テラーノベル
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第12話 双子座――ニュー・ゲミノールム
パチパチという焚き火の音だけが、静かに響いていた。
夜空には、無数の星。
俺は、少し離れたところで横たわるえとちゃんを、じっと見つめていた。
「……大丈夫かな。」
「大丈夫ビ。ただ眠ってるだけビ。」
デビが、俺の隣にちょこんと座って言う。
「みんな、傷は……。」
「平気平気。」
うりくんが、包帯を巻かれた腕を軽く振ってみせる。
「私も、大したことないよ、。」
のあちゃんも、そう言うけど、声にはまだ疲労が残っていた。
「じゃぱぱは……。」
俺は、少し離れたところに座るじゃぱぱを見た。
血は止まっているようだが、明らかに傷が多い。
それに、いつもみたいに軽口を叩く様子がない。
ただ黙って、焚き火を見つめていた。
「……。」
俺は、何も言えなかった。
みんなの傷を見るたびに、胸の奥がずきりと痛む。
――俺のせいや。
プルートが、俺を狙わなければ。
じゃぱぱは、あんなに無理をしなかった。
のあちゃんも、うりくんも。
えとちゃんだって――
「……ん……。」
小さな声がした。
「えとちゃん!」
俺は、慌てて駆け寄る。
えとちゃんが、ゆっくりと目を開けた。
「……ここ、は……。」
「よかった……目、覚めたんやな。」
俺は、思わず安堵の息をついた。
「私……。」
えとちゃんが、身体を起こそうとして、顔をしかめる。
「無理せんとって。」
「……みんな……無事……?」
その第一声が、それだった。
「うん、大丈夫。えとちゃんのおかげで。」
「……そう……。」
えとちゃんの目に、みるみる涙が浮かんでいく。
「……ごめん……。」
「え?」
「私が、取り乱したせいで……みんなを、危険な目に……。」
「そんなこと――」
俺は、首を振りかけて、止まった。
――違う。
これは、ちゃんと俺が言うべきことだ。
ちゃんと、言わなきゃ。
「……ちゃう。」
「……たっつん?」
「悪いのは、俺や。」
俺は、拳を握りしめた。
「悪いのは俺や。俺が、足手まといやったから。じゃぱぱも、のあちゃんも、うりくんも――みんな、俺を守ろうとして、あんな怪我……。」
言葉にすると、余計に苦しかった。
じゃぱぱも、のあちゃんも、うりくんもどこか複雑そうな表情で俺を見ている。
「……。」
えとちゃんが、じっと俺を見つめる。
「……バカ。」
「え?」
「それを言うなら、私の方こそバカでしょ。」
えとちゃんが、力なく笑った。
「昔のトラウマに囚われて、足を止めて。みんなを危険に晒したのは、私も同じ。」
「え?でも……。」
「……ねぇ、たっつん。」
えとちゃんが、静かに切り出した。
「……聞いてくれる?私の、話。」
俺は、黙って頷いた。
いつの間にか、じゃぱぱも、のあちゃんも、うりくんも、こちらへ集まってきていた。
「……私には、昔。」
えとちゃんが、ゆっくりと語り始めた。
「『ゲミノールム』っていう、幼馴染がいたの。」
その名前を口にする瞬間、少しだけ声が震えた。
きっと、えとちゃんが呟いてた、『ミノル』って子だ。
「ウィザード(魔法使い)で…私とは全然違うタイプだったんだけどね。私は戦うことしか能がなかったけど、あいつは、頭がよくて、優しくて。」
えとちゃんが、ふっと笑う。
「それに、変な癖があってね。何にでも『綺麗だね』って言うの。花にも、空の星にも、私の武器にすら。」
「……。」
「だから――」
えとちゃんの視線が、俺に向いた。
「初めて会った時。たっつんが、私のネックレス見て『綺麗だね』って言った時――」
その声が、少し詰まる。
「一瞬、ミノルの声かと思った。」
俺は、思わず息を呑んだ。
――そうやったんか。
あの時の、驚いたような反応。
あれは、こういう意味やったんか。
「ミノルがこのネックレスをくれたときも、同じように『綺麗だね』って言ってくれたの。」
えとちゃんがふぅ、と短く息を吐く。
「……ある日。」
「プルートに、襲われたの。」
その名前を出す瞬間、彼女の手が、無意識に震えた。
「あいつは、私を消そうとした。きっと、私がヴァルキリーだから、私が強くなる前に消そうとした。そのころは私も弱かったから、私一人じゃ、絶対に敵わなかった。」
「……。」
「でもね、そこにミノルが来た。たまたま、通りかかっただけだったのに。」
えとちゃんの声が、少しずつ掠れていく。
「ミノルは、私を庇って戦った。プルートに、何度も何度も、押されながら。それでも、私を守ろうとした。」
「……。」
「でも、やっぱり敵わなくって。」
「最後に……ミノルは、太陽の魔法『スーパーノヴァ』を、使った。しかも、2回連続で。」
その言葉に、俺は思わず息を止めた。
――太陽の魔法。
えとちゃんが使った、あの技と、同じ。
「あの魔法はね、代償が大きいの。1回でも、身体に相当な負担がかかる。それを、2回も。」
えとちゃんの目から、涙がこぼれ落ちる。
「……ミノルは、その場で……跡形もなく、消えた。あの魔法に身体が耐えられなかったから。」
「……。」
「それから私は二度と同じ悲劇を繰り返さないよう、毎日必死に強くなる努力をした。」
そうか、だからあんなに完璧だったんだ。
「私、ずっと思ってた。ミノルは、プルートを道連れにして死んだんだって。だから、ミノルの死には、意味があったんだって。それだけが、唯一の救いだった。」
えとちゃんが、拳を握りしめる。
「……でも、違った。」
「……プルートは、生きてた。」
その一言に、みんなが息を呑んだ。
「なんで生きてたのかは知らないけど。おそらく、下等悪魔かなんかを身代わりにしたんだと思う。」
えとちゃんの声が、怒りと悲しみでぐちゃぐちゃに震えていた。
下等悪魔――多分じゃぱぱが出したデビと同じようなやつだ。
「ミノルの想いは……あいつには、届いてなかった。」
「……えとちゃん。」
「だから、今度は。」
えとちゃんが、顔を上げる。
その目は、もう泣いていなかった。
「今度こそ、ちゃんと届かせたかった。ミノルの想いを、無駄にしないために。」
「……。」
「――だから。」
えとちゃんが、俺の方を向く。
「たっつんが謝る必要なんて、どこにもないの。私が、勝手に立ち向かっただけ。」
「……えとちゃん……。」
「それに――」
えとちゃんが、少しだけ、いつもの調子を取り戻すように、ヒマワリのように笑った。
「たっつんが謝ってばっかりだと、逆に困る。」
「……。」
「たっつんは、何もできないわけじゃないよ。」
えとちゃんが、俺の目をまっすぐ見た。
「私が立ち上がれたのは、たっつんが心配して、隣にいてくれたから。それも、立派に助けてくれたってことだよ。」
「……。」
俺は、何も言えなかった。
ただ、胸の奥が、じんわりと熱くなるのを感じていた。
「……ありがとう。」
「のあちゃんも、うりも、……じゃぱぱも。」
えとちゃんが、みんなを見渡す。
「巻き込んで、ごめん。それと――ありがとう。」
「水臭いなー。」
うりくんが、笑いながら言う。
「仲間じゃん、私たち。」
のあちゃんも、小さく笑った。
「……。」
じゃぱぱだけが、少し複雑な表情をしていた。
「……じゃぱぱ?」
俺が声をかけると、じゃぱぱは、ふっと目を逸らした。
「……俺も、同じデーモンなんだよな、って。」
「え?」
「プルートと、俺。同じ種族。」
じゃぱぱの声が、いつもより低い。
「……。」
「……。」
「――バカ。」
えとちゃんが、じゃぱぱの言葉を遮った。
「あんたと、プルートは違うじゃん。」
「……。」
「あんたは、たっつんのために、命懸けで戦った。プルートは、誰かのために戦ったことなんて、一度もない。それだけで、もう全然違う。」
「……えとちゃん。」
「それに――」
えとちゃんが、少しだけ、意地悪そうに笑う。
「あんたみたいなお人好しのデーモン、初めて見たし。」
「お、お人好しって……。」
じゃぱぱが、微妙な顔をする。
その様子に、みんなが、思わず笑った。
――少しだけ。
空気が、軽くなった気がした。
「……ありがとう、えとちゃん。」
じゃぱぱが、小さく呟いた。
「あ、もちろんまだ嫌いだけどね。」
えとちゃんは、そっぽを向きながらも、その口元は、少しだけ緩んでいた。
「え?」
「いやいや、そもそもヴァルキリーは光属性、デーモンは闇属性。真反対なの。わかる?」
「えぇ。俺は好きなんだけどな。」
「…は?」
「属性とか関係なくない?」
「いやある。」
えとちゃんが即答した。
夜空の下。
焚き火を囲んで、俺たちは、少しの間、黙って星を見上げていた。
人間界とは少し違う、紫色の空に浮かぶカラフルな星たち。
でも、何故だろう。
人間界で一人、星空を見上げた時よりずっと綺麗に見えた。
――みんな、それぞれの傷を抱えている。
俺だけじゃない。
誰もが、何かを背負って、それでも前を向いて歩き続けている。
その事実が、少しだけ、俺の心を軽くしてくれた気がした。
空を見上げているみんなの横顔が月と星に照らされていた。
やっぱり、とても綺麗だった。
「……あ。」
えとちゃんが、ふと星空を見上げたまま呟いた。
空を指差す。
「流れ星。」
俺たちは、思わずその方向を見た。
一筋の光が、夜空を横切っていく。
「……綺麗だね。」
俺は、思わず呟いた。
「……うん。」
えとちゃんが、小さく頷いた。
その目には、もう涙はなかった。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
今回はえとちゃんの過去編ということで!
今回のお話は本家様の4周年記念映画「2人の魔法使い」に登場したものをモチーフにしています。
モチーフにさせていただいたものは
・ヒマワリ ・ゲミノールム(ミノル) ・デビ ・プルート ・太陽の魔法「スーパーノヴァ」
です
ミノルとえとちゃんの過去や「綺麗だね。」などの言葉などはオリジナルです。(本家様も言ってましたらすいません!)
キャラクター紹介
えと
――――――――――――――――――――――――――――
種族:
戦乙女(ヴァルキリー)
属性:
光
性別:
女
年齢:
??
性格:
サバサバ、楽観的、ノリがいい
能力:
1、光で剣を作る
2、光を纏う
3、光の翼を作り飛ぶ
4、光の斬撃を飛ばす
5、光の雨を降らせる
6、太陽の魔法『スーパーノヴァ』
見た目:
オレンジ色で手首に剣を模したタトゥー
服装:
金色の刺繍が入った白色のノースリーブのワンピース、腕と脚には金属の鎧、白色の金色の装飾が入ったロングブーツ、羽のような形の髪飾り、金色のヒマワリのネックレス、金色のピアス
(プルート= 種族:デーモン(悪魔))
(ゲミノールム=種族:ウィザード(魔法使い))
(デビ=種族:デーモン(使い魔))
――――――――――――――――――――――――――――
次回予告
「……これは、まずいね。」
「これ、ゾーマの実!」
「よかった!」
「……じゃあ絶対だめです。」
「はい!天才なんで!」
その、向こう側。
次回 第13話 聖なる泉 ♡100↑
コメント
2件
読んでくださりありがとうございます! ちなみに、ミノルの名前の由来である、双子座の「ニュー・ゲミノールム」は6月28日の誕生星だそうで。 4周年記念の映画が公開されたのも、カラフルピーチ様の結成日も6月28日です。 プルートの名前の由来は「冥王星」、デビの名前の由来は「デビル」だそうです!
第12話読み終えたわ……えとちゃんの過去、重かったね。幼馴染のミノルが「綺麗だね」って言うクセがあったってエピソード、それでたっつんが最初にネックレスを褒めた時の反応に繋がる伏線が美しすぎる。自分を責めるたっつんに「謝る必要なんてない」って笑顔で返すえとちゃん、本当に強いし優しい。焚き火を囲んでみんなで星を見上げるラスト、じんわり来た。次回も楽しみにしてる🔥
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マモショー
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しのん
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