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重厚な扉をくぐった瞬間、空気が変わった。ある組織の支配する部屋──そこに、大森元貴は小さく身を縮めながら足を踏み入れた。
wki)「遅かったな」
低く落ちた声に、背筋が跳ねる。
mkt)「……す、すみません……」
か細く返事をすると、関東随一の極道組織の若頭である若井滉斗はソファに腰かけたまま、無言で指を弾いた。
「来い」──それだけで意味が通じた。
足がすくみそうになりながら、
彼の前に立つ。
その瞬間、手首を掴まれ、引き寄せられた。
wki)「何度言わせんだよ。……勝手に動くなって」
耳元で囁かれ、ぞくりと震える。
mkt)「……で、でも、ちょっとだけ……駅前まで……」
wki)「ちょっと、の問題じゃねぇんだよ」
彼は小さく舌打ちした。
その手は決して強くない。けれど逃がすつもりもない。
wki)「お前は俺が拾ったんだ。……なら、もう俺のもんだろ?」
mkt)「……はい……」
喉が渇く。
怖い。
wki)「お前は、ここにいるだけでいいんだよ」
柔らかい声。
だが、その下にある支配欲は隠しきれていない。
wki)「ほら、膝、乗れ」
命令する声に、躊躇った。
だが──逆らえば、もっと怖いことが起こる気がして、
そっと彼の膝に座った。
すぐに、腕が腰を抱く。
wki)「……素直だな」
耳元で甘く囁かれ、身体が震える。
mkt)「……っ、若井さん……こんな、俺、みっともなく……」
wki)「別に、誰に見せるわけでもねぇだろ?」
指先が、俺の顎をすくい上げる。
視線を合わせさせられると、その鋭い眼差しに吸い込まれそうだった。
wki)「俺だけ見てろ。……なぁ?」
mkt)「……はい……」
か細い声で頷くと、彼は満足そうに微笑んだ。
wki)「……いい子だ」
そのまま、そっと唇が重なる。
優しいのに、逃げられないキス。
俺は目を閉じるしかなかった。
mkt)(……もう、逆らえない……)
静かにそう悟った瞬間、
彼の手が、まるで壊れ物に触れるように、
優しく、だが確実に俺を抱きしめた。
wki)「……お前だけは、絶対に、逃がさねぇから」
静かな声に、震えながらも、
俺は心の奥底で甘い絶望を感じていた。
──夜は、まだ始まったばかりだった。
彼の膝の上に座ったまま、
俺は身を縮めて、硬くなった身体をどうにか保っていた。
彼は、そんな俺を抱き寄せながら、穏やかに指を動かす。
背中を、腰を、ゆっくりと撫でるように。
wki)「……怖がるなって。俺は、お前を傷つけたりしねぇよ」
囁かれる言葉は甘い。
けれど、背筋が冷えるのは止められない。
mkt)「……でも……っ、俺……」
wki)「ん?」
mkt)「……普通の、一般人なのに……」
彼の顔が、すっと近づく。
鼻先が触れ合う距離。
wki)「……だから、いいんだろ」
「汚れてねぇお前を……誰にも触らせた くねぇんだよ」
その声に、喉が詰まる。
怯えと戸惑いが心を侵食していく。
wki)「逃げても、無駄だぞ」
彼は静かに微笑んだ。
wki)「お前がどこ行こうが、絶対に見つけ出して、俺のところに戻す」
耳元で囁かれるたび、心臓が痛いくらい脈打つ。
彼は、ゆっくりと手を伸ばして、俺の細い手首を掴んだ。
そして、ポケットから取り出した銀のブレスレットを、 無言で腕に巻きつけた。
カチャリ──と静かな音を立てて、
それはロックされた。
wki)「……これ、外すなよ」
低い声が、優しく命令する。
mkt)「……っ、なんですかこれ……」
wki)「目印だよ」
穏やかな笑みのまま、俺の頬にキスを落とす。
wki)「これがあれば、すぐ見つけられる。……お前は、俺から隠れられない」
鳥肌が立った。
それなのに、
ブレスレットを引き剥がす勇気は、どこにもなかった。
mkt)「……はい……」
か細い声で答えた自分に、彼は満足したように目を細めた。
wki)「……いい子」
髪を優しく撫でられる。
その手のひらは、信じられないくらい温かかった。
wki)「今夜は、離さないから」
抱き上げられた身体。
ベッドの上に優しく降ろされる。
震える身体を、彼の手が、
ゆっくりと、逃げ場を塞ぐように包み込んだ。
──俺は、もう気づいていた。
これは優しさなんかじゃない。
ただ、完全な”囲い込み”だ。
ベッドの上、
彼に押し包まれる感覚に、俺は呼吸を忘れそうだった。
ブレスレットの重みが、肌の上で存在を主張している。
──逃げられない。
wki)「……元貴」
その名前を、柔らかく呼ばれる。
wki)「お前に、“俺しかいない”って、教えてやる」
そう言うと、そっと俺にキスを落とした。
優しく、けれど逃がさないキス。
そして──徐々に深く、激しく。
息ができないほどの熱に、
俺は自然と彼の腕にしがみついていた。
wki)「もう、何にも考えなくていい。……俺だけ、見てろ」
耳元で囁かれるたび、心が溶けていく。
彼の腕の中で、俺は静かに瞼を閉じた。
そこにあるのは、
恐怖と甘さがない交ぜになった、
一生逃れられない檻だった。