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「noob、その上の棚、届く?」
「んー……ギリギリ。……あ、ちょっと踏み台借りるね」
研究室の奥、備品を詰めたロッカーの前。
eliotが下の箱を整理して、noobが上段に器具を戻していた。
「よいしょっ……あ、これでラスト――わっ!?」
金属の棚が少し傾き、足場がずれて、
noobの身体がふわりと後ろへ倒れた。
「noobっ!?」
支えようとしたeliotの腕も巻き込まれ、
二人まとめてロッカーの中に押し込まれるように倒れ込んで――
ガチャン。
扉が閉まる音。
一瞬の静寂。
「……えっ、閉まった?」
「……うそ、鍵……」
外に伸ばした手は、扉の内側に当たるだけ。
完全に、密室。
暗くて狭い空間。
noobの背中に硬いロッカーの壁。
目の前には、Eliotの息づかい。
「……ごめん、僕、受け止めきれなかった……」
「ち、違うよ、僕が落ちたから……!」
焦って言い訳を交わすけれど、
距離が近すぎて、どちらも息が上ずっていた。
Eliotの手が、noobの肩にそっと触れる。
「怪我、してない……?」
「だ、大丈夫……。ただ…ちょっと狭いというか」
「……そりゃそうだよね」
Eliotが小さく笑う。
笑いながらも、顔はすぐ近くにある。
互いの吐息が頬を掠める。
指先が触れた瞬間、ふたりの動きが止まった。
「……早く誰か、来ないかな」
「……うん」
その声が、
息と混ざって、わずかに震えて。
どれくらい経ったのか、時間の感覚が薄れていく。
ロッカーの中は少しひんやりしていて、noobの肩が小さく震えた。
「……寒い?」
Eliotがぽつりとつぶやく。
「えっ……う、ううん、平気だよ」
反射的に否定する声は、いつもより少し高い。
それでも、Eliotは静かに息をつき、
そのまま、ためらいがちに手を伸ばした。
指先がnoobの髪に触れ、
濡れたように艶を帯びた束を、そっと耳にかける。
「……少し、汗かいてる」
「えっ、あ……ご、ごめん……」
「違うよ。……僕もだから。」
微笑むEliotの声が、すぐ目の前で響いた。
暗闇の中、ほのかに息が混ざる。
視線は合わない。
けれど、互いの距離を正確に感じ取れるほど近い。
「なんか……こうしてると、時間止まったみたいだね」
「……だね。ちょっと気まずいけど」
ふっと、ふたりとも笑ってしまう。
その小さな笑いが、ロッカーの狭い空間に柔らかく弾ける。
笑い終わると、また静寂。
静寂の中に残るのは、
息づかいと、わずかな体温だけ。
Eliotがほんの一瞬だけ、
noobの肩に額を預けた。
「……こうしてる方が、あったかいね」
「……うん」
それだけ。
それ以上は、どちらも動かない。
でも——この距離が、なぜか心を落ち着かせた。
狭いロッカーの中、息をするたびに互いの吐息が触れあう。
湿った空気が肌をなぞって、音すらも飲み込んでしまうようだ。
Eliotの腕が、noobの肩にかすかに触れた。
それだけで、ぴくりとnoobの体が反応する。
「……ごめん、狭いから……」
Eliotが小声で言う。けれど、その声も妙に掠れていた。
「う、うん……」
noobの返事もどこかぎこちない。
少しの沈黙。
Eliotは、ふと呼吸を整えようと目を閉じた——はずだったのに。
心臓の音が近い。
noobの体温が、すぐそこにあった。
(……なんで、こんなに近いんだろう)
触れないように意識するほど、
逆に体が勝手に動いてしまう。
気づけば、Eliotの手がnoobの背に回っていた。
ぎゅっと抱き寄せる。
「……っ、え、Eliot?」
「……あ、ごめ……なんか、気づいたら……」
言葉が途切れる。
Eliotはほんの少しだけnoobの肩に額を押し当てた。
「……大丈夫、怖くないように、って……思っただけだから」
「……別に、怖くなんて……」
そう言いかけたnoobの声が、Eliotの胸に吸い込まれる。
そのまま、ふたりとも動けなくなった。
鼓動だけが、重なるように響いていた。