しばらくの間、二人は何も言わずに座っていた。静かな屋上で、風の音と遠くの雑音が心地よく響く。かなは少し落ち着いた様子で顔を上げ、周りを見渡す。
「もうすぐ、授業が始まる時間だよ…。」
かなは小さく言って、時計を確認する。確かに、もう少しでチャイムが鳴る時間だった。
「…行かなくていいの?」と、かなは少し心配そうに尋ねる。それと同時にチャイムが鳴る。
キーンコーンカーンコーン
はるは一瞬、迷う素振りを見せたが、すぐに小さく頷く。
「うん、私は…かなと一緒にいたい。」
その言葉に、かなは一瞬言葉を失う。はるが、わざわざ自分のために授業を放棄するなんて想像していなかったからだ。
「え…?」
「だって、かなが一人でいるのが嫌なんでしょ?私は…かなが寂しくないように、ずっと一緒にいたいなって思って。」
はるの言葉に、かなは驚きと照れを隠せずに顔を赤くする。普段はクールなはるがこんなことを言うなんて、少し意外だった。
「べ、別に…そんなこと、ないし。」
「でも、泣いてたじゃない。私はかなのこと、守りたいんだ。」
かなはしばらく黙ってしまうが、心の中ではるの言葉に温かさを感じていた。その温かさが、胸の中にじんわり広がっていく。
「…ありがと。」
「いいんだよ、私が言いたかったことだから。」
はるは微笑みながら、少し顔を近づけて言った。それにかなは、また少し照れたように顔を背ける。
「じゃ、行こうか?」
「うん…。」
二人は少し照れくさいように笑い合い、手を軽く振り合って、屋上から教室へと戻るために歩き出す。