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『それじゃあ、お気をつけて!』

と言って、文豪様らが潜書してから30分が経った。

因みに、結局潜書する文豪様のもう一人は芥川先生という事になった。何故なら、今潜書した本は真っ白で何も書かれていない。何が起こるかが分からないのである。故に「行きたくないんだけど、、」という赤髪バブちゃんが出てくるのだ。そこで芥川先生を連れてくると「さあ行きましょう!!」と張り切り出す5歳児が誕生する←少し成長

『調速機、、使おうかな、、、。』

冷静にしてはいるが司書になってからの初仕事に、潜書をしてもらう本が、或る意味危険な対象である真っ白な本ときたものだから、内心は心臓が苦しいくらいにバクバクしている。

『よし!調速機使おう!!』

何度目かの迷いから出した決断は望み通りのものだった。私は早速調速機を使い、どのような形であの人達が戻ってくるのか、緊張しながら光る本を見ていた。

「たっだいまー!!!」

「やっと帰ってこれたな。」

「一時はどうなるかと思ったけどね、、。」

「おっしょはん!今戻ったでー!」

彼らはなるべく明るく‐ただいま‐を告げてくれた。

そう、”なるべく明るく”だ。

「な、、、、なんで、、。」

彼らの姿は、見るに堪えない傷だらけだったのだ。あちこちから黒い液体が流れ出る。それが彼らにとっての”血”であることを知ったのは、半年前の事。

「ほ、、、補修室へ、、行きましょ!みなさんってば負傷してるじゃないですか!痛いでしょう?ささ!しっかり治療しますから、こちらへどうぞ!!!」

私も”なるべく明るく”、心配している様子だけは隠さずに、彼らを補修室へ連れていった。

『よし、、では皆さん。しばらくは安静にしてて下さいね。潜書お疲れ様でした、、!』

自らを持って、真っ白な本に潜む闇と戦ってくれた感謝の気持ちを込め、私は初めに挨拶をしたように深深と頭を下げた。

「これくらいどーってことないって!本当に軽い傷だったしさ!」

「せやで?治療してくれてありがとうな!」

「うん。凄く助かったよ。本当は少し痛みがあって、まずいと思っていたところだったからね。」

「そうだ。そんな心配しなくても、俺らは大丈夫だから、な!」

(キャラ崩壊すげぇ、、)

そう言って笑ってくれる文豪様達。私でも人(命)を助けられるんだ、と思えた。



けれど、、、。





司書の未熟さを知った。

出来ない事を知った。

只、彼ら文豪様達が潜書するのを手伝う。

怪我を負ったら治療をする。

彼らの大切な作品達を整理する。


これくらいしか出来ないと言う事。


今回は軽傷で済んだものの、下手したら”それだけでは済まない事態”になるというのを承知の上で、潜書させなければならない事。


「戦争に往く人と同じじゃん、、。」


いずれ命は無くなる。存在は消える。分かっていたのに辛い。








『よし!仕事しよ!』







眠りから覚めた時の彼らを笑顔で迎える為に、再び足を踏み出した。

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