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昼下がり。穏やかな空気の中で、ふとした一言が火種になった。
「ねえ……Dyleって、弱点とかないの?」
Dandyの問いかけに、場の視線が一斉にDyleへ注がれる。
「弱点……ですか。思いつきませんね」
Dyleは紅茶を口に含みながら、いつも通りの無表情で答えた。
「そういえば、僕も見たことないかも」Astroが呟く。
「私も!」Shellyが勢いよくうなずく。「いつも落ち着いてて、びくともしないんだもん!」
「ワタシも。まるで鉄壁みたい。」Veeは冷ややかに肩をすくめる。
「じゃあ!」Dandyが笑顔で手を打った。「みんなで探してみよう!Dyleの弱点!」
「ほら、これなんてどう?」
Dandyはポケットからゴム製の偽物の虫を取り出し、Dyleの肩に投げた。
ペタリ。
だが、Dyleは無表情のままそれを指でつまみ、淡々とDandyに投げ返す。
「……落ちていますよ。お気をつけて」
「効かないかー!」Dandyは肩を落とした。
「私に任せて!」
Shellyは廊下の角に隠れ、足音を忍ばせて近づいてくるDyleを待ち伏せした。
だが、次の瞬間。
「わっ!」とShellyが飛び出すより先に、背後から声がした。
「わっ」
「きゃあっ!」振り向くと、そこにはいつの間にか回り込んでいたDyleの姿。
「……先に仕掛けるのも面白いかと」
Shellyは完全に返り討ちにあい、膝から崩れ落ちた。
いくつもの作戦が空振りに終わり、皆は机に突っ伏した。
「ほんとに……弱点ないのかもね」Shellyが嘆息する。
「鉄壁すぎる……」Astroも同調。
その時だった。
椅子に腰掛けたDyleの膝に、Pebbleが飛び乗った。
「ワン!」
Dyleは一瞬キョトンとした顔になる。
Pebbleはちょこんと収まると、短い手足を元気よくバタバタと動かし始める。
「……っ」
すると、珍しくDyleの口元がわずかに揺らいだ。
「おや……?」Astroが目を細める。
「今……ちょっと顔変わらなかった?」Shellyが気付く。
「もしや……」Veeの画面がピカッと光る。
「もしかして……くすぐりに弱い!?」
Dandyが声を上げるや否や、すぐさま行動に移った。
その瞬間、Dandyは迷わずDyleの脇腹に両手を伸ばした。
「ちょ、待っ……!?」
最初の一突きで、Dyleの肩がびくりと跳ねる。
「ふっ……ふふ……っ、や、やめ……」
普段の落ち着きが崩れ、抑えきれない笑いが漏れた。
「やっぱり!大正解だ!」
Dandyは得意げに、さらに指先を素早く動かす。
「ふふっ……あはは……っ!あっ……あはははは!」
ついにDyleは声を上げて笑い出した。紅茶を飲んでいた時の静けさは跡形もない。
「Dyleが笑ってるー!」Shellyが両手を叩く。
「証拠、証拠!」Veeがマイクを構える。
「や、やめてください……!くっ……ふふふ……っ、あはははっ!」
Dyleは必死に身をよじるが、Dandyは執拗に攻め続ける。
「おっと逃がさないぞ~!弱点は突かれるものなんだ!」
「だ、だめ……っ!もう、無理……っ!あははは……っ!」
背を仰け反らせ、必死にDandyの手を掴もうとするが間に合わない。
その勢いで――ガタリッ!
椅子ごと後ろに倒れ、DyleとDandyが床に転がった。
床に転がってもDandyは離れず、今度はわき腹から首筋へと指を這わせる。
「ほらほら、ここも弱いんじゃないの?」
「あ、あははは!や、やめ……っ!ほんとうにっ……!」
Dyleは涙目になりながら床を転げ回る。
普段の彼を知る仲間たちには、それはあまりにも新鮮な光景だった。
Dandyの指先が今度は脇腹から腰、足元へと滑り込む。
「や、やめ……っ!あははははっ!っ!ふふふ……っ!」
Dyleの長い脚がじたばたと床を蹴る。
普段の静けさが信じられないほど、彼は必死に身をよじっていた。
「もう降参って言えばいいのに……」Astroが苦笑する。
「ふふ……これは名場面だな」Veeの声も珍しく弾んでいた。
「降参……っ!降参しますから……っ!あはははっ!」
Dyleがついに根を上げると、Dandyはようやく手を止めた。
最終的に、こちょこちょ攻防戦はDyleの惨敗に終わった。
床に横たわり、肩で息をしながら彼は言った。
「……はぁ……皆さん……最低です」
皆は笑い転げながら、今日一番の収穫を確信していた。
『Dyleはこちょこちょに弱いんだ…!』