治侑短編集

「ツム」

優しい声色で名を呼ばれる。

「ん」

そっと広げられた腕に、ゆっくりと近づく。そして、ぎゅうっとめいっぱい抱きつく。

俺と治は1年ほど前からお付き合いを始めた。いつからだったか忘れたが、家を出る前、家に帰ったあと、そして寝る前は必ずハグをするのだ。

「ふふっ…」

治とぎゅーってすると、凄く安心するし、落ち着く。嫌なことがあった日や、機嫌が悪い日でも、治とハグをすれば、一瞬で忘れてしまう。

そんな治とのハグが、俺は大好きや。

「侑」

「ん？」

「俺から離れんでな」

最近ハグする時に治がよく言う言葉。

「離れるわけないやん」

俺の方が、離れられなくなっているから。俺はすでに治に依存してしまっている。

「治は俺とのハグ好き？」

「好き。大好きや」

俺のことを離さんとばかりにぎゅうぎゅうと抱きついてくる。

滅多に感情を出さない治だが、俺とこうしてハグをして、 “大好き” という感情が溢れてしまっている。

俺だけが引き出せる感情。

ええなあ、これ。

やっぱり、俺も治とのハグが大好きや。

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【Amor（アモール）】

⤿ポルトガル語で、『人を包むような愛』という意味。