白い。どこまでも白くて、無機質で、ここが病院なのか監獄なのか、あるいはその両方なのか。
俺にはもはや判断出来なかった。
壁も床も天井も、そして時折すれ違う研究員達の白衣も、全てが漂う霧の様に曖昧だった。
研究所「ファストループ」。
それが、自分達「能力者」が暮らす場所の名前だ。
いや、暮らす、と言うよりも、「保管される」が正しいだろう。
能力者として生まれたら最後、人間でありながら人間と扱われず、ただ研究の対象として……
あるいは有事の際の駒として、この檻に閉じ込められる。
俺は、そんな現状に何の疑問も抱いていなかった。
「能力者」。
それは、ごく稀にこの世界で生まれる。
簡単に言うと、アニメや漫画でよくある「能力」を使えるようになるのだ。
ただ、そう生まれてきてしまったら、この研究所_ファストループで保管されるという結末になる。
俺は黒井乃亜。
数週間前まで、普通の高校生だった。
時は遡り、病院__
「能力者?」
「はい。」
「いや、能力者って生まれながらに能力を持つものじゃ?」
「ええ、間違っていません。ただ…」
「稀に、成長してから能力が発覚する場合がありまして…」
「…どういうことですか?」
「成長しきっていない頃…まあ、赤ん坊の時。」
「その時、能力が小さい身体に『順応しきれない』場合があるんです」
「じゃあ、それが……」
「貴方です。」
「ええ…」
「はあ…」
憂鬱だ。ただそんな感情が、俺の脳を駆け巡る。
俺の能力は、「物を操る能力」。
物同士をくっつけたり、バラバラにしたり。
鉄みたいに固いものでも、液体みたいにして操ることができる。
ただ、制限がある。
操れるのは、石ころ一つ分から、
人間2人サイズまで。
「おい」
「検査の時間だ」
「はーい」
監視員兼警備員のリアムさんに呼ばれ、俺は返事をする。
能力者は、研究者によって定期的に検査をされる。
体調、能力が作動するか、など。
それが終わったら朝食。
普通に美味しいんだけど、監視されながら食べてるせいで、居心地は悪い。
次は実験。
実験は、どんな能力を持っているかによって変わってくる。
俺だったら、目の前に物体を置かれる。それを浮かせたり、融合させたり。
それを色んな物、サイズでやる。
これで、基本的な活動は終わり。
あとは、ごはんを食べたり、本を読んで過ごす。
のはずなんだけど…
「おい、起きろ」
本を読んでいると、監視員に呼ばれる。
おっと、まだ説明してなかった。
この世界には、ランゼロというものがいる。
能力を人間の様に操れる。
そして、ランゼロ達の見た目、能力は全て異なる。
ある時は怪物のように、ある時は物体に、ある時は「概念」にもなる。
そんなランゼロが明確に示しているもの、それは__
人間への殺意。
その為、ランゼロは人間を襲撃する。
そして、その対応を俺達がやる。
「ランゼロはとてつもなく強い。」
「だからお前が呼ばれた。」
「……油断するな」
「はい」
俺は、重い足取りで監視員の後をついて行った。白い廊下を抜け、金属製の扉をいくつも通りすぎる。
研究所の奥深く、地下へ続くエレベーターに乗り込むと、耳鳴りがするほどのスピードで下がっていく。
エレベーターが停止すると、目の前には輸送機がある。
「この輸送機でお前を現場へ運ぶ。」
輸送機が発進し、数分後。
機体が大きく揺れた。
「目標地点に到達!ランゼロを確認!」
コックピットから声が聞こえる。
上から見た風景は、「街」だ。
焦げ付いたアスファルト、
半壊したビル、そして、崩れ落ちた信号機の前に、おぞましい姿が蠢いている。
まるで悪夢から這い出てきたような、不定形な影。いくつもの瞳が光り、異様な音をたてている。
あれが、ランゼロ……
輸送機から降り、
ランゼロと相対する。
地面に散らばっていた瓦礫を、能力で浮かせ、ランゼロへとぶつけていく。
ただ、ランゼロはこっちへ、明確な殺意を露にして迫ってくる。
その時だった。
「危ないっ!!」
頭上から、澄んだ声が響いた__
なんか日常組要素そんなになくてごめん!
トラゾーさんは出ないんですが、リアム看守がでるので許してね☆
んで、最後の声は誰なんでしょうか?
お楽しみに!
次↓
♡10(明日)
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