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帰れる場所
目を覚ましたとき。
最初に感じたのは――
柔らかい感触だった。
(……なに……これ……)
頬に、あたたかいもの。
腕に、何かが巻きついている。
ゆっくり視線を動かす。
……キルアだった。
ソファに座ったまま、眠っている。
×××を抱えたまま。
片腕で支え、もう片方の手は、彼女の背中に添えられている。
(……このまま……寝たの……?)
胸が、きゅっとなる。
自分は、ベッドで寝かされている。
キルアは、無理な姿勢で。
明らかに、一晩中このままだ。
「……ばか……」
小さく呟く。
その瞬間。
「……ん……?」
キルアが、目を開けた。
銀色の瞳が、ぼんやりとこちらを見る。
「……起きた……?」
「……うん……」
「……よかった……」
ほっとしたように、息を吐く。
それだけで。
この人は、本気で心配していたんだと分かる。
部屋は、簡易宿の一室。
クラピカの知人が貸してくれた場所だった。
窓から、朝の光が差し込む。
平和な光景。
まるで、別世界。
「……痛くないか?」
「……ちょっと……だけ……」
胸の包帯に、まだ赤が滲んでいる。
キルアは眉をひそめる。
「……無茶しすぎ。」
「……ごめん……」
沈黙。
気まずいわけじゃない。
ただ、言葉が見つからない。
キルアが、ぽつりと呟く。
「……怖かった。」
「……え……?」
「……お前が……いなくなるかと思って。」
視線を逸らしたまま。
でも、声は震えている。
×××は、胸が締めつけられる。
「……私も……怖かった……」
「……嫌われるのが……」
キルアは、はっとして見る。
「……誰が嫌うんだよ。」
「……俺が……?」
×××は、頷く。
「……だって……嘘ついてたし……」
キルアは、少し困った顔をしてから――
額を、軽くコツンとぶつけた。
「……バカ。」
「……っ!?」
「……そんな理由で……嫌いになるかよ。」
近い。
近すぎる。
心臓が、跳ねる。
「……俺は……」
言いかけて、止まる。
深呼吸。
「……今のお前が……好きだ。」
静かな声。
でも、まっすぐ。
×××の思考が、止まる。
「……す……き……?」
「……ああ。」
耳まで赤い。
でも、逃げない。
「……強くて……優しくて……無茶して……」
「……すぐ一人で抱え込んで……」
「……放っとけない。」
×××の目から、涙が溢れる。
「……私……そんな……価値……」
「ある。」
即答。
「……俺が言う。」
キルアは、そっと彼女の手を握った。
あたたかい。
確か。
「……もう……一人じゃねぇ。」
×××は、震える声で答える。
「……キルア……」
「……私……ここに……いていい……?」
「当たり前だろ。」
少し笑って。
「……追い出す理由、どこにあんだよ。」
そのとき。
ドアが、勢いよく開いた。
「×××!!起きたの!?」
ゴン。
続いてクラピカ、レオリオ。
「やっと目覚めたか。」
「心配したぞ!」
一気に騒がしくなる。
キルアは慌てて手を離す。
「……お、おい!」
ゴンはニヤニヤ。
「え〜?今いい雰囲気じゃなかった?」
「うるせぇ!!」
×××は、思わず笑う。
自然な笑顔。
初めて見せる、心からの笑顔だった。
クラピカは、それを見て静かに思う。
(……彼女は……もう……闇の中の人間ではない……)
こうして。
×××は。
初めて――
「帰れる場所」を手に入れた。
to be continued…