テラーノベル
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花斗はご飯のあともブロックを取り出し、先ほどと同じように街を組み立てた。
「ひこうき、ブーン!」
ブロックの間を器用にぴょんぴょん跳び跳ねながら、大空を飛んでいるらしい飛行機を操縦する。
「このひこうきはー、がいこくにいきまーす」
私は、外国ってどこだよ! と心の中でツッコミを入れつつ、楽しそうな花斗を眺めながら皿洗いをしていた。
この遊びにも、どうやら私は入れてもらえないらしい。
壱月は食後、「皿洗いは置いといて」と言ってくれたが、手持ち無沙汰になってしまうのもなんとなく落ち着かなくて、私はキッチンに立った。
不思議な気分だ。
この前までは、あんなに花斗を取られるのが嫌だったのに、今はそんなことなんでもなかったことのように思える。
彼が父親だということを、まだ認めた訳じゃない。
けれど、こうやって距離が縮んでいくのは、なんとなく〝恋人〟として、嬉しいことのような気がした。
「いつきはいつも、ひこうきでどこにいくの?」
「色々なところに行くよ」
花斗の問いに、壱月が答える。
「がいこくも、いく?」
「ああ。前に言ったろう。このブロックも飛行機も、買ったのアメリカだ」
すると花斗はしばらくきょとんとしてから、口を開く。
「あめりかって、がいこくなの?」
「……外国だな」
こんな何気ない会話に笑みをこぼしてしまうくらいには、今の私は彼のことを認めているらしい。
あの日々はなんだったのだろうと、私はひとり苦笑いをこぼした。
「またがいこく、いく?」
花斗が壱月を見つめて聞く。
「ああ。しばらく国内線が続いていたけれど、次は明後日だな」
「じゃあ、またかえってこないの?」
花斗の声のトーンが下がる。花斗は壱月の前で、しょんぼりと肩を落としていた。
ちょうど洗い物が終わった私は、エプロンを外しリビングへ移動した。
しゅんとしたままの花斗の頭をポンポン撫でる。
「パイロットさんはいろんなところに飛行機を飛ばして、たくさんの人を運ばなくちゃいけないの。世界中の人がいろいろなところに行けるのは、パイロットさんのお陰なんだよ?」
私の声に花斗は顔を上げたが、唇を尖らせている。
「でも……」
花斗はそこまで言うと、チラッと壱月を見る。けれども、視線はすぐに下に戻ってしまった。
そんな花斗に、私は続けて口を開く。
「壱月が乗せた飛行機のお客さんは、世界中の素敵なものを見て、帰ってくるの。たくさんの夢を運ぶんだよ。それって、すごく素敵じゃない?」
すると、花斗は今度はこちらをじっと見つめた。
「花斗もいつかパイロットになったら、ママを乗せて、空を飛んでほしいなぁ」
すると花斗は、今度はにこっと口元を綻ばせ、ぎゅっと抱きついてきた。
「うん、ママもいつきも、のせてあげる!」
私は花斗をぎゅっと抱き締め返す。
花斗の後ろにいた壱月は、私と目が合うと複雑な笑顔を浮かべた。
コメント
1件
うわ、この回めちゃくちゃ沁みたわ……。花斗が「また帰ってこないの?」って不安そうに言うところ、グッときた。ママが「パイロットは夢を運ぶんだよ」って優しくフォローするのも、壱月への気持ちが変わってきてるのが伝わってきてじんわりした。距離が縮まってる感じ、すごくあったかい。最終回じゃなくて続きめっちゃ気になるよ!
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