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ーーーー数年後
視点 🐼
第七セクター、第三区画。
いつもの集合場所は、今日も変わらない。
「……人数増えたな」
きんときがぼそっと言う。
「うるさい」
間髪入れずスマイルが言うのを見て、きりやんが苦笑いを浮かべている。
今日は対魔術一族討伐部隊の登録……まぁ簡単に言うと外に出るために冒険者登録をする予定なんだけど……
スマイルときりやんが急に来れるようになったから予定より人数が多くなっちゃったな。
「………Broooockまだ来ないの?」
「「あ」」
シャークんの言葉でBroooockの存在を思い出した。
__________________
9時頃
Broooockが向こうからパンをくわえたまま走ってくる。
「おはよー!」
「お・そ・い!遅刻だよ!全く!」
きんときに怒られ始めるBroooock。
「ごっめ〜ん!それより!早く行こ!」
僕今日が楽しみでしかたなかったんだよ!
そう言いながら小走りで駅へ向かうBroooock。
「もう!Broooock!」
きんときが怒りながら追いかけてく横で……
スマイルは本読んでいるし、シャークんはゲーム機でゲームしてるし、きりやんは商店街の行動計画してるし!
「遊びじゃないんだよなぁ」
そう呟いたが、誰も反応してはくれなかった。
シャークん?聞こえてたの知ってるよ?
_________
午前
「こんにちは〜!」
Broooock……は、早いってぇ!
「いらっしゃいませ!対魔術一族討伐者登録はあちらの窓口です!」
「じゃぁここは!俺から行くわ!」
そう言い前に出る。
リーダーなんだから一番じゃなきゃ!
「お名前伺います」
「中村祐希です!」
「はーい。………登録完了です!」
これが俺の冒険者カード…!
その次Broooock、きんときと……続いていき、最後シャークんの番になった。
「お名前伺います」
「翡翠玲央さん………少々お待ちいただきますが、ご了承ください。」
「あ、はい」
「え?なんでシャークんだけ止められたの?」
最後になってぇ〜〜
______
あれから数時間経過した。
「ねぇまだぁ?僕飽きてきた〜」
駄々をこね始めたBroooockに共感し始めた頃
「翡翠様〜」
「大変長らくお待たせいたしました!ですが……申し訳ないことに、翡翠様現在入院中となられていまして……一度市役所の方へ伺ってもらうことになっています。」
「っえ?わ、わかりました……」
………まじかぁ、
「ここにきてコレってありぃ?」
__________________
午後
「どうするか…」
俺は冒険者カードを指先でくるくる回しながら呟いた。
シャークんは静かに座っている。
表情はいつも通り落ち着いてるけど、指先で机を叩いていて、落ち着かない様子だ。
シャークんが入院中になってるのはわかるんだけど……何年も脱走がバレてないのっておかしくない?
「第四区画の大病院だよね」
きりやんが冷静に言う。
「書類上は“入院中”扱いだろうな」
スマイルが淡々と続ける。
数年前から普通に外出してるのに、いまだに入院中ってどういうことだよ。
「ここにきてこれってありぃ?」
Broooockが椅子にもたれながらぼやく。
「あり得なくはない」
スマイルはページをめくりながら言った。
「管理対象の情報は意図的に固定されることがある」
……つまり、シャークんはまだ“危険扱い”のまま。
俺はシャークんを見る。
「どうしたい?」
少しの沈黙。
「登録、する」
短いけど、迷いはなかった。
「外に出るなら、正式な身分がいる」
スマイルのその一言で決まった。
「第四区画、行こう」
「今度は順序立てて動け」
きんときが釘を刺す。
「わかってるって!」
「前科持ちが言うと説得力がないな」
そうスマイルが小さく鼻で笑う。
うるさぁぁぁぁい!
__________________
第七セクター第四区画。
区画そのものが巨大病院。
白い外壁、無機質な空気、消毒液の匂い。
受付へ向かう。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
落ち着いた女性の声。
きりやんが前に出る。
「翡翠玲央の在籍状況確認と、登録情報の修正をお願いできますか?」
受付が端末を操作する。
「確認いたします。……翡翠玲央様は現在、魔力安定観察下にあり、外部登録は許可されておりません」
丁寧だけど、きっぱり。
「でも本人はここにいるよ?」
Broooockが横から言う。
受付が顔を上げる。
「……ご本人様が?」
シャークんが一歩前へ出る。
「俺が翡翠玲央です」
一瞬、空気が張りつめた。
「失礼いたしました。身元確認を行いますので、少々お待ちください」
奥から医師が現れる。
「翡翠くん。外出は報告されていたが……登録とは」
シャークんは目を逸らさない。
「暴走はここ六年起きてない」
「それは奇跡的なものだ。」
そう医師が言う。
此奴ぅ!
「数値データを提示してください。制御精度が基準内なら、拘束理由は弱い」
スマイルがそう口を挟む。
医師が眉をひそめる。
「君は?」
「同行者だ」
静かな火花。
きりやんが小声で俺に言う。
「理屈で突破する気だな」
検査室へ通される。
魔力出力。
制御精度。
精神安定値。
……時間が長い。
俺の方が緊張で心臓うるさい。
そして。
「……制御精度、基準値内」
医師が深く息を吐く。
「条件付きで管理対象を解除する。定期報告は義務だ」
シャークんの肩が、ほんの少し下がった。
「それでいい」
その声は、ちゃんと前を向いていた。
__________________
夕方。
討伐部隊支部へ戻る。
「お待たせいたしました。登録情報の更新が完了いたしましたよ」
受付の職員がカードを差し出す。
「翡翠玲央様、登録完了です」
シャークんがカードを受け取る。
じっと見つめてから、小さく言う。
「……これで、同じだな」
胸が熱くなる。
「当たり前だろ!」
Broooockが背中を叩く。
「今日は祝祭でしょ!?泊まりでしょ!?」
「勝手に決めるな」
スマイルが呆れる。
でも否定しない。
きりやんはもう買い出しルートを考えてるし、きんときは「布団足りる?」って現実的。
なんだよもう。
「遊びじゃないんだよなぁ?nakamu」
シャークんがちらっとこっちを見る。
……やっぱ聞こえてたな?
__________________
夜。
第三区画、きんときの家。
布団がずらっと並ぶ。
Broooockはテンション高いし、
きりやんは料理並べてるし、
きんときは仕切ってるし、
スマイルは本を閉じる。
シャークんは天井を見上げていた。
「やっとスタートラインだな」
俺が言う。
「遅い」
スマイルが即答。
早くね?
でも声は柔らかい。
「愚か者ども」
「はいはい」
きりやんが笑う。
「でも悪くないだろ?」
少しの沈黙。
スマイルが小さく言う。
「……まぁな」
それだけで十分だった。
窓の外は夜。
空はまだ見えない。
でも。
数年前、教会で言った言葉。
“隣に立ってほしい”
今はちゃんと並んでる。
俺は天井を見ながら思う。
絶対、行く。
みんなで。
――チャプター1・完
――チャプター2へ続く