「ふーん、らっだぁって言うんだ」
「そうだけど…何その顔」
「いや?なんかしっくり来るなーと思って!」
俺がニヤニヤしながらそう告げれば彼──もとい、らっだぁはじとりとこちらを睨み、そして呆れたように息を吐いた。
そんな様子を見つめていたともさんは久しぶりに会うらっだぁに喜びが隠しきれていない。それを空気で感じたらっだぁは少しづつともさんから距離を取っていた。まぁ取った所で詰められているが。
「……あ、そういやらっだぁ前俺がラタミに気に入られてるのは目のせいだって言ってたけどあれ何?」
「あー?そんなこと言っ……言ったわ。別に、黄色の目は妖精とかの類に好かれやすいってだけだよ」
「え!何それすごい!もしかして俺特別な能力とか持っちゃってる系…!?」
「いや、全然。ちょっとアイツらが好意的なだけでアイツらを使役できるとかないから普通の人間と変わらんよ」
「えー…なんだよぉ」
「まぁまぁ…嫌われてるよりいいじゃない」
「ともさんは嫌われてるっすもんね」
「ちょっとぉ!?別に嫌われてないし!」
「えっ、何で?それも目のせい?」
「んーん、ほら俺ってモンスターハンターだったでしょ?そのせいで血の匂いだったり、倒したモンスターからの呪いだったりがあるから遠巻きにされちゃうんだよね〜…」
あぁ、そういえばこの人そうだった。国内指折りのハンターで、一昔前なんて修行してくると出て行ってドラゴンの首を持って帰ってきたっけ。あの時はしにがみくんが失神しそうになっていた。
今でもともさんの背中には数え切れないほど呪いの痕が残っている。しかしそれと同じくらい祝福も授かっているのだ。その証拠に今でこそラフな格好をしているが、国に赴く際などに着る正装には数多のエンブレムが輝いている。
そんなともさんのことを自慢げに語ったら、ともさんは照れくさそうに笑い、らっだぁには知ってると一蹴された。
「ラーターミー、覗くくらいなら入って来なよ?ともさん別に怖くないから」
「ピピ…ギィ、ギィー」
「なんて言ってる?」
「「俺らには呪いが強くて無理」ってさ」
「あー…無理しなくて大丈夫だよ、避けられるのは慣れてるし!」
「はぁ〜…うちのラタミが弱くてすみませんねぇともさん。何せ戦闘もまともにできない雑魚どもでして〜」
突如ガタンっと家全体が揺れる。俺は取り乱したが、ともさんはわぁ〜と言いながらちゃんと立っているし、らっだぁは呑気に茶を啜っている。さっきの発言からして十中八九ラタミの仕業なのだろう。早く謝るか撤回するかしてくれ!!
「はい、しゅーりょー。落ち着けって」
らっだぁがパチンと指を鳴らせば揺れは収まった。彼の周りに数体のラタミが現れ、彼の髪や服を引っ張ったり、体に噛み付いたりしている。それらには気も留めず、揺れのせいで落ちた食器や本を綺麗に戻していた。
「てか、お前ら早く帰れよ」
「あ、ほんとだもう日落ちちゃうね。ぺんちゃん名残惜しいけど帰ろっか」
「はーい、らっだぁまたな!」
「……じゃーな」
らっだぁと別れ、彼が作ってくれた出口への一本道をともさんと歩いた。そこで、お土産として持って来ていたはずのヤグルマギクを渡しそびれたことに気づき、戻ろうと思ったがともさんに止められた。
「…ヤグルマギク、渡さなくて良かったよ」
「へ?なんでっすか?」
「………ちょっと、ね、色々あるんだよ。らっでぃとヤグルマギクには」
「…ふーん?じゃあ、やめます」
その言葉を聞き、ともさんはニコリと笑ってまた歩き出した。
ともさんとぺいんとが帰ったあと、静かになった室内で本を読もうと本棚に手をかけた。すると背後から扉の開く音。振り向けば、1匹のラタミがこちらを気遣うような顔色で立っていた。
「なーに?」
「…ギィ、ピィー」
「…また、あいつら入ってこようとしてたの?懲りないね。…入れるわけないのに」
念の為術式を再度かけて強化しておこう。向こうには俺が認めるほど頭のキレる魂がいる。いつこれが破られてもおかしくはない。
「……いい加減、俺の事諦めろよ」
コメント
5件
ラタミ可愛い
ウラベさんお疲れ様です!! まだまだ謎ばかりなお話ですね!続きが楽しみすぎます! 少し早めですけど、一応、よいお年を!! 寒いので体調に気をつけてください!
はぁ〜っっ...!やべぇ...此奴...中々やりおる...(誰?)続きが楽しみだ...