ赴いたが、「賊狩り」は今も変わらず続けられている。
「貴様…、まさか「日下」の賊兵」
「そこまで知ってんなら話は早い、俺は日下部真義…ある、男に会うためにここへ来た!」
しかし、そう簡単に通してはくれそうにないと思った真義はある策に出る。
「飛颯という男がこの道宗にいるはずだ!…頼む、進ませてくれはしないか?」
「賊兵と知ってはここを通す訳にはいかんッ!」
「まぁ、そうなるわな。なら、力づくだッ!」
それと時を同じくして、道宗。
「大門あたりが少し騒がしいが、何があった?」
「何者かが、この道宗に」
「風向きが変わった…のと、この匂いは潮の匂い…まさか、あの人がここに!?」
その頃、道宗大門…。
さすがの真義も刀剣無しで戦うことは難しかった。
「素手ではさすがに無理…か。」
無謀かと思われた…しかし
「そこまでだ!…刀を収めよッ!」
一人の声が、その場を止めた。
「…ッ!?」
「聞こえなかったか!刀を収めよッ!」
「お前…飛颯…なのか?」
それは、巌登軍兵である飛颯だった。
「真義殿、何しに来たのですかここへ…あなたにとって巌登領地に近づくことは危険なはず…自らの身を危険に晒してまで…」
真義は今までの全てを話した。
「大義殿が…」
「そして、俺はこれから北は日鉱へ向かう。」
「日鉱へ…?」
敵になりえる、巌登の兵に全てを語っていいものか
それも分からぬまま話し終えた。
「飛颯、お前はこれでいいのか?」
「私は、巌登に仕える兵…巌登様の力になってこそ、本分。」
「民も兵も、捨て駒のように扱うような大将に、付き従う意味があるのか?」
「それは…」
民も兵も捨て駒のように扱うような大将に付き従う意味はあるのか
その問いには、答えは出ない。
「私は…」
「お前の心では答えは出てるんじゃないか?」
「…」
言い残すと、足早に道宗を後にした。
「仕切り直しだ…いざ、日鉱へ!」
一方の龍はと言うと、日鉱へ帰りつき
「読みは当たったな。龍、ありがとう。」
日下でのことを話した上で、話を続けた。
「金鋼様、なぜこの日鉱へ日下部を?」
「巌登は、今日まで賊狩りと称し各地の賊兵を討伐していると聞く。賊兵とはいえそれを除けば民と同じ…」
「思えばあの賊兵も、我々と同じことを考えていたと申しておりました」
数年前、まだ賊兵軍が旗揚げしていなかった頃、大義は幾度に日鉱へ訪れていた。
「父上もおかしなことを言ったものとは思っていたが、今ならその話も分かる。」
日鉱の町のことを知らなかった大義を、案内したのが鋼真(後の、鋼)である。
「金鋼殿はいるか?」
この頃は、なぜ日鉱の町を訪れたかは未だ分からないが、当時の武将、鋼鉄は大義に「民も兵も、家族。家族を守ることのできぬものは鬼に同じ。」と話したのだと言う。
真義もまた、日鉱に度々訪れては、金鋼と共に修行を積んでいた。
「やっと来たか…真義。」
「お待たせし申し訳ない。金鋼殿」
「お前らしくもない。」
「あの頃とは訳が違うからな…」
ちょうど日鉱へ到着した、真義。
休む暇もなく日鉱へ来たからか、少し疲れているようにも見えた。
「どうした?その傷は…」
「少し、ここへ来る道中で擦りむいた。気にするほどではない。」
時を同じく、日下部賊兵軍が軍を置く日下の地では残った兵達で軍の立て直しが行われていた。
「兄貴、そろそろ着いただろうか…」
「真義のことだ、大丈夫だろう。それより今は、軍備の立て直しが最優先だ…」
「しかし、鋼からの要請があるってことは少なからず、何か関係があるんじゃないのか?日下部と鋼に」
「筆頭や真義から聞く話だ、少なからずは関係はある。俺も詳しくは知らないけどな。」