テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

吉沢亮(短編)

一覧ページ

「吉沢亮(短編)」のメインビジュアル

吉沢亮(短編)

2 - 彼女が約束を破ったら

♥

26

2025年08月13日

シェアするシェアする
報告する

【彼女が約束を破ったら】



扉が静かに閉まる音が、部屋の中でやけに響いた。

吉沢さんは、ゆっくりとこちらへ歩み寄る。

その視線は笑っていない。

「…また、約束破ったね?」

低く落ち着いた声に、背筋がわずかに震える。

次の瞬間、手首を軽く取られ、逃げ場を失うように壁際へ導かれた。

彼の影が覆いかぶさり、視界はすっかり狭まる。

息が混ざるほど近くで、囁くように告げられる。

「今日は…ちゃんと反省してもらうから」


その言葉の意味を、試すような微笑みと共に受け取ったとき、

心臓が痛いほど早く打ち始めた。

部屋の空気は熱を帯び、動けないまま、彼の指先が髪をすく。

それだけで、全身が捕まえられたような感覚に陥った。

彼の視線がゆっくりと降りてきて、目の前で止まった。

「動かないで」

小さな命令のような声が、耳の奥に残る。


距離がさらに詰まり、吐息が頬をかすめた。

唇が触れるか触れないか――その境界で、時間が引き延ばされる。

その焦らしに、思わず息を詰めると、彼はわずかに口元を緩めた。


「そんな顔されると…もっと意地悪したくなる」

囁きと同時に、ほんの一瞬、やわらかな温もりが唇をかすめる。

軽く、けれど逃がさないように。

それは優しさよりも、支配の色を帯びたキスだった。


唇が離れると、彼の瞳が真っ直ぐこちらを射抜く。

「まだ終わりじゃないよ」

その言葉が、鼓動をさらに乱していく――。

唇が離れると同時に、彼はゆっくりと笑った。

「そんなに震えて…本当に反省してる?」

わざと意地悪く、頬を指先でなぞる。

答えられずにいると、手首を離さぬまま、もう片方の手で顎を軽くつままれる。

視線を逃がそうとした瞬間――

「こっちを見ろ」

低く鋭い声に、反射的に目を合わせてしまう。


「いい子にできないなら…もっと厳しくするけど?」

挑発するように唇が近づき、わざと触れずに横へそれる。

その焦らしに、胸が痛いほど高鳴る。


彼の指先が、首筋をゆっくりと辿る。

ほんの軽い接触なのに、まるで全身を支配されているようだった。

「まだお仕置きは、これからだよ」

その囁きが、耳の奥で何度も響いた――。

「立って」

短い命令に、思わず身体が反応する。

足元がふらつくと、彼は片手で腰を支えながら、逃げられない距離を保ったまま動かす。

「ほら、目を逸らすな」

顎を持ち上げられ、視線を縫い止められる。

その瞳は笑っていない。むしろ、逃げる隙を与えまいとする色をしていた。


唇がまた近づく――と思った瞬間、彼はわざと止まり、耳元へと軌道を変える。

低く、熱を帯びた声が囁く。

「欲しいなら…ちゃんと言え」


息を呑む間もなく、背中を壁へ押しつけられた。

両手は頭上でまとめられ、完全に動きを封じられる。

その状態で、ゆっくりと顔が近づいてくる。

今度こそ、逃げられない。


「素直にできるまで、離さない」

そう告げた彼の瞳に、支配の色と、ほんのわずかな愉しみが宿っていた――。

両手を掴まれたまま、視線を外せずにいる。

胸の奥が早鐘のように鳴り、呼吸が浅くなる。

彼はその様子を見て、ゆっくりと唇の端を上げた。

「…もう限界そうだね」

その言葉には、容赦のない確信が滲んでいた。


顔が近づき、吐息が唇をかすめる。

触れる寸前で止まり、わざと間を置く。

その数秒が、耐え難いほど長く感じられた。


「ほら、言ってみな」

低い声と共に、指先が頬から顎へとゆっくり辿る。

その触れ方は優しいのに、逃げられない重圧を帯びている。


声が出ない。

ただ震える唇を見つめながら、彼はさらに問いかける。

「欲しいんだろ?」


沈黙のまま、ただ小さく頷くと、彼の表情が満足げに変わる。

「それでいい。…やっと素直になったね」


次の瞬間、迷いも焦らしもなく、深く口づけられた。

抗う余地など最初からなかったと、ようやく悟った――。



この作品はいかがでしたか?

26

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚