第13話:最後の対峙:血の協定の果て
登場人物
オスマン:外交官(決意の実行者)
グルッペン:WrWrd軍総統
ひとらんらん:スパイ(逃亡中)
トントン:書記長
本文
深夜、WrWrd軍総統執務室。グルッペンは、静かにデスクに座り、オスマンが来るのを待っていた。彼の前には、書類ではなく、W国との国境線を示す古い地図が広げられていた。
ドアが静かに開く。入ってきたオスマンは、いつもの明るい外交官の姿ではなく、W国にいた頃の厳格な一族の礼服を身に着け、軍用のライフルを肩に担いでいた。
オスマン「グルッペン。今夜、僕は君を殺すメウ」
オスマンの声は震えていたが、その瞳には家族を守るという揺るぎない決意が宿っていた。
グルッペン「来たか、オスマン。やはり、お前は家族を選んだな。それがお前の血の協定というわけか」
オスマン「そうだ。君は僕たちを駒にし、家族の命を人質に取った。僕たちの隠し事を逆手に取って、僕たちを裏切り者に仕立て上げた! これ以上、家族を危険に晒すわけにはいかない」
オスマンはライフルをグルッペンに向かって構える。
オスマン「動くな、グルッペン。君が死ねば、W国は交渉のカードを失い、僕の家族は一時的に安全になる」
グルッペン「それでいいのか、オスマン。お前が私を撃てば、お前の家族は**『裏切り者の家族』**として、W国からもWrWrd軍からも、永遠に追われることになるぞ」
オスマン「それでもいい! 生きてさえいてくれれば!」
オスマンが、引き金に指をかけたその瞬間。
執務室の窓ガラスが激しい音を立てて砕け散った。
ひとらんらんだった。逃亡中の彼は、黒い戦闘服を纏い、背中にはゾムが見抜いた特殊工作隊のナイフを差していた。
ひとらんらん「待て、オスマン!」
ひとらんらんは、オスマンとグルッペンの間に飛び込んだ。
オスマン「ひとらん! 邪魔をするな! 君も家族を守りたいんだろう!」
ひとらんらん「違う! 僕は、君に殺させたくない!」
ひとらんらんは、砕け散った窓枠から転がり込みながら、オスマンのライフルの銃身を、自分の体で押し上げるようにして逸らした。発射された弾丸は、グルッペンの頭上をかすめ、壁に大きな穴を開けた。
グルッペンは、動揺することなく、ただ椅子に座っていた。
グルッペン「ひとらんらん。お前は私を殺すために戻ってきたのではないのか」
ひとらんらんは、血の滲む手でナイフを握りしめ、オスマンを庇うようにグルッペンと対峙した。
ひとらんらん「……僕は、君が仕掛けた最後の罠に気づいたんだ。グルッペン」
ひとらんらんは、ゾムとコネシマを振り切った後、W国に流した情報が二重の罠であることを、逃走中に再分析して理解していた。自分が裏切れば裏切るほど、W国が不利になるように仕組まれていたのだ。
ひとらんらん「僕が君を殺せば、君は**『裏切り者に殺された英雄』となり、WrWrd軍はW国への報復の大義名分**を得る。そして、W国は崩壊し、オスマンの家族も僕の家族も、戦火の犠牲になる!」
ひとらんらん「君は僕たちを裏切り者にするのではなく、**『W国との全面戦争を回避するための生贄』**にしようとしていたんだ!」
その言葉に、オスマンはライフルを床に落とした。自分がグルッペンを殺すことが、最愛の家族を殺すことに繋がると悟ったのだ。
グルッペンは、ようやく立ち上がった。
グルッペン「フフッ……流石だ、ひとらんらん。そこまで読み解くとは」
グルッペン「そうだ。お前たちの過去の隠し事、全てがW国との和平交渉のカードだ。お前たちが真の裏切り者となり、私の命を奪おうとした時、W国は初めて、家族という人質の無意味さに気づき、交渉に応じる最後のチャンスを得る」
グルッペンは、胸を張って言った。
グルッペン「さあ、撃て。ひとらんらん。オスマン。お前たちの過去のトラウマと血の協定に、今ここで終止符を打て」
トントンが、グルッペンの背後から静かに現れた。
トントン「……オスマン、ひとらんらん。グルッペンは、君たちが全ての隠し事と過去を話せば、君たちを**『裏切り者』**として扱うことを止め、W国との和平交渉の使者とすると約束しています」
二人は、グルッペンの冷酷な優しさと、トントンの静かな仲裁により、ついに武装を解いた。彼らの全ての行動は、グルッペンの手のひらの上で転がされていたのだ。
ここまでの隠し事の状況(13話終了時点)
オスマンがグルッペン殺害を試みるが、ひとらんらんの乱入により阻止された。
ひとらんらんはグルッペンの二重の罠を見抜き、自分の行動が戦争につながることを悟った。
グルッペンの真の目的が、W国との和平交渉のために彼らを裏切り者に仕立て上げることにあったと完全に露呈した。
二人は武装を解き、全ての隠し事と過去を話すことを決意した。







