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幻竜ジェロードとの戦いに勝利した六駆。
だが、敗北者のジェロードは満足そうに笑みを浮かべてその時を待っているのに対して、勝利者の六駆は地面に両膝ついて砂塵を握りしめている。
甲子園の土を持って帰る高校球児のようでもある。
『逆神くん。剣の事は諦めよう。ほら、これ見なさいよ。協会本部の指令書。ちゃんと報酬が100万になってるだろ? 君、書面にしないと納得しないと思って、私が急いでもらって来たんだぞ』
「南雲さん」
『うん。どうした?』
「高価な秘宝剣を諦めるかどうかと、別件で貰える100万って今関係あります?」
『うん。君はアレだな。実に面倒くさい時の顔になってる。通信を切りたいよ』
六駆くん、幻竜ジェロードの元へと歩み寄る。
死力を尽くした古龍も最後の力を振り絞り、首を上げる。
自分を倒した男の姿をその目に焼き付けるために。
「ジェロードさん」
「ぐ、ぐふっ……。どうした、逆神六駆。死にゆく我に冥土への土産でもくれるのか?」
「いえ、ちょっと失礼して。よっと!」
「……うぬぅ?」
六駆おじさん、幻竜の背中に飛び乗る。
そこには、深く突き刺さった秘宝剣・ホグバリオン。
古龍の肉を裂き、貫いているホグバリオンを見て、六駆は「よし!」と頷いた。
続けて、ジェロードの背中に空いた穴に手を突っ込み、ホグバリオンの柄を握ると、力任せに引き抜こうとする。
「グォオォオォォォォォォオォォッ!!!」
「あ、ごめんなさい。痛かったですか?」
サーベイランスがUFOみたいな不規則な動きで六駆に突撃する。
南雲も余りの事態に、冷静な操縦ができずにいた。
『逆神くん! 君ぃ!! 何してんの!? 幻竜、今まさに安らかな死を迎えようとしてるよね!?』
「いえ、竜の血って金属を錆びさせるものが多いんですよ。ホグバリオンが錆びたら大変だなって!」
「ホグバリオンが錆びたら大変だなって!!」
『聞こえてるよ!! 声が届いてないんじゃなくて、言葉を失ってたの!!』
南雲は改めて「ホグバリオンは諦めなさい」と六駆を諭した。
「死にゆく者の時間を冒涜するものではないよ」とも言った。
常識と良識を兼ね備える、監察官らしい言葉だった。
「でも、どうせ死ぬならちょっと痛いくらい平気じゃないですか? あの世に逝ったら抗議もできませんし!!」
『月刊・世界のサイコパスとかあったら、君は絶対に表紙を飾ると思う』
その後も六駆はホグバリオンを引き抜こうと試行錯誤を繰り返すが、無駄である。
何故ならば、それを突き刺したのが六駆だから。
最強の男が全力でぶん投げた剣を、最強の男が全力で引き抜こうとするとどうなるのか。
思わず「これって新しいトリビアになりませんか?」と付け加えたくなる事案であるが、答えは簡単。
ジェロードの鋼のように硬い肉が付与されているので、どんなに頑張っても抜けない。
彼が苦しむだけである。
そこで逆神六駆は考える。
どうにかホグバリオンを失わずに済む方法はないかと。
そして閃く。
幻竜ジェロードの体が大きすぎるのがいけないのだと。
ならば、小さくしてしまえば良い。
六駆は幻竜に提案した。
「あの、良い事思い付いたんですけど! 聞いてくれます?」
「ぐ、ぐぅぅぅ……。我は、もはや抗う気力もない。なれば、耳も塞げぬ」
「それは良かった! あなた、人間になりましょうよ!! 命も助かりますし、ほら、強敵と戦えますよ? 冥竜と帝竜でしたっけ?」
ジェロードは答える。
同時に南雲もモニター越しに意見を述べた。
「何を申しているのか、我にはさっぱり分からぬ」
『本当にね。何言ってんの、逆神くん。……君ぃ! また変態スキル使う気だろ!?』
逆神流に出来ない事はない。
それを今から、六駆おじさんが実践して差し上げます。
◆◇◆◇◆◇◆◇
六駆はかなり本気で煌気力場を展開していた。
幻竜ジェロードの体がすっぽりと収まるサイズである。
「ふぅぅぅぅぅんっ!! ああ、やっぱりこれは疲れるなぁ!! ふぅぅぅぅぅんっ!!!」
六駆が煌気力場を活性化させるために、大量の煌気を追加で注ぎ込む。
幻竜の体はそれに呼応するがごとく、柔らかい光を放ち始めた。
「よし! イケる!!」
『イク前にちょっと事情を聞いてもいいかな?』
南雲は別に、幻竜がどうなろうとも問題にするつもりはなかった。
この竜はこれまでに多くのスカレグラーナの民を苦しめて来たのだ。
ならば、報いを受けるべきだと考えていた。
だが、逆神六駆のワクワク大実験に使われるのは、あまりにも忍びない。
このワクワクさんはガチで「つくってあそぼ」を体現しようとしており、命と言うものの尊さについて南雲は説教したかった。
だが、六駆はワクワクさんとでんじろう先生をフュージョンさせて、そこにマイナスを掛けたような発想力の悪鬼。
人の説教で改心するとは思えなかった。
そんな中、六駆の準備が完了してしまう。
「では、いきまーす! 『生命大転換』!! ふぅぅぅぅぅぅんっ!!!」
幻竜の姿が煌気力場の中でブラックホールのようなものに呑み込まれる。
その様子は一般人はもちろん、監察官ですら恐怖を覚える光景であり、南雲はほんの10分前にトイレを済ませていたことを神に感謝した。
そのあとは、ガリガリガリガリと耳障りな音が響き続ける。
だいたい15分ほど経った頃合いだろうか。
六駆が両腕を下ろし、「あー! 疲れた!!」と満足そうに額の汗をぬぐった。
煌気力場では、ブラックホールから幻竜ではない何かが出現していた。
そのサイズは3メートル程度であり、元の幻竜に比べると10分の1以下のサイズである。
「ぐぉおぉっ……。わ、我はどうなったのだ?」
「すみません。僕、この手のスキルは苦手で。人間の姿にしようと頑張ったんですけど、竜の要素が結構残ってますね。角とか、牙とか生えてるし。鱗も残ってるし。何よりなんかデカいし。……まあ、竜人って事で、ここはどうかひとつ!!」
幻竜ジェロードは、人の姿をした竜に再構築されていた。
六駆には詳しい説明を求めたいところだが、彼は素早く竜人ジェロードの背後に回って、未だ彼の背中に突き刺さっていたホグバリオンを引き抜いた。
「ぐぉおぉぉぉぉぉっ!!」
「ああ、ごめんなさいね、痛かったですか? 『軽気功』っと!」
雑に回復スキルを使った六駆は、ホグバリオンの状態を確認する。
刀身は美しく、刃こぼれや錆もなかった。
「よし! 良かった!!」
『良かないよ!! 何をしとるんだね、君ぃ!! ジェロード生き返ってるじゃないか!!』
六駆は鞘に納めたホグバリオンに頬ずりしながら南雲に言い訳をする。
それは言い訳だったのだろうか。
「ジェロードさんには、味方になってもらいましょう」
『本当に何を言っとるんだね、逆神くん。今日は一段と冴えてるな、頭の狂い方が』
六駆は「強い者と戦いたいジェロードさんは、竜人の体を手に入れたから冥竜なり帝竜と戦わせたらいいんですよ!!」とほざいた。
やはり言い訳ではなかった。
おっさんの屁理屈である。
「と言う訳なんですけども。ジェロードさん的にはどうですか? ダメなら、残念ですけど今から改めて殺さなくちゃいけません」
続いて飛び出す、サイコパスの世迷言。
もうヤメて。ナグモのライフはゼロよ。
「……くっ。くははははっ! 逆神六駆、貴公は我を死なせてもくれぬのか! 我の負けだ! これより貴公の軍門に下ろう。新たな死に場所を用意してくれるか!」
「はい、喜んで!」
南雲は思った。
「なんでこの子たち、綺麗に纏まった風な空気になってるの?」と。
我々の代弁者、監察官・南雲修一には速やかにカフェインの摂取を勧めよう。
コメント
1件
六駆おじさん、マジでぶっ飛びすぎてて笑った😂😂 「人間になりましょうよ」っていう提案の意味がわからなさすぎて、南雲さんの「君ぃ!!」が完全に私たちの代弁者だった(笑) しかもちゃんとジェロードが軍門下るって言っちゃうんだから、この作者さんのキャラの掛け合いセンス、毎回ズルいよね…! ホグバリオンゲットからの竜人仲間ゲットで、またパワーバランスどうなっちゃうの!?😭💕
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