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運動会前日の夜、2人は遅くまで練習をしていた。リレー、稽古、リレー、稽古、リレー、いつもなら5時には家に帰るめぐみだが今日は夜の8時まで練習した。
「はぁ、はぁ、はぁ、もう、いいんじゃねぇか?」
「も、もう1回練習させて!」
「ば、バトンのつなぎ方も、テイクオーバーゾーン内の減速と加速のとこも大丈夫だぞ?」
「あと1回、最後に復習兼ねてやらせて?」
「わかったよ、マジでお前はタフだな笑」
少し休憩した後に最後のリレーの練習をする。
帰り道
「なあ、勝原んとこのダンスは完璧なのか?」
「う、うん、多分大丈夫だと思う」
「そっか、まあ台風の目とか騎馬戦とか、そこら辺は俺ら問題なさそうだもんな」
「うん、誠くんの組体操とかは大丈夫なの?」
「ああ、問題ないよ」
しばらく二人の間に沈黙が流れた。
「なあ、、」
「ん?」
「明日、俺ら、勝てるよな、、、」
「….」
「あれだけ練習したもんな、でも、もし、、」
「絶対に勝てるから大丈夫!」
「か、勝原….」
「少なくとも今の私たちは絶対に勝利を導くことができるじゃない!」
「そ、そうだよな!」
「明日は頑張ろうね!」
「おう!」
運動会当日、町中から多くの町民が集まり大いに盛り上がっていた。両親、近所のおばさんやおじさん、町長なども見に来るほどだった。
めぐみ達のクラスは騎馬戦こそ圧勝で良かったものの、台風の目でまさかの最下位位になってしまったのだ。残る競技は学年対抗リレーのみになった、のこりはポイント稼ぎができないダンスと組体操だからだ。
『ただいまより、学級別対抗リレーを行います。選手たちの入場です、拍手でお迎えください!』
放送担当の生徒の掛け声と音楽と共に、小走りで入場する。誠が走りながら隣にいるめぐみに声をかける。
「なあ、俺ら大丈夫だよな」
「え、今更何言ってるの?笑」
「急に怖くなってきた….」
「もう、しっかりして!」
「お、おう、ごめん….」
「じゃあね」
そういうとめぐみ達の列が校庭の真ん中で分岐する。誠とめぐみはお互い反対側につく。
1走者目は誠、位置につく。ガタガタの震える手を抑えながら地面に手を置く。チラッと反対側の方を見るとめぐみがこっちに向かって声援を送ってくれてる。
(応援に、答えないと….!)
「位置について。」
「よーい」
パン!
音とともに1走者目が走り出す。途端に周りから歓声が聞こえる。
(あっ….)
「さぁ一走者目の人達がスタートしました、おっとここで2組が少し遅れてスタート!最後尾の4組とは少し間があいてしまいました、縮めることは出来るか!」
まもなくカーブに差しかかる、前の4組とは少しであるが差ができている。
(ま、まずいこのままだとビリのまま渡すことになる….)
弱気になっていた誠、そこへ
「頑張ってぇ〜!」
数々の声援の中から聞こえてきたのはめぐみの声だった。
(そうだ、こんなんであきらめちゃだめなんだくそ、負けるかァァァァ!)
すると誠が少しづつ4組との距離を縮める。
「おっと2組、ここで4組に大接近しました!」
そしてついに….
「おーっと、ここで2組が4組を抜きました!これは凄いぞ」
ついに4組を抜かすことが出来た、その勢いのまま1組との距離も縮める。
(よっしゃあああ、そのまま1組も!)
「すげええぇ、行けえ!」
「あと少しだぞ誠、頑張れぇぇぇ!」
「誠くん!!」
しかしあともう少しのところで追いつかなかった、めぐみにバトンを渡す。
「勝原!!」
「はい!」
きれいにバトンを渡せた、その瞬間にめぐみが加速する。その背中を見ながら、誠は自分の組の列に並ぶ。
レースを見ると、ちょうどめぐみが1組に続き3組を追い抜かしていた。
「なんとぉ、2組がすごい追い上げを見せている!先程の1走者から1組目を抜かし、2走者になると2組連続抜きだ、恐るべし2組!」
(すごい….すごすぎる!)
自分ではできなかった2クラス抜きを容易にやってのけてしまうなんて、、、自分とめぐみの差が目に見えてわかってしまい少し気が暗くなってしまった。
そのとき
「なんとここで2組が転倒!立ち上がれるか?!」
えっ、と思い辺りを見回すとカーブの終わりあたりで倒れているめぐみの姿があった。必死に立って再度走り始めるが、既に最後尾にいた4組にも抜かされていた。バトンを渡し、列に戻って行っためぐみだが競技が終わるまでずっと下を向いていた。
結果、2組は3位で終わった。残りの2人が全力で頑張ってくれたが5,6組には追いつくことが出来なかった。
席に戻った時にめぐみに声をかけたが
「おつかれ、そんなに落ち込むなよ、な!」
「….」
「大丈夫だって」
「もう、ほっといてよ….」
そう言って校舎の方に走っていってしまった。
全ての競技が終了し、総合的な結果2組は4位で終わった。
教室に戻ってもそこにめぐみの姿はなく、めぐみの親友の愛菜に聞いても
「めぐみならトイレでずっと泣いてるよ、みんな気にしてないって言ってるんだけど、、、」
と言っていた。
でも、誠はどうしてもめぐみに感謝の意を伝えたかった。もしあの声援がなかったら、自分はきっとレースを諦めてしまっていたから。
みんなが帰っていっても、誠は待ち続けた。愛菜も途中までは待っていたが、ついには予定があるからと帰ってしまった。
そして17時半頃
ガラガラガラ
「ん….あ、あれ、おれ寝てたのか….」
「え、、、」
「ん、勝原!!」
「誠くん….なんでここに、もう5時半だよ?」
「勝原を待ってたんだよ」
「待たなくても良かったのに、、、じゃあね」
そう言ってバッグを持って教室を出ようとするめぐみ。
「ちょっと待てよ!!」
めぐみの足が止まった。すかさず誠が言う。
「俺、勝原に感謝してるんだよ」
「え、、、私に?」
あまりに予想外の言葉が来たため混乱しているめぐみ。
「そう、勝原だよ」
「なんで、、、私は何もしてないよ。なんなら足引っ張ってばっかりだったし….」
「いや、俺は勝原の声援がなかったらあのレース諦めてた」
「え、、そうなの?私大したこと….」
「言ってたんだよ、勝原がそう思ってなくても」
「….」
「俺、スタートミスって前の4組になかなか追いつけなくて、もう諦めようとしてたんだよ」
「….」
「でも、あの時の声援の中で俺の耳に聞こえてきたのは、勝原、お前だけだったんだよ」
「….」
「勝原の声援をもらって、体の底から出てくるエネルギーをフルに発揮して4組を抜かせたんだ」
「….」
「でも俺に比べたら勝原ほんとにすごいぜ、2組も抜いたんだから」
「….」
「それに、いつまでもくらい気持ちでいたら明日の大会に響くだろ」
「….」
「まあ、お節介かもしれないけどさ。今日は早く寝ろよ?」
「….」
「じゃ、俺は帰るから」
そう言って教室を出る。廊下を歩いてしばらくした時
スタスタスタスタ
「ん?、うわ!」
足音がすると思い後ろを振り返ると、めぐみが猛ダッシュで走ってきて誠に抱きつく。
「お、おいなんだよ」
「グスッ、ありがとう」
「え、なにが?」
「私のことをあんなふうに言ってくれて、そしてこんな時間まで待ってくれて….」
「いや、いいんだよ。俺は本当のことを言ったまでだし好きで残ってたんだから」
するとめぐみの抱きしめる力が強まった。
「お、おい痛いって」
「だって、、、私誠くんがす….」
「え、今なんて?」
すると
「おい、誰かいるのかー、下校時刻はとっくに過ぎてるぞー!」
奥の方から先生の声が聞こえる。
「お、おいやべえって!」
「そうだね、早く帰ろう!」
帰り道
「ねえ誠くん」
「ん、なに?」
「ありがとうね」
「え、なにが?」
「色々と!」
「え、何怒ってんだよ?」
「別に怒ってないわよ、もう」
「怒ってるだろその言い方笑」
「ねえ、、、」
「ん、なんだ?」
「今日って、このあと暇?」
「え、ああうん。暇よ、どした?」
「もしまだ体力が余ってたら、その、、相撲の練習に、付き合って欲しいなぁって」
「なんだ、そんなことか笑」
「そんなことってなによ!」
「いや、別に?当たり前だろ明日大会なんだから、断るやつがどこにいるんだよ」
「いい?ありがとう!」
「じゃあ帰ったらめぐみんち行くな!」
「うん!」