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「……ごめんなさい。ちっとも素直になれなくて、私……」
彼のワイシャツを両手でぎゅっと掴んで、小さく頭を垂れた。
「君は、素直だよ。前にも言っただろう? 僕は、君のそういうところが好きだと」
「だけど……、」
チーフの優しい言葉が、わだかまっていた私の心を少しずつほぐしていく。
「……私なんか、身長もあって、可愛くなくて……だから、あなたに愛されなくても、それが当然なんだって……そう思っていて……」
堰を切ったように、胸にずっと抱え込んでいた思いが溢れ出る。
「僕は、180センチ以上あって、君よりだいぶ背も高いだろう? だから、大丈夫だから」
落ち着いた穏やかな声が、凝り固まってしまっていた気持ちを、ゆっくりと溶かしていく。
「だけど、私……さっきは、あんなにひどいことを言って。自分でも、なんて可愛くないんだろうと思ってて……」
「……可愛い。君は、可愛いよ、とても」
彼の眼鏡の奥にあるあたたかな眼差しに、自らをがんじがらめに縛っていた可愛いへのコンプレックスが、ほろほろとほどけていくのを感じた。
「可愛い。誰よりも、君が可愛い」
何度でも繰り返される低く甘やかな声音が、胸の奥にじわりと沁み込んで広がっていくと、
この人を好きになってよかったと、心から思えた……。