その日、放課後の帰り道。駅前のカフェで買ったアイスコーヒーを片手に、スマホをなんとなくいじっていた時だった。
ニュース速報の通知が、突然表示された。
『速報:三門市内の高校生死亡 自i殺か』
(物騒だな……)
そう思って、何気なく記事を開いた。
でも、目に飛び込んできた一行に、全身が凍りついた。
「三門市内に住む女子高校生・ミョウジナマエさん(16)が、自宅で死亡しているのが発見されました」
……嘘だろ?
手からスマホが滑り落ちる。
冷たいアイスコーヒーのカップが、アスファルトに転がって中身を零した。
その時にはもう、走り出していた。
脳内は真っ白で、息が乱れて、何も考えられなかった。
(嘘だろ? 嘘だよな? なんで……?)
ようやく着いた住宅街の一角。
ナマエの家の前には―
赤と青のライトを点滅させた数台のパトカー、
黄色と黒の「立入禁止」のテープ、警察官が数人、家の周りを囲んでいた。
人だかりもできている。
近所の人だろうか、みんな不安げに小声で話している。
そのど真ん中。
“いつも笑っていたあの家”が、まるで犯罪現場のように見えた。
「……っ」
喉が詰まって、言葉が出ない。足が前に進まない。
さっきまで、ほんの数日前まで、笑ってた子が。
もう、どこにもいないのかもしれない。
現実が、じわじわと胸に、喉に、押し寄せてきた。
「……ナマエ」
かすれる声が、自分でも聞き取れなかった。
――どうして。
――なんで俺、もっと早く……。
止められたはずの後悔が、胸の奥で音を立てて、崩れ始めていた。
ーー
書いてて泣きました。