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恐怖の館からの脱出

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恐怖の館からの脱出

1 - 第1話

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2025年06月22日

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【第1話:静寂の日常(プロローグ)】

「なんで生きてんのかって?……そんなの、俺にもわかんねぇよ。」


春の午後。

窓から差し込む柔らかな光と、教室に響くクラスメイトの何気ない会話。

高校2年生の黒岩竜一は、どこにでもいる普通の男子生徒――の、はずだった。


いや、どこか少し違った。

放課後になっても居残るわけでもなく、何かに打ち込むわけでもない。

何もせず、ただ日々を“やり過ごして”いるような青年だった。


「おーい、竜一~!帰んぞ!」

クラスメイトの近藤翔太が、教室の後ろから声をかけてくる。

竜一は軽く手を上げて答える。


「悪い、先帰っててくれ。ちょっと保健室寄る。」


「また腹でも痛ぇのか? ま、気をつけろよ。」


翔太が去ったあと、竜一は静かな教室に1人取り残される。


窓の外では桜が風に舞い、街の喧騒すら遠ざかっていた。


彼の机の端には、1枚の古い写真が挟まれていた。

5人の笑顔が並ぶ――中学生の頃の集合写真。

その中の1人、黒髪ロングで穏やかな笑顔を浮かべた少女に、竜一の視線が吸い寄せられる。


星野ミク。

2年前、突然この世を去った元クラスメイト。


「もう、忘れろってのかよ……。」


竜一は目をそらすように写真をしまい、教室を後にした。



――夜


「……あれ?」


気づけば、竜一は知らない“部屋”に立っていた。


四方を囲む石造りの壁。

暖房もなく、薄暗く、かすかにカビ臭い空気が漂っている。


中央には、一台のベッド。

窓もない。扉も見当たらない。

まるでこの空間だけ、何もかもを拒絶しているかのような感覚。


竜一は自分の体を見下ろした。


(夢……なのか?)


すると――。


「ゴォオォォォォ……」


遠くから、獣のような唸り声が響いてくる。

心臓が早鐘を打つ。

なぜか分からない。でも、“あれ”に見つかってはいけないと、本能が叫んでいた。


部屋の壁の一部が、ゆっくりと変形を始める。

まるで“向こう側”から誰かが這い出してくるかのように。


竜一は逃げ出した。

何がなんだか分からないまま、手探りで見つけた扉を開け、石の廊下へと走り出す。


天井から雫が落ちる音。

遠くで響く金属音。

足音ではない、“何かの這う音”。


(なんだよここ……!)


息を切らせながら走り抜け、やがて――


目の前に、ひときわ異質な扉が現れる。


白く輝く扉。


まるで出口のような、聖域のような……あるいは、死への入り口のような。


竜一はためらいながらも、その扉に手を伸ばす。



――バチン。


目を覚ました時、竜一はベッドの上にいた。


額には汗。全身は冷え切っていた。


(……夢、か……?)


だが、胸の奥に残る異常なほどの恐怖感は、ただの夢ではないと告げていた。


そして――このとき彼はまだ知らなかった。


明日の夜、彼と共に“あの館”へと引きずり込まれる2人目が現れることを。

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