テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#恋愛
桜咲かな
934
#恋愛
桜咲かな
687
#恋愛
桜咲かな
733
桜咲かな
742
逮捕ならばシャインが連れて行かれた先は分かる。城の裏側にある地下牢。皮肉にも以前にレイニルが監禁された場所でもある。
「……レイニル様!?」
レイニルはステラを押しのけて部屋を飛び出す。走るのに邪魔なドレスの裾を両手で持ちながら、全力で階段を駆け下りる。
やっとの思いで城の外へと出ると、晴れ男のシャインが地下に閉じ込められたせいか、曇り空になっていた。
ヴェルクがシャインを幽閉しようとする理由は、単純に雨のコントロールのためなのか、それとも……。
(シャイン、ごめんなさい、私のせいで……)
こんな時でもレイニルは、シャインを巻き込んでしまったのは自分のせいだと己を責め続ける。
城の裏側へと周り、地下牢へと続く階段まで辿り着くと、躊躇う事なく階段を下っていく。
今度は、自分がシャインを地上へと救い出さなければと……強い罪悪感と意思を心に秘めながら。
地下へと辿り着くと、シャインがいるであろう牢屋への道を塞ぐようにしてヴェルクが立ちはだかる。その左右には武装した兵が控えている。
「ヴェルク様……これはどういう事なのですか」
レイニルは気丈にも堂々とヴェルクに立ち向かう。一国の王を捕らえるなんて、ヴェルクもただでは済まない行為だろう。
ヴェルクは相変わらず闇に溶け込みそうな黒いスーツと漆黒の瞳で余裕の薄笑いを浮かべている。
「ヘリオス様がサンディ国王として即位されました」
「え……?」
「シャイン様はもう、国王でもお得意様でもないのですよ」
「それは……本当ですか?」
そう言いながらも、おそらく本当の事を言ってるのだと分かる。ヴェルクが嘘で一国の王を捕らえるなんて危険な行為はしない。
ヘリオスがサンディ国の王ならば、アメリア国との水の売買の交渉と決定権はヘリオスが持つ。もうヴェルクはシャインにへりくだる必要はない。
「シャインを……どうするのですか?」
王妃でなくなったレイニルにも権力はない。それでもシャインだけでも守りたい一心で、レイニルはヴェルクの人格と人情を信じるしかない。
「サンディ国にお帰り頂きます。逃亡や駆け落ちをされては困るので一時的に捕らえました」
ヴェルクの判断は当然だった。アメリア国にシャインが居続けたら雨が降らない。晴れ男のシャインにはサンディ国で能力を発揮してもらわないと困る。
水の需要と供給。それを成立させるためには、アメリア国には雨女のレイニル、サンディ国には晴れ男のシャインを置く事が必須。
雨女と晴れ男が共にいる事は許されない。二人は最初から交わる事のない運命だった。
「なら、私は……?」
「以前に申し上げました通り、私と結婚して頂きます」
ヴェルクを挟んでいた二人の兵が動きだして、今度はレイニルを左右から挟むと両腕を掴んで拘束した。
そのまま、引きずるようにして無理やり地下牢の出入り口である階段の方へと歩かされる。
「いやぁっ!! シャイン!! シャイン!!」
もうレイニルにはシャインに会う事すら叶わない。地下牢に響き渡るレイニルの叫びは、きっと牢の中のシャインにも届いているはず。
長年の地下牢暮らしから解放してくれて、愛を教えてくれたシャインと本当の夫婦になれないまま別れるなんて……。
愛する人を救えない無力な自分が憎くて涙が溢れて止まらない。
階段を上りきって強制的に地下牢から地上へと連れ戻されると、外はいつの間にか激しい雨になっていた。
まるでレイニルの涙に反応したかのように、雨女はアメリア国の大地に涙の雨を降らせる。
コメント
1件
第29話、胸が締め付けられました……。レイニルが「シャイン、ごめんなさい」と自分を責めながら地下牢へ走る姿が切なくて。晴れ男が閉じ込められたせいで曇り空になった情景描写も、二人の運命を象徴しているようでゾッとしました。最後の雨がレイニルの涙そのものみたいで、言葉を失いました。どうかこの先、二人に救いが訪れますように……。