テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
古龍の煌気を身に纏った人間がいる。
そもそも、異世界多しと言えど古龍が生きている異世界は実に珍しい。
その古龍が竜人になっている異世界はさらに稀であり、恐らくスカレグラーナ以外には存在しないのではないかと思われる。
では、繰り返しになるが古龍の煌気を身に纏った人間がいる。
「な、何と言う禍々しい煌気だ……! 南雲修一……! この男は果たして人なのか!? それすら怪しい……!!」
「いや、待ってくれ! 違うんだ! 私は!! ……違わないけど!! ああ、くそぅ! 逆神くん、やってくれたな!? これ、もう後戻りができないヤツじゃないか!!」
南雲の作戦は「逆神六駆を目立たせない事」であった。
六駆の作戦は「南雲修一を目立たせる事」である。
両者の間には似て非なる大きな溝があり、今日も冷たい雨が降る。
「南雲さん、南雲さん! 拳に煌気を集中させて、振り抜いてみてください!」
「ええ……。嫌だよ! 絶対アレじゃん! 君の頭おかしいパンチが出るんでしょう!?」
「そんなこと分からないじゃないですか! もしかしたら出ないかもしれませんよ!! ほら、敵さんも構えてる! なんか大砲構えてますよ!!」
「くっ! よ、よし! 信じるぞ、逆神くん! せりゃあ!!」
ゴウンッと轟音を残して、鋭い煌気拳が777番に襲い掛かる。
「がぁっ!? こ、こんな事が……!? 『滅殺砲』を相殺……いや、突き抜けて……!! う、うわぁぁぁぁぁっ!!」
777番が決死の表情で放った渾身の一射は、南雲の軽く振り抜いた拳が塗りつぶす。
「見ましたか!! これが監察官! 南雲修一の『古龍拳』だぁ!!」
「いや、それ君のスキルぅ!! ついに私を操り人形のように!! 本当に恐ろしい男だな、君ぃ!!」
だが、777番もただでは倒れない。
3番の信任を得ているのだ。簡単に倒れてなるものか。
「く、喰らえ!! 『滅殺砲』!! さらに『圧縮玉』!! 合わせて『滅殺全弾発射』!!!」
「な、何と言う煌気砲……!! 普段の私ではとても対処できない!!」
「南雲さん! 拳を開いて、手刀の形に!! そうしたらそのまま切り払って!!」
「すごく嫌な予感がするけど、私も自分の命がかかっているとあっては……!! せりゃあ!!」
777番が持っている攻撃用『圧縮玉』を3基起動させた、文字通りの奥の手。
それを南雲の手刀が真っ二つにした。
「見たか!! これが南雲修一の『古龍手刀』だぁ!!」
「君ぃ! 逆神くぅん! 自分でも使っていない新スキルを私でワンクッション置いてから発現させないでくれる!? なにこれ! 大地が割れたよ!?」
こうなると、3番も竜人たちにばかり構ってはいられなくなる。
「なんと、なんと! このような人間がいるのですか!!」と、興奮を隠さずに南雲を見つめる。
「777番くん! もう結構! 君の手には余ります! 既に2種類のスキルのデータも採れた!! 恐らくこの南雲修一と言う男、日本探索員協会が秘密裏に開発したサイボーグか何かでしょう! 今の私たちには準備が足りない! 退きますよ!!」
「ぐっ……! 3番様がおっしゃるのであれば!! 南雲! 勝負は預けるぞ!!」
南雲修一、いわれなき強化人間認定を受ける。
「竜人たちのデータも少しですが回収できました! ならば、『人造人形』!! 今ある分を全て撒いておきましょう! 35体! スキルの種類は1! 耐久値を破棄して、攻撃力に強制変換!!」
3番の引き際は鮮やかだった。
竜人たちへ向けられた知的好奇心をかなぐり捨てて、逃げの一手に出る。
3番はマッドサイエンティストだが、破滅型の狂人ではない。
デスターへ向かい、現地の視察をするのが1番より与えられた使命であれば、それを最優先する。
「竜人のサンプルに1、いや2体ほど捕獲したかったですが! 南雲修一! 君の身柄を確保すればそれ以上の研究ができそうですね! 待っていますよ、デスターで!! 君ならば、この程度の戦闘力値に設定した『人造人形』など物の数ではないでしょう!! 『大火球玉』!!」
言いたい事を言い終わると、3番は天まで立ち昇る火力の閃光弾を放つ。
六駆ですら少しだけ身構える派手なイドクロア武器で目くらましを果たした3番は、『泥船』に乗り込み777番と共に去って行った。
「……逆神くん? 私、とんでもない事になってない?」
「南雲さん! 今はまず目の前の敵に集中してください! ああ、もう敵さんいないんだから僕が戦っても良いのか! じゃあ南雲さんはその辺で座っていてください!! アタック・オン・リコを呼び戻して良いですよ!!」
そう言うと、六駆は竜人たちの中に加わって行った。
実に軽やかな足取りで。
「山根くん……。アタック・オン・リコに通信を……」
『ぷーっ! ちょっと今回は気の毒すぎるんで、自分は敢えてノーコメントにしとくっすね! ぷーっ!!』
それでは、消化試合に移行しよう。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「カァアァァァァァッ!! 『ゴルドブレス』!!」
「バルナルド様、援護に感謝いたします! 『冥竜閃』!!」
バルナルドが3番の姿をした人形たちの足を止めて、ナポルジュロが一気に数体を吹き飛ばす。
その熱線の威力は凄まじい。
ジジジジと音を立てて、『人造人形』は爆発する。
「ナポルジュロ……? 卿、どうして余が倒そうとした相手を全部屠るの?」
「いえ、そう申されましても。見るからに隙だらけでしたゆえ」
「ジェロードもあっちで好き勝手にやっておるし。卿らに問いたい。今日のシフトは誰が担当しているのかと」
「ではお聞きしますが。そこにいる逆神六駆はどうされるおつもりか? 実に良い笑顔で人形どもを粉々にしておりますが」
「うふふふっ! 『古龍連撃拳』!! かーらーのー!! 『古龍一閃』!!」
六駆は楽しみながらもしっかりと考えていた。
古龍属性のスキルしか使用していないのがその証拠である。
あくまでも、人形たちを倒したのは竜人であると痕跡を残そうとしているのだ。
六駆は3番の性格をわずかなやり取りで理解していた。
あの手合いは、周回者時代に何度か戦っている。
どう考えてものちに自分の手元に戦闘データが届くように細工しているはずであり、現状その細工を看破する方法がない以上、カムフラージュに徹するのがベター。
という訳で、古龍フルコースを披露していた。
それを眺めるバルナルドは呟いた。
「ナポルジュロよ。卿はあの男に対して、余に差し出口を挟めと申すのか?」
「いえ……。相も変わらぬ、鬼神の如き強さです。我が申したいのはですな、あれに巻き込まれたくなければ、今日の消化不良は我慢なされよと言う事です」
ナポルジュロは纏めた。
「スカレグラーナに戻って一緒にボトルシップでも作りましょうぞ」と。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃、デスターでは。
3番と負傷した777番が到着していた。
形式上は上官であるため、4番と6番が彼らを出迎える。
「どうしたってんだ、3番様よぉ? なんだか随分とボロボロじゃないか。さっきから計測されてる、異常な煌気と関係ありか?」
「やあ、グレオくん。久しいな。そして、君の粗暴な態度で隠し切れない切れ者ぶりも健在で安心しましたよ。それよりも、面白い侵入者が来ていますね」
4番は「ああ」と応じた。
「日本の監察官か。南雲とか言う」
「おや、イントネーションが違いますよ。ナグモです。竜人を従える、過去に例を見ない程の脅威ですね。グレオくんよりも強いかもしれません」
グレオ・エロニエルは「確かにな」と応じる。
彼は自信家で野心家だが、自己評価を正しく下す事のできる男。
「ナグモか。とんでもねぇヤツが潜んでいやがったもんだ……」
南雲修一は、確かにとんでもねぇ事になろうとしていた。
彼のあずかり知らぬところで。
コメント
1件
みぅ🤍🥀です。 うわ、もう完全に南雲さんが巻き込まれ型主人公のポジションになってる…! 六駆くんに「拳開いて手刀!」って誘導されて、自分でも知らない新スキル連発させられてるの、笑ったけど同時にちょっと可哀想にもなった(笑)。「違わないけど!」って認めるところが南雲さんらしくて好き。 3番の撤退も鮮やかで、狂人じゃなくてちゃんと理性的なマッドサイエンティストなのが逆に怖い…。デスターで待ってるって予告までしてて、次どうなるんだろう。 六駆くんが古龍スキルだけ使って痕跡カムフラージュしてるのも、頭いいな〜って思った。読んでてめっちゃ楽しかったです🌙
#現代ダンジョン
夜鐘
1,295
裏五条
24,364
#ダンジョン
リーさん
368