ロッカーの中。
狭くて、少しでも動くと互いの体が触れ合う。
暗闇の中で、noobは息を詰める。
「……ごめん、動けない」
すぐ耳元で、eliotの声が響く。
吐息が、かすかに耳を撫でる。
「……っ!」
思わず、noobの肩がびくりと跳ねた。
「大丈夫? 怖い?」
その声はいつもの穏やかさのままだけど、距離があまりに近すぎる。
鼓動がどっちのものか分からないほどに重なって、noobは思わず顔をそらす。
「だ、だいじょうぶ……です……」
声が震えているのは、狭さのせいなのか、息の近さのせいなのか。
ほんの数センチ、eliotが息を吐くたびに、noobの耳が熱を帯びていく。
その小さな反応に、eliotもまた黙り込んだ。
狭い空間に満ちるのは、静寂と、互いの呼吸だけ。ロッカーの中は、最初よりもずっと狭く感じた。
肩が触れそうで、でも触れない距離。
noobの息が、すぐそばで小さく震える。
「……eliot…」
名前を呼ぶ声が、いつもより近くて、
その響きに、胸の奥がかすかにざわつく。
「ごめん、狭いね。もう少し我慢して」
そう言って、少しだけ体をずらしたはずなのに、
逆に距離は近くなってしまっていた。
noobの髪が頬にかすめる。
柔らかな香りがして、
その一瞬が、やけに長く感じた。
静かな空気の中で、二人の鼓動だけがやけに大きく響いている。
どちらも顔を上げないまま、
この沈黙を破ることができなかった。
ロッカーに入ってしまってから、
数時間たった。
がちゃり、と金属の擦れる音がして、
突然、狭い空間に光が差し込んだ。
眩しさに目を細めながら、noobが先に顔を上げる。
誰かの影が外に見えたけど、姿も声もわからないまま、
その人は何も言わずに鍵を外して去っていった。
「……開いた、のかな」
noobが小さく呟く。
その声でようやく現実に戻るように、
eliotもゆっくりと動き出した。
二人で体を起こすと、
ロッカーの外の空気がひんやりしている。
それなのに、肌にはまだ、さっきの温度が残っていた。
「……助かったね」
そう言いながら、eliotは微笑む。
けれどその笑みの奥には、
ほんの少しだけ寂しさが混じっている。
もう少しだけ、あのままでいたかった。
そんな考えが頭の片隅をかすめて、
自分でもどうしてか分からなくなる。
一方のnoobは、頬がまだ熱い。
顔を隠すように視線を落とし、
「……早く、帰ろ」
とだけ言って、立ち上がる。
その背中を見送りながら、
eliotは小さく息を吐いた。
——狭くて息苦しかったはずなのに、
もう一度あの静けさに包まれたくなるなんて。
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