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「魔眼…ですか」
魔眼っていうのはあれだよな、特殊な能力が宿っている目のことだよな。
それと宗教団体と何が関係あるんだろうか。
「それって邪神教と何が関係あるんですか?」
「…お嬢様の持っている魔眼はあらゆるものの本質を見抜くことが出来る『真性の魔眼』と呼ばれています。しかし誰が言い出したのは定かではありませんが、一部の人たちが『悪魔の目』であると言い始めたのです。そのせいで他の貴族たちはお嬢様がまるで悪魔かのように見えるのか忌み子として扱い始めたのです」
「そのことに激怒したロードウィズダム公爵様が密偵を使ってその蔑称を広めた不届き者を探し出そうとされたそうなのですが、一切出所が分からなかったそうなのです。しかしその調査の過程でこの邪神教という存在が関わっている可能性があるかもしれないという情報があったそうなのです。結果的にお嬢様の目の件と邪神教が本当に関係があるのかどうか全く確証はありませんが、今回の件でやはり関係があるのではないかと…」
それで邪神教がその悪魔の目、いや真性の魔眼を狙っていると判断したわけか。
そうなると今回の件は用意周到に計画された誘拐だということになる。
もしかしたら今敵陣に向かっているのは罠かもしれない。
そうなるとより一層警戒していかないといけないな。
「着きました、ここです」
俺たちは地図化スキルを使って黒ローブの男が向かったと思われる場所へと辿り着いた。そこは森の中にひっそりと残っていた教会らしきボロボロの廃墟だった。ここから反応があるのだが、こんなところに一体何があるのだろうか。
「ここにお嬢様が…」
俺たちは気配を消して廃れた教会跡の中へと侵入する。
しかし中にはボロボロの聖堂が広がっているだけで特に怪しいものは何もなかった。
「ユウト様、本当にここにお嬢様がいるのですか?」
「ええ、確かに反応はあります。ただ…」
俺はもっとしっかりとスキルを駆使して黒ローブの男やお嬢様の反応を探る。
すると俺はあることに気づいた。
「これは…マリアさん、地下です!この建物には地下があります!」
俺はマリアさんに近づいて小声でこのことを伝える。そして俺たちは視線で合図を送るとそれぞれ聖堂から地下へと続く道がないかを隅から隅まで探し回った。
「ユウト様!」
しばらくしてマリアさんが聖堂の脇にあった小さな部屋から出てきて俺を手招きした。その部屋へとやってくると古びた本棚の下に地下へと続いているであろう隠し通路の入り口があった。こんなところ良く見つけたなとマリアさんの観察力に感心する。
「では、準備はいいですか」
「ええ、もちろんです。早くお嬢様を救出しなければ」
マリアさんはそう意気込むと息を殺して地下通路へと進んでいく。
俺もそのあとを静かについていく。
見た感じこの先は一本道っぽいので迷うことはないだろうが、隠れる場所がないという点においては非常に危険である。見つかってしまえば即戦闘となるだろう。
俺たちは地下へと続く階段を下り、通路の曲がり角から先をバレないように確認する。すると先にはレンガ造りの部屋があり、そこには黒いローブを身にまとった人たちが数人視認できた。
「ユウト様、お嬢様はどの辺りですか?」
「おそらくこの少し先ですね。あの人たちさえ突破すればすぐに救出できると思います」
「そうですか。しかし、あの人たちは避けて通れなさそうですね。それに気づかれて増援が来る可能性もありますし…」
確かにこのような地下では避けたり、隠れたりできるような場所がない。しかしこのままあの人たちと戦闘になるのも得策ではない。反応を見た感じだとおそらくあの黒ローブたちは一人一人がそこそこの強さを持っているので、簡単には通してくれないだろう。
と、なると安全に確実に救出する方法はあれしかないが…
マリアさんが納得してくれるかどうか。
「マリアさん、一つだけ僕に案があります」
「…それは確実にお嬢様を救出できますか?」
「はい、上手くいけば救出出来ると思います。ただマリアさんが納得してくださるかどうか…」
俺は端的に作戦の内容をマリアさんへと伝える。
その内容を聞いたマリアさんは怪訝な表情でこちらを見つめる。
「精霊…ですか」
すごい怪しそうな目でこちらをじっと見ている。
そりゃそうだ。
突然、僕には精霊がいます!その力を借りて透明化してお嬢様を助けに行くから囮よろしく!!なんて言われたら怪しむだろう。まあ実際はこんな軽い感じで言っていないけれども。
「今は正直、精霊の件は信じてもらわなくて結構です。ただ僕が透明化してお嬢様がいるところまで行くのでマリアさんにはその間、黒ローブの奴らを引き付けて欲しい。ただそれだけです。それが今思いつく確実にお嬢様を救出できる作戦です。お願いできますか?」
俺は真剣な表情でマリアさんに説明をする。
俺の真剣さが伝わったのかマリアさんは真剣に何かを考え出していた。
「…分かりました。正直不安はありますが、ユウト様の作戦に乗りましょう。お嬢様を必ず無事に助け出してください。よろしくお願いします」
そう言うとマリアさんが俺に向かって頭を下げる。
さすがはメイドというべきかとても美しいお辞儀だった。
「では行きましょう」
(セラピィ、透明化をお願いできる?)
(…えっ、あ、うん!分かった!ちょっと待ってね)
俺はセラピィに念話でお願いをする。もちろんマリアさんにはセラピィの姿も声も届いていないので直接声で話しかけたら何もない空間に話しかけている不審者と思われていただろう。
そしてセラピィの方はと言うと、先ほどまで全く喋っていなかった突然話しかけられてびっくりしていた。やっぱりまだ俺以外の人がいるところではとても大人しいようだ。
セラピィはすぐに俺に透明化の魔法をかけてくれた。
その様子を見ていたマリアさんは突然消えた俺にびっくりしていた。
「えっ、ユウト様?!」
「先ほど言った通りで透明化しただけです。ではマリアさん、作戦通りによろしくお願いします」
「りょ、了解しました」
驚きで丸くしていた目をすぐに戦闘モードに切り替えてマリアさんは敵を引き付けるために黒ローブの奴らの元へと飛び出していった。俺は気配を完全に消してマリアさん達に引き付けられた黒ローブを避けて一直線にお嬢様の反応がするところへと向かう。
「な、何だお前?!侵入者だ!!!」
「お前たち、お嬢様を返してもらうぞ!」
どうやらマリアさんが上手く敵を引き付けてくれているようだ。マリアさんにヘイトが向いているのもあって俺は何とか気づかれずに素通りすることが出来た。
どうか無事でありますように。
そう願いながら俺は慎重に、そして素早くお嬢様の反応がある場所へと向かう。
マリアさんと別れた場所から少し奥へと進んだところに牢屋のような鉄格子が付けられた部屋が何個か並んでいる場所があった。どうやらお嬢様はこの牢屋のどこかに監禁されているのだろう。
俺は静かに一つ一つの部屋を覗いて誰かいないか確認をする。
すると最初に牢屋を覗いてみると、そこには人骨らしき骨がいくつか散らばっていた。
ここで何が行われているんだ…?
ろくでもない事であることだけは間違いない。
一刻も早くお嬢様の安全を確保せねば。
そのまま奥に進んでいき、最後の牢屋へと辿り着いた。その最後の部屋を覗いてみるとそこにはピンクのドレスに身を包んだ白銀の髪をした女の子が両膝に顔をうずめて座っていた。おそらく彼女がセレスお嬢様で間違いないだろう。
俺はセラピィにお願いして透明化の魔法を解除してもらう。
「…大丈夫ですか?」
俺は小声で優しく彼女に声をかける。
するとその声に気づいたのかうずめていた顔を上げてこちらを見る。
「あ、あなたは…?」
俺はそこで初めてセレナ・ロードウィズダムの顔を見た。
その瞬間、電流がビリビリと走ったかのような衝撃が体を流れる。
か、可愛すぎる…
アニメでしか存在しないと思っていたような可愛いの権化のような存在がそこにいた。
顔だけでなく声までとても透き通った癒されるもので非の打ちどころがない。
まさに完璧な美少女であると言える。
「あ、あの…」
「あっ、すみません。私は冒険者のユウトと申します。マリアさんと共にセレス様を救出しに参りました」
「えっ、マリアが来ているのですか?!」
すると彼女は顔に笑みを浮かべて思わず立ち上がる。
思った以上の声量に俺は慌てて彼女を落ち着かせる。
「落ち着いてください。マリアさんは今、敵と交戦中です。一刻も早くセレナ様の安全を確保してここから脱出しましょう」
「あっ、すみません。でもこの牢屋からどうやって…」
「それは任せてください。少し鉄格子から離れてもらってもいいでしょうか」
彼女が鉄格子から離れたのを確認すると両手で鉄格子を掴んで力を込める。
すると次第に鉄格子の形が歪んでいき、人ひとりが出れるくらいの隙間が出来上がる。
「では、脱出しましょう」
「あ、ありがとうございます。すごいですね…」
まさか鉄格子を素手で壊すとは思っていなかったようでセレナ様は驚いた表情をしていた。
俺はそんなことは気にせずに彼女を牢屋から脱出させる。
「では行きましょうか」
「はい、お願いします」
俺たちは急いでマリアさんのいるところへと向かっていく。
すると目の前の曲がり角にチラッと光るものが見えた。
「危ない…!」
俺は咄嗟にセレナ様を抱きかかえて回避行動を取る。
その直後、先ほどまで俺たちがいた場所が黒い炎のようなもので包まれる。
「おやおや、小汚いネズミが2匹もこの神聖な場所へと迷い込んだみたいですね」
声の聞こえて方向へと視線を向けると俺たちが進もうとしていた曲がり角の先から怪しげな黒い司祭服を着た男が姿を現した。
せっかくマリアさんに敵の注意を引き付けてもらっていたのに…
敵にも察しのいい奴がいたようだ。
さてさて、これは少々面倒なことになってしまった。