テラーノベル
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彼のキャッチコピーは『スピードスター』だけれど、僕にはキラキラと輝く太陽に見える。真面目でかっこいいけれど、時々可愛いところを見せるそのギャップがみんなを温かくしてくれる。マイクラのPSはずば抜けているのに誰にもひけらかさない謙虚さ、その技をためらわずに教えてくれる。
そんなところに僕は惹かれていた。でも、言葉で言うのは恥ずかしいし、一般的には変に思われること。だから僕は何回かに分けてあるプレゼントをすることにした。
「おんりー、これ、いつもありがとう!」
春、僕は彼にミモザの花束を渡した。少し力を入れたら壊れてしまいそうなほどに繊細で小さい花。甘く柔らかい匂いが鼻をくすぐった。
「ありがとう。この花、なんだかいい匂いがするね」
花を受け取った彼はふにゃりと無防備な笑みを浮かべた。その表情以上に柔らかく甘いものを僕はまだ知らない。
「おんりーお疲れ様!これ、今日の分の『お疲れ』やで!」
夏、僕は彼にひまわりを一輪渡した。背を伸ばし凛とした花はまっすぐと一点を見つめている。
「でかっ、、、ありがと、おらふくん。ひまわりってなんか元気出るよね」
ひまわり越しに笑った彼の顔はカンカンと照りつける太陽よりも眩しかった。
「おんりー、これ。今日金木犀の木を見つけたから一枝もらってきた」
秋、僕は彼に金木犀の木の枝を差し出した。どこか儚げのある甘い香りが夜の空気に溶け込んでいく。
「ありがとう。すごくいい香りだね」
受け取った金木犀にクンと鼻を寄せる彼の横顔。金木犀の香りよりも、彼への「愛」が僕を支配していた。
「おんりー、これ。今年最後のお花やで」
冬、僕は彼に最後となるであろうフリージアの花束を渡した。その時僕の指が彼の指先に触れ、心臓が跳ね体温が上昇する。
「ありがとう。季節が変わるごとに渡してくれるよね」
そう言って彼は笑った。背景には眩しいほどに輝くイルミネーション。手には黄色いフリージア。寒さに赤くなった頬。モノクロになりやすい冬、彼の姿は他の何より何倍も映えた。いや、僕にそう写っただけかもしれない。
「なあ」
寒さと緊張で固くなった口をこじ開け、白い息とともに僕は言葉を出す。彼は驚いたように目を見開いた。
「その、フリージアの花言葉『期待』って言うんや」
「だから、その。僕も期待してええかな。友達でも、仲間でもない、それ以上として」
急激に体温が上昇する。僕の鼻から耳の端まで、真っ赤に染まり上がる。彼もまた同じだ。
彼はふっと、泣きそうな顔で笑った。
「、、、遅いよ」
「俺、おらふくんから花をもらうたびに花言葉を調べたんだ」
「えっ、、、」
衝撃の告白に僕は目を見開いた。冬の乾燥した冷たい空気が眼球に刺さる。
「そうしたらさ、花言葉に『感謝』だって。そして『一目惚れ』」
彼はは愛おしそうに虚空を見つめた。その時のことを思い出しているらしい。
「まだ『感謝』だけで選んでくれたのかなって思った。ひまわりだって『憧れ』だってあるし、単に夏っぽいからっていう理由だってつけられる」
「でも、金木犀で一気に変わった。だって『真実の愛』でしょ?こんなの、『期待』しちゃうよ」
彼は恥ずかしそうに笑った。その表情が彼の心情をそのままに表した。
「俺も、おらふくんと今まで以上の関係でありたい」
約一年の片思いがようやく実った、、、いや、満開になった瞬間であった。
僕は声が出なかった。返事ができなかった。だから代わりにおんりーを抱きしめた。冬に感じる人の体温は、これまでに温かいものなのだろうか。
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