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これで良かったんだ。
どうやらゆあんくんは先程家を出たらしい。ごみ捨てから帰ってきた時に母さんから教えてもらった。
家に帰るまで気づかないと思うけど、最後の俺のわがままはどうか許して欲しい。
一生のお願いも聞いてもらったのにそれは欲張り過ぎたかな。
思わず玄関に座り込む。
母さんに「お腹でも痛いの?」
と聞かれたが今はもう考える気力すらないためそういう事にしといた。
あの時の熱がまだ手に残っているようでもどかしい。
早く消えてくれ、なんて本当は思ってもいないことを思いながら手を握った。
「今日は、ありがとうっと」
自分の部屋に戻ってLINEで短いメッセージを送信する、もう家に着いたのかすぐに既読がついて
「今度ジュース1本奢りな」と共にグッドスタンプが送られてきた。
いつも通りなのか呑気なのか羨ましい。
リアクションだけしてスマホをクッションに投げ捨てる。
これで良かった、何度もそう自分に言い聞かせた。
1年後yaくん視点
「もう俺ら高校三年生ってやばいだろ」
「マジで実感ない」
「それな」
特に今日は体育の授業もあってヘトヘトだ、ジリジリとした光が暑い。
バックなんて教科書だらけで持てたもんじゃない。
教材の量やばいしもうちょっと減らしてもいいだろ。
ふと、自販機が目に入る。
「…そういえば、まだじゃぱぱにジュース奢ってもらってなかったっけ」
確か、1年前ぐらいだろうか?
じゃぱぱのお願いに付き合って、そのお礼にジュースを要求した覚えがある。
今更かって感じだが俺が自動販売機を指さすとじゃぱぱは少し目を逸らした。
あ、こいつまさか俺がこの事忘れてたかと思ってただろ!そうだけど!
「はいはい…何がいいの?」
「コーラ」
「よりによってかよ」
ピロンとクレジット決済の音が鳴ったあとガコンとコーラが勢いよく落ちてきた。
「うまー!」
「良かったですねー」
じゃぱぱからコーラを受け取って一気飲み。
この飲み方が一番美味しいんだよな〜って呟いたらじゃぱぱにおっさんみたいな事言うなよって言われた。
…まだおっさんじゃねえし。
「飲む?」
「え?いや別にいいけど、それゆあんくんのじゃん」
「だってずっと飲みたそうな感じだったから、1口ならやるけど?」
じゃぱぱにコーラを差し出すと口を紡いだ。
「いや、いいよ。気持ちだけ貰っとく」
「そう?分かった」
そんな事を話している合間にいつの間にか別れ道に来たためじゃぱぱと別れる。
下校の時間は楽しいけどじゃぱぱと別れた後のこの時間はあまり好きではない。
家に帰るまで、先程と程遠い静けさに身を包まれながら道を歩く。
コーラは飲みきれないし冷蔵庫にでも入れておこう。
「ただいまー」
俺の両親はどちらも仕事の帰りが遅く大体ご飯は一人で食べることが多い。
「今日ハンバーグじゃん」
メモには「チンして食べてね」とだけ書き写されており電子レンジまで持っていった。
温めてる間、先にお皿とか用意しとこっかな。
「美味しかった〜」
この時間は特にやる事もなく、大体ゴロゴロしている。
高校生なんだから勉強やれよ!!って意見は知らない。
「ゲームでもやろっかな…」
そういえば、昔はよく日記とか書いてたっけ?
そんな毎日書くような事はなかったが、いつぞやに書いていた記憶を思い出す。
見返してみるのも楽しいかも、まだどこかに残っているはず。
確か、押し棚のところに…
「あった!」
ノートには日記帳と書き写されていてパラパラとページをめくる、時には1ヶ月空いていたり毎日書いていた時期もあったりバラバラだ。
「うわ、懐かし。確かこの時じゃぱぱとゲーセン行って破産したんだっけ?」
下の方にはお金のイラストにバツマークが付いていた。
他にもテストがだるかったとか、ナナチキが売り切れてたとかそんな他愛もない事が沢山書かれていてたまには昔の思い出に浸って見返すのも悪くはない。
「…あ」
最後のページだけやけに長文で目に入る。
確か…
「マジで!一生のお願い!!」
「え〜…?仕方ないなぁ…いつ行けばいいの?」
「明日」
「はァ!?」
懐かしい、思わず笑ってしまった。
じゃぱぱのお母さんに会った時、とても緊張したのを覚えている。
一日だけじゃぱぱの恋人になったんだっけ?
最初は嘘だろとか思ってたけどこれがまあ本人には言わないが案外楽しかったのを覚えている。
「あの時のじゃぱぱキョドってたなぁ(笑」
…そう、楽しかったんだ。
あくまでも、俺は。
じゃぱぱとは元から仲のいい自信はあるが自分を選んでもらった時とても嬉しかった。
じゃぱぱ自身は本当に困っていたんだろうけど。
思わず喉が乾いて冷蔵庫を開けると、飲みかけのコーラが目に入る。
なんとなく余っていたから一口飲んでみたけど、さっきみたいに美味しくは感じなかった。
「…なんだこれ」
あんなに美味かったのに。
あの時、じゃぱぱが俺を選んでくれて嬉しかったのは確かだ。
でもそれが本気じゃなくて済む関係だったからなのか、じゃぱぱだったからなのか正直今でもよく分からない。
いや、多分分かろうとしてないだけなんだと思う。
答えを出してしまったらきっと今のままじゃいられなくなるから。
今みたいにくだらないことで笑って。
何もなかったみたいにバカ話しをしながら隣を歩けなくなる気がして。
だから俺は、あの日のことも、この気持ちも、全部そういうもんだったってことにしてる。
そう、それでいいはずなのに。
視線は自然とさっき冷蔵庫に戻したコーラに向かう。
さっきはあんなに美味かったのに、
今はただの甘ったるい炭酸水みたいに感じた。
「ほんと、意味わかんねえし」
ピピピピピピピと、スマホから着信音が鳴り響く。
「誰だよ、もしもし?」
「あ、ゆあんくん出た。俺なんだけどさ」
「オレオレ詐欺はもう時代遅れだよ」
「違うわ!!暇だから今からそっち遊びに行ってもいい?」
なんというジャストタイミングだろう。
「…ゲーム機持って来て」
「勿論」
特に断る理由は見つからなかった。
「やっほー、お邪魔しまーす」
「はいはい手洗え」
「親かよ」
「持ってきたけど何すんの?」
「んー、対戦ゲーとか?」
「ゆあんくん負けたら言い訳するじゃん」
「…しないし」
ゲームを始めてからは久しぶりに大笑いしたり肩をぶつけ合ってちょけたり、さっき考えてたことが忘れるくらい
こいつと遊ぶのは楽しかった。
「あ!!今の絶対なしだって!」
「実力です〜」
「はぁ!?うざ!」
俺だって…とゲーム機をもう一度持つじゃぱぱ。
仕方ない、付き合ってやるかと思っていたらどうやら声に出ていたようで。
さっきのはまだ本気じゃなかったし!と騒ぎ立てる声を聞きながらスタートボタンを押した。
「じゃあまたね」
「うん、今日はありがとう」
「まじ次は絶対勝つから覚えてろよ」
あの後、結局試合は俺の勝ちでへこたれるじゃぱぱに笑う。
次はいつやろっかな、なんて考えながら背を向けるじゃぱぱを見送ってドアを閉めた。
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