吉沢亮（短編）

【彼女がスマホばかり観ていたら 】

彼女がデート中にずっとスマホを見ている。

最初の5分、彼は黙って微笑みながら待つ。

10分後、さりげなく「…俺より面白い？」と低い声でつぶやく。

さらに5分後、スマホを覗き込んで「それ、俺の写真じゃないの？」と冗談めかして笑う。

でも目はちょっとだけ寂しそう。

最終的には、「もう…俺、帰ろうかな」とわざと拗ねたふりをして、彼女の気を引く。

彼女が慌ててスマホを置き、「ごめん、仕事の連絡で…」と弁解する。

彼 は、ふっと息を吐きながら「…分かってるよ。 でも、俺にも構ってよ」と少し照れた声。

彼女が「じゃあ何したい？」と聞くと、

彼は「別に…こうやって一緒にいるだけでいいけど」と言いながら、さりげなく手を取る。

そのあと、歩道を歩くときは彼女のスマホをスッとポケットに入れて、

「はい、これは後で返します」って子どもみたいな笑顔。

結局その日は、彼女がスマホを触るたびに「俺がいるよ？」と軽くつつく。

夜には「今日の〇〇は俺を放置する天才だったね」とLINEを送って、

最後は「でも、やっぱり俺が隣にいるときは俺だけ見てて」とオチをつける。