最終話!
em side
嘘だよな。
幻覚やんな。
なんで。
なんで、ゾムさんが、刺されなきゃなんないんだよ。
なんで、彼奴の勝手なエゴで刺されなきゃならないんだ?
彼奴。
笑ってた。
刺した時も、この部屋を出て行った時も
なんで、…なんで?
なんで…?
それしか頭に出てこなかった。
ゾムさんの側に行きたかった。
動きたくても、体が動かなかった。
やっと体が動くようになった時、ゾムさんは床に倒れ込んでいた。
em「ゾムさん!」
zm「…え…み…さん…」
em「ゾムさん…!…血が」
zm「…俺…やっと…死ねるん…かなぁ」
em「…ぇ?」
なんで?
死ねる?
ゾムさんは…
死にたかったのか?
なんで…
zm「…」
em「なんで…ですか?」
zm「…嫌…やから…俺が…嫌いやから」
zm「エミさんと…会いたく…なかった…」
em「ぇ?なん…で…?」
zm「こんな俺を…見せたくなかった…」
zm「もし…会うなら…もっと…違う…違う…」
zm「違う場所で…会いたかった…」
em「…そぅ…か」
zm「…ねぇ、エミ…さ…ん…」
em「喋らなくて大丈夫ですから…」
zm「言わ…なきゃ」
zm「何か…叶えたい…願いは…ある?」
em「え?」
em「ねが…い…?」
zm「う…ん…」
em「私は…もっと、…ゾムさんと過ごしたかった…。」
em「もっと、…ゾムさんと話したかった…」
zm「ほん…とうに…そんなんで…ええん…?」
em「…そんなんじゃない。少なくとも私には…とても楽しい時間やった…」
zm「…うれしい…こと。いってくれんなぁ。」
ゾムさんの体は微かに白い光に包まれた。
どういうこと?
いや、
em「それより、もう喋らないほうがいいですよ」
こういう時、どうしたらいい?
こんなこと、人生で一回もなかった。
目の前で人が刺されたことなんて。
まずは止血?
それとも動かさないほうがいいのか?
zm「…おれは…しぬんだよ…」
zm「たすかんない…から」
em「…そんなことッ…言われたって…受け入れられる訳ないじゃないですか…!」
zm「…」
em「ゾム…さん…」
zm「ね………ぇ…」
zm「え…み…さ…ん…」
em「…はい…」
zm「あ……り……が……と……」
zm side
俺は、ほんまにエミさんに会えてよかったと思う。
エミさんに会わんかったらもっと早く死んどったやろうし。
ほんまにありがとう
だから…
zm「いきてよ」
……
em side
……
ッ…なんで?
ぞむさんしんだらおれがおれがいきるいみないよ
なのにいきてなんてふざけとる
ねぇ
ねぇ
へんじしてよ
おれは
どうしたらいい?
「カツカツ」
だれかのあるくおとがする
また
またあいつらか?
ならぞむさんが
またさされる
こんどは
おれが
まもらな
ut side
…こんな簡単に入れていいもんなんやろか
sho「さすがに…セキュリティー甘すぎん?」
rb「…いや、まじでそれな」
ut「しかも…静かやし」
怖いし⁉︎()
sho「ゾムー?」
rb「おるかー⁉︎」
ut「…」
手当たり次第扉開けてみたけど誰も居らへんし
ut「そもそもこんなとこに人なんか住んでんの?」
sho「でも…ゾムが言うには此処らしいけど」
rb「スゥゥ……」
あかんて、此奴が叫んだら耳終わる…
rb「ぞ!!!!…」
…ナイスシャオロン
そのロボロの口押さえてる手無かったら俺ら死んでた。
真面目に。
sho「耳潰れるから。やめろて笑」
rb「じゃあどーやって探せって言うねん…」
sho「扉開けてくしか無いやろ?」
ut「でも…扉どんだけあると思うんよ」
ut「ただでさえ一階だけでもこんなに広いのにさ」
sho「…んー…まぁ…そこは…気合いで行けるでしょ」
ut「脳筋…」
ほんま…ゾムどこやねん
そう思いながらドアを開けた。
「キャーー!!!」
「あんた誰よ!!」
ut「ぁ…ぇ…すんません!!」
はぁ。
そっか。
ゾム以外にも居るんだった。
sho「まぁ、大丈夫やろ!」
rb「そういう事あるって覚えとけよ」
rb「開ける前に物音がするか確認しろよ」
ut「…泥棒やん俺等」
rb「よし、この部屋で2階最後や」
sho「あと何階や…」
ut「まぁいつか終わるんだから」
ut「物音はしーひんけど」
sho「開けちゃえよ。人おったら謝ったらええし」
ガチャ
と音を立てて扉が開いた。
『…ぇ』
辺り一面血だらけで、
俗に言う「地獄絵図」が広がっていた。
『ぞ…む…』
と。
em「だ…れ…です…か…?」
1人の男性が居た。
扉を開けたら、目の前に殺気じみた目で俺等を睨んでいた。
rb「どういう…」
sho「…」
ut「…なッ…え…」
言葉にならなかった。
…違う。
驚いてる場合じゃない。
ut「止血…は…?」
em「し…ました…。けど…もう…いきしてない…です」
血まみれのゾムを見ても脳が理解を拒んでいた。
死んだ?
彼奴が?
あんなに人並外れて元気な奴が?
しんだ?
rb「なんで…?」
em「刺されたんですよ…」
ut「誰に?」
em「分かりません…知らない人です」
sho「救急車…呼んだ?」
em「呼びました…でも…」
em「30分経った今も、来る気配…」
em「ないんです」
ut「俺、誰か呼んでくる」
ut「この城の外やったら誰かおるやろうし」
em「無理ですよ」
em「誰も近寄ろうとしないし。この城に」
rb「じゃあ、どうしたらええん?」
sho「せやったら、他の能力者の人に助けてもらったらええんちゃうん?」
em「…ほか?」
ut「あー、来る時に会った人らね」
em「この城には他の能力者の方もいるんですか?」
rb「せやで。知らんかったん?」
em「…はい」
sho「まじ?」
ut「…俺呼んでくる」
em「ありがとうございます」
em「…」
数ヶ月後
em side
あの日から色々ありすぎて何の感情も湧いて来なかった。
泣きたくても泣けなかった。
ゾムさんが居た時とは比べ物にならないぐらい退屈な日々だった。
ある日、ゾムさんの友達のシャオロンさん、鬱さん、ロボロさんと私で話す機会を作ろう、と言う話になった。
その当日。
sho「よし、これで全員やな」
場所は近くの喫茶店になった。
ut「そもそも、なんであの城は簡単に入る れたん?」
em「私は、国王の許可証をかざすと、この城の門が開くって説明されたんですけど、本当はそうじゃなかったんですね」
rb「だって、普通に門押したら開いたもんな…」
sho「いや、でも考えたら当たり前じゃね?」
sho「国王は能力者のこと人間として扱ってないんだからセキュリティーなんて付ける訳…」
rb「ないよな」
em「そうですよね…」
rb「あとさ、俺等エミさんに聞きたかったんやけど、」
em「…はい」
rb「死にたいって思ってる?」
em「…」
em「…思いましたよ。何回も何回も。けど、ゾムさんに生きてよって言われたら…生きるしかないじゃないですか」
ut「…そう…よな。」
ut「死にたいって思わん訳がないよな」
sho「…俺らもそうやったし」
rb「ここに来てくれるかもわからんかったけど…ありがとう。来てくれて」
em「いえ…こちらこそありがとうございます」
rb「あと、エミさん。ゾムの能力って知ってる?」
em「能力…ですか…」
sho「ロボロを助けてくれたゾムの能力。俺等知らないんだ。」
sho「なんか、ゾムから白い光が出て、すごい音が鳴ったのは覚えてるんだけど…」
em「ゾムさんの能力は…」
em「何でも願いを叶えられる、という能力です」
ut「何でもって…最強やんけ」
em「でも、ゾムさんにとって大切な人にしか使えないらしくて…」
sho「そう…なんや…」
rb「俺等のこと…大切って思ってくれてたんやな」
rb「彼奴らしくないけど…嬉しい…な」
ut「せやな」
sho「……」
rb「どしたんシャオロン笑。泣いとんのか?」
sho「…ないて…ないし…」
ut「強がらんでもええねんで??」
sho「おれはないてない!」
rb「どう見ても泣いてるから」
sho「…もうきらい」
rb「…ww。ごめんて」
em「…笑」
楽しいなぁ。
この人らは周りを笑顔にできる、能力者かもな笑
時間はあっという間に過ぎた。
また会おうって言って3人と別れた。
俺の家は実家。
ゾムさんの側仕えになる時に前住んでた家は売っちゃったし、住むとこ無いから住ましてもらってる。
母「おかえり」
em「ただいま」
母「どうだった?話せた?」
em「うん…。楽しかったよ」
em「でも、俺だけ楽しんでええんかな」
em「ゾムさんに申し訳ない」
そこまで言って気づいた。
母さんも前街中で会った時、側仕えをやめて他の仕事にしたほうが良いって言ってたよな…。
母「そうやって生きてちゃダメだよ」
em「え?」
母「ゾムさんは、エーミールに生きて欲しいって言ってくれたんでしょ。貴方がこの現実を受け入れないでどうするのよ」
em「…そうやんな…!」
em「でも母さん、能力者のこと…嫌いじゃなかったっけ…」
母「嫌いじゃ無いよ。だって…私も能力者だもん」
em「…え?母さんが?」
母「うん。でも、何の能力が使えるのか私も知らない。試した事ないし。でも、左腕に黒い紋様があるから。」
em「…まじ…?」
母「まじ…笑。この事を話したの、あんたが最初だ」
em「…言えばよかったのに」
母「無理だよ。誰も信じられんかったし。言ったら殺されるのは目に見えてるから」
em「母さん…」
能力者…やったんや。
意外と身近にいるもんなんやな。
ゾムさんもそんなに辛かったんやろうか。
俺だけ楽しんで良いんやろかって思うけど、俺がゾムさんの分まで生きなあかんよな。
ゾムさんが、母さんが辛かった分も楽しみに変えな。
ゾムさん。
また、会えるかな…?
俺らは何でもない平凡な会社で働いているサラリーマンだ。
やけど、俺らの会社には平凡じゃない奴が1人いる。
なんでも、元殺し屋だとか騒がれている。
まぁ、噂なんやけど。
その噂のせいか、彼の上司、後輩、同期は一切彼と喋りたがらなかった。
そんな噂されてる彼と俺らは会ったことがなかった。
毎日同じ会社にいるのに、声も、顔も見たことない。
その事に違和感は感じたけど、所詮他人やし、そんなに気にかけんかった。
ある日の午後、3人で弁当を食べようと場所を探していると、1人で弁当を食べている人がいた。
初めて会ったのに、どこか懐かしかった。
不思議に思いながらも、彼の名前は何だったっけな、と考えた。
同期が言っていた、あの名前。
そうだ…、
『____…?』
俺らの声に彼は反応した。
箸を止めて顔を上げ、俺らを見た。
「ありがとう…な…」
と、呟いた彼の涙に滲んだ目には、確かに俺ら3人が映り込んでいた。
完結しました!
これまで見てくださった皆様、本当にありがとうございます!
是非是非、皆様の感想をお聞かせください!
最後に、これが今年最後の投稿になると思います。
皆様、良いお年をお迎えください。
コメント
4件
完結おめでとうございますっ!! さよきさんの書く四流の尊さ半端ないですね…! () 良いお年をー!!
良いお年を〜!! いやぁ〜、完結おめです!! 神作すぎて...グスングスン。