テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
夕暮れ前の公園。茜色の光が木の間を抜けて、道に細長い影をつくっていた。
そこに、またあいつは立っていた。
右手には、あの見慣れた紙袋。
仏「よっ。今日もまた花屋通ってんの? ……お前、花屋のポイントカードもうMAXなんじゃない?」
英「ええ、今朝ついに“ゴールド会員”になりました。年会費ゼロで、精神コスト高めです」
仏「……いや笑えねぇし」
イギリスはやっぱりいつも通りの顔だったけど、目の下の隈は昨日よりひどくなってた。
英「今日の花はこれです。どうぞ、“フランスさん”。」
仏「……は?」
英「なんですか、その顔は。“呼び方くらい変えてみよう”と思っただけですよw?」
仏「……は? なにその急なテンション。……似合わねぇよ」
英「でしょうね。自分でもそう思いました」
そこで笑うな。
そんな笑顔で、クローバーなんか渡してくんな。
紙袋の中から出てきたのは、さりげなく束ねられた――四つ葉のクローバー。
小さくて、丸っこい緑が並んでる。
一見、幸せそうなふりをしているみたいな花だった。
仏「……なんか、皮肉だな」
英「何がですか?」
仏「幸運って花言葉。お前、今ぜんぜん幸せそうじゃねーよ」
英「……ああ、そういうことですか。確かに、私は四つ葉じゃなくて、三つ葉側の国ですから」
仏「……なにそれ」
英「クローバーは“三つ葉”が普通なんですよ。四つ葉の方が、むしろ異常です」
仏「……お前、わざとそれ選んだだろ」
イギリスは少しだけ口角を上げて、うん、と頷いた。
英「異常な方を渡した方が、貴方に気づいてもらえると思って」
仏「……そういうの、ずるいぞ」
英「知ってます」
そのまま、ふたりとも黙ってしまった。
でも、沈黙は変に心地よかった。
気まずさじゃなくて、たぶん、ただ近くにいるだけで安心できるような、そんな。
仏「なあ……今日、一緒に歩いて帰る?」
僕がぽつりと言うと、イギリスは少し目を見開いて、それからふっと目をそらした。
英「……それは、ずるいです。フランスが、そういうこと言うと」
仏「ツンデレが何言ってんだよ」
英「お互い様です」
小さなクローバーを握りしめながら、僕らは並んで歩き出した。
どこまで行けるかわからないけど、それでも少しだけ、
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!