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「今夜はもう遅いから、ここで帰るな」
私の涙がようやく収まると、チーフがそう言って玄関を出て行こうとした。
「でも……、」こんな夜遅くにわざわざ来てくれたのに、玄関先で帰ってしまうだなんて……。
「気にしないでいい。今日はそれを僕だと思って、ゆっくりおやすみ」と、チーフはぬいぐるみの頭をぽんと叩いた。
「だけど、あの……」
帰ってはほしくない気持ちが湧き上がる。
「……。……帰りがたいな」
すると思いが伝わったのか、チーフがそうボソッと口にして、
「……嫌じゃなければ、キスをしてもいいか?」
と、私に問いかけた。
こくっと頷いて目を閉じると、腕に抱き寄せられ、唇がそっと柔らかに触れ合わされた。
「……好きだよ。君だけが」
「私も、あなたのことが、好きです……」
私たちのお付き合いは、そうしてこの日、本当の意味で始まったのだった──。