・ナイトスノウのちょっと後に二人が和解する話
・冴凛(になる予定)
・ネタバレあり
明日、兄ちゃんが帰って来る。
そう母さんから聞いた時は嬉しくて涙が出そうになった。
泣いている所を見られるのは恥ずかしいから、慌てて「外行ってくる」と告げ家を出た。
兄ちゃんが帰ってくる。明日が楽しみで仕方がない。
少しでも兄ちゃんに褒められたくて、サッカーをやってきた。
帰って来たら褒めてくれるかな。褒めて欲しいな。
そんな事を考えながら練習場に行って、雪の降る寒い中、一人で練習をした。
この後捨てられるなんて知らずに。
「消えろ、凛」
「にい、ちゃん、……」
最愛の兄に突き放され、体が凍り付いた。
目の前で何が起こったのか、理解が追いつかない。
なんで、にいちゃんは、遠ざかっていっているんだろう。
なんで、おれを置いて行くんだろう。
死ぬまで味方してくれるんじゃなかったの、
なんで、なんで———
家に帰ったら母さんが心配そうな顔をしていた。母さんが口を開く前に二階の自室にこもった。
兄ちゃんと俺の写真。表彰状。トロフィー。二人で寝てたベッド。
二人の思い出が詰まった部屋。
優しかった兄ちゃんは嘘——
ガシャンッ
写真もトロフィーも、全部、壊した。
幸せな思い出を思い出すのが辛くて。
「いやだ、許さない…」
憎悪の言葉が零れ落ちたけど、心の奥ではやっぱり兄ちゃんの事は大好きで。
やっとまた二人でサッカーできると思ったのに。
「兄ちゃん…」
おれの何が駄目だった?
直すから、
帰って来てよ。
寂しいよ。
憎むに憎みきれなくて、苦しくて、泣き崩れた。
兄ちゃんとの全部が壊れて、心に穴が空いたみたいだった。
明日、俺は日本に帰る。
やっと帰れる。
大切な家族に会える。
大切で、大好きな弟にも。
それが何よりも嬉しかった。
一刻も早く帰りたくて、予定を早めた。
予定を早めた事を伝え忘れていて、帰ると母さんも父さんも驚いて固まっていた。
でも、すぐその後、「おかえり」と笑ってくれた。
俺も「ただいま」と返した。
あぁ、幸せだな。
家は冷えた心をすぐに暖めてくれた。
弟の姿が見当たらなく、聞くと「分かんないけど、練習しに行ったんじゃない?」と答えた。
「分かった、迎えに行ってくる」と言い、家を出た。
スペインで4年を過ごした。
4年間は地獄だった。
世界のレベルを知って、自分じゃストライカーにはなれないと気付いた。
俺には才能がない。そう自覚させられた。
分かった時は、悔しくて、絶望した。
でも、俺にはまだ凛がいる。
アイツなら、凛なら、なれる。才能がある。
アイツを絶対に世界一のストライカーにさせる。
そのために、俺は世界一のミッドフィルダーになる。
俺が世界一のミッドフィルダー、アイツが世界一のストライカー。
そうしたら二人でW杯も優勝できる。世界一にもなれる。
俺が一番近くでアイツを支える。そうするのが最適だ。
雪が降る中、一人で練習している姿を見つける。
もしアイツが俺の考えを分かってくれなかったら?
そう不安が浮かんだが、アイツなら分かってくれる。きっと。
「今のコース、甘いんじゃね?」
「兄ちゃん!…」
四年前と同じで、俺を見ると、顔がぱぁっと輝いた。
「おかえり…」
「…おう、ただいま」
「いつもテレビで見てたよ、凄えよ、兄ちゃん」
「俺よりも凄い人間はいる。」
俺が敵わない奴らは沢山いる。
俺じゃ駄目だ。
「何だよ、急に」
だから、
「夢を描き変えたんだ」
俺と、お前の為に。
「俺は世界一のミッドフィルダーになる」
「え、?ストライカーだろ、ミッドフィルダーで世界一になったって、意味なんか—」
「うっせぇよ」
弟の言葉に、イラついた。
「それは世界を知らない奴が言う言葉だ」
何も知らないくせに。
「何だよそれ、」
「一緒に戦おうって、俺の次に凄くなれって、言ったじゃん」
「あぁ、だから俺がミッドフィルダー、お前がストライカーで世界一を目指せば「俺は‼︎」
「世界一のストライカーの弟だ!」
静かな夜に、弟の大きな声が響く。
はっきりと、聞こえてしまう。
やめろ。世界を見てないお前が言うな。
世界を知って、ボロボロになった心が、もっと壊れて行く。
俺だって、ストライカーになりたかった、
「そんなカッコ悪い事言う為に帰って来たのかよ」
やめろ
「そんな兄ちゃん見たくない!」
やめろ
「俺は、俺が一緒に夢を見たのは、そんな兄ちゃんじゃない‼︎」
何で、分かってくれねぇんだ、凛
「今分かった」
「ぬるいな、お前も、俺も…」
今まで、二人で居る時間が長すぎたんだ。
「どういう意味だよ、」
「この1on1でお前が勝ったら、俺はもう一度お前と夢を見てやる」
「でも俺が勝ったら、俺達の夢はここで終わりだ」
「嫌だよ…勝手に決めんなよ、兄ちゃん…」
「俺、こんな勝負したくないよ…」
俺も、こんな勝負、したくなかった
「いくぞ、凛」
でも、
「一発勝負だ」
全部、お前の為なんだ
「待ってよ、兄ちゃん」
「兄ちゃんがいなくなってから、俺、頑張ったんだよ」
「兄ちゃんの代わりになれるように」
「約束通り、日本一になったんだよ、!」
「なのに、こんなんで終わり、?」
「兄ちゃんと夢を追えないなら、俺、もう、サッカーする理由なんて…」
ふざけるな。
才能を潰す様な事言いやがって、
何も、何も、知らないくせに。
「だったら辞めろ」
「何が日本一だ、何が兄ちゃんの代わりだ」
「クッソ反吐が出るぜ」
「もう二度と俺を理由にサッカーなんかすんじゃねぇよ」
「消えろ、凛」
「俺の人生に、もう、お前はいらない」
もう、俺に着いてくるな。
お前の人生に、俺はいらない。
長い間投稿してなくてすみません、、
一話で終わるかなーって思いながら書いてたら全然終わりそうになかったです、笑
なんで何話か続くと思います
では、!
コメント
10件
最高だ⋯⋯!! ナイトスノウのseちゃんの気持ち、解釈一致すぎる⋯⋯。 続き楽しみに待ってる🥰🥰
いやぁ、こーゆーのみると原作での冴ちゃんの過去楽しみになってくる