男はようやく口を開いた。
「そういや言っとらんかったな。俺の名前は斎藤零士。一応よろしく。」
シオンとアリエルは、零士の後を黙ってついて行った。荒れ果てた大地を進む二人の胸には、まだ疑念と不安が渦巻いている。零士の軽薄で挑発的な態度は、どうしても信用に値するものとは思えなかった。
だが、無駄に体力を消耗するわけにもいかない。前衛隊を探し出すため、今は彼に頼るしかなかった。
しばらく歩いた頃、零士がふいに足を止めた。空気が一変する。シオンとアリエルもその変化に気づいた。零士は何も言わず、鋭い視線で周囲を見回している。
「どうしたの?」アリエルが問いかけると、零士は嘲るような笑みを浮かべて言った。
「お前ら、前衛隊を探してるんやろ?でもな、そんな簡単に見つかると思っとったら痛い目見るで。」
その声には、いつもの軽さとは違う、妙な重みがあった。
シオンは眉をひそめる。「どういうことだ?」
「前衛隊は、お前らが思っとるほど甘い連中ちゃう。力を使いすぎた今のお前らじゃ、あいつらの場所を感覚で探すなんて無理や。もっと頭を使わんとあかん。」
そう言うと零士は再び歩き出した。二人は驚きつつも、彼の後に続く。
少し進んだところで、零士はまた立ち止まり、静かに地面へ視線を落とした。
「ここや。」
零士が呟き、足元に手を伸ばして地面を軽く叩く。次の瞬間、シオンとアリエルの目の前に、かすかな光が浮かび上がった。
「これは……?」シオンが息を呑む。
「足元のエネルギーが反応してるんや。お前らが気づけへんかっただけや。」
二人は黙って頷く。確かに、今までの感覚ではこの気配を捉えることはできなかった。
零士は光を引き寄せるように手を動かし、地面に奇妙な紋様を描き始める。
「これが……」シオンが言葉を失う。
「前衛隊の位置を特定するための印や。あいつら、こういう古い魔法で身を隠しとる。力任せに探しても見つからん。」
紋様が完成すると、そこから再び光が溢れ、遠くへと伸びる道のようなものが現れた。
アリエルはその光を見つめ、零士に問いかける。
「あなた……まさか前衛隊のことを……」
零士は不敵な笑みを浮かべた。
「まぁ、ちょっとだけ詳しいんや。でも誰にも言うてへん。」
シオンとアリエルは一瞬言葉を失う。零士が本当に前衛隊に関わっているのか、それともただの虚勢なのか、まだ判断できない。しかし、今は彼を頼るしかなかった。
「これで前衛隊の場所は分かった。後は向かうだけや。」
零士が歩き出すと、シオンも決意を固めて後に続く。
「分かった……だが、俺たちの指示には従えよ。」
「当然や。」零士は振り返り、にやりと笑った。
その瞬間、シオンはほんの少しだけ、零士への警戒心が和らいだ気がした。しかし、この先に何が待ち受けているのかは、まだ誰にも分からない。
次回予告
新たな仲間・斎藤零士を加え、前衛隊の足跡を追い始めたシオンとアリエル。 しかし、零士の過去に隠された真実は、二人の運命にどんな影響をもたらすのか。 そして彼らを待ち受ける試練とは——。 物語は次回、ついに新たな局面へ突入する。
次回「前衛隊の試練」






