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更新ありがとうございます! せなさんの作品大好きです!! こんな雰囲気の作品もかけるんですね!! 甘々も少し暗い雰囲気の作品もどちらも好きです!!
シリアス、多少のグロテスク描写注意
💙❤️
「あれ」
目が覚めると、目の前には真っ赤な液体と血に濡れた麻縄が近くに転がっていた。
「……?うーん……」
必死に記憶をかき集める。僕は昨日、何してたんだっけ。
「あー、思い出せない」
ふと手もとに目線を移すと、指先からぽたぽたと血が垂れていることに気づいた。
「あ、」
首を触ると、ガサガサとした感触がする。
この状況から察するに、また首を吊ろうとして……というか吊って、途中で苦しくなって……もがいてもがいて、縄から脱出したところで気を失ったのだろう。
たぶん、気を失ってからはそんなに時間はたっていないはずだ。まだ血液は固まっていない。
まあ、指先に付着している血はすこし固まっているものもあるから、気を失っているうちに身体中に傷をつけた可能性も否めないけど。
「……うっわ。ひど」
太ももと二の腕を見ると、案の定。惨い引っ掻き傷がたくさん。
だけど、これも僕の生きている証。
どんなに不安定だろうと、表向きに不安さえなければ平気なはずだから。
「え」
「!?」
中学生の頃からずっと一緒にいるからわかる。
よく聞き慣れた、この声。
「なん、……っ、若井……、?」
「玄関開いてたから……」
普段はそんなことは絶対にしないけど、それほどに昨日は疲弊していたのだろうか。
「……」
若井は部屋を一通り見回した後、僕のことをじろじろと舐めるように見てくる。
居心地が悪くなり、目を逸らした。
「元貴」
名前を呼ばれ、身体が恐怖に晒される。
「痛くないの?」
かけられた言葉はなんとも意外なものだった。
てっきり、なんでこんなことを?とか、悩みなら聞くよ。とか、そんなありふれた言葉だと思ったのに。
やっぱ、若井ってすごいんだな。
「痛くないよ」
「こんなに傷つけてさ」
「気づいたらこうなってたの」
若井は少しの間黙った後、自分の腕に爪を立てたかと思うと、ガリッ、と一思いに皮膚を裂いた。
「っ!」
見ていられなくて、目を瞑る。
「なんで目瞑るの」
「いっ、痛そうで……」
「痛くないよ。元貴とお揃いだから」
目、開けて?、と、言われるも、首をぶんぶんと横に振る。
痛いのはだいっきらいだ。
突然、生ぬるい感触が頬に伝わる。
思わず目を開けてしまった。これが良くなかったのかもしれない。
「かわいい」
今までにないほど、酷く優しい声で囁かれ、酷く優しい瞳をした若井と目が合う。
「……ぁ、」
目が、離せない。拘束されているわけではないのに。
僕の頬に添えられた手は、鮮血が付着していた。
僕の傷からは血が止まっていて、指先の血も固まり、黒くなっている。
「ぇ、あっ」
若井が僕の手を引き寄せたかと思うと、ガリッ、とさっきみたいに皮膚を裂いてきた。
不思議と痛くない。むしろ心地が良かった。
ちゅ、と指先にキスをされた。
鮮血が床に流れ落ちる。
「手、ほら」
真っ赤な掌をこちらに向けてにこにこと微笑む若井。
遠慮がちに掌を合わせると、ぎゅ、と指を絡められ、強く握られた。
互いの鮮血が混ざり、重力に負けてゆく。
「これで俺たち、おんなじだね」
こんなにも美しい血液を見たことがあるだろうか。
きらきらと朝日に照らされて、宝石のようにきらめく。
「泣かないでよ」
悲しいわけでも、痛いわけでもない。
なら、この涙はなんだろう。
「元貴の傷は、俺の傷だから」
人生の酸いも甘いも、
互いの引っ掻き傷をも愛して。
血はなかなか止まらない。
そりゃあそうだ。こんだけ深い傷ならば。
……若井は、僕のことをこんなに深く想ってくれてたんだ。
嬉しい。
嬉しい。
嬉しい!
「幸せだね」
「そうだね」
軽いキスを何度も交わす。
醜く汚れた世の中を、今だけはふたりの色で彩って。
グロ耐性ないけど好きなので顰めっ面しながら書いてました。
テーマ:血濡れの指に口づけを