テラーノベル
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放課後。静かな部屋に、シャーペンの音だけが響いていた。
「ここ、なんでそうなるか分かる?」
葛葉はローレンの後ろからノートを覗き込みながら、軽く指で式をなぞる。
『…いや、それが分かんねぇんだって』
「は?ここまでやってそれ分かんねぇのやばくね」
『うるせぇな』
口では文句を言いながらも、ローレンは真面目にノートに向き直る。
今日はテスト前で、葛葉の家で勉強会。
——ただし、問題がひとつ。
「ほら、ここ。こう変形して——」
葛葉はローレンの背後にぴったり座り、ほぼバックハグみたいな状態で教えている。
肩に軽く触れる距離。
腕が伸びれば、そのまま包み込める距離。
そして何より——
「で、ここに代入すんの」
話すたびに、耳元にかかる息。
『……っ』
ローレンの肩がびくっと揺れる。
「聞いてる?」
『き、聞いてる』
声が少しだけ上ずる。
(近すぎだろ…)
内心ではそう思っているのに、離れてくれとも言えない。
むしろ、変に意識してしまって動けない。
「じゃあ次これ解いてみ」
『……』
シャーペンが止まる。
さっきまで分かっていたはずの式が、頭に入ってこない。
耳に残る、さっきの息の感触。
妙に意識してしまって、集中できない。
「…ローレン?」
『……無理』
「は?」
『無理、わかんねぇ』
「いやさっき教えたばっかじゃん」
葛葉は少し身を乗り出して、ローレンの顔を覗き込む。
その瞬間、ふと気づいた。
「…お前」
『な、なに』
「耳、真っ赤じゃん」
『は!?』
反射的に耳を押さえるローレン。
でももう遅い。
「なにこれ、どうしたの」
葛葉はにやっと笑う。
『ち、ちげぇし』
「なにが」
『別に、なんでもねぇし』
明らかに動揺している。
耳どころか、頬までじわじわ赤くなっていく。
葛葉はそれを見て、さらに面白そうに笑った。
「もしかしてさ」
『やめろ』
「俺のせい?」
『違う!!』
即答。でも声が裏返る。
「絶対そうじゃん」
『違うって言ってんだろ!』
耐えきれなくなったローレンは、両手で顔を覆った。
「は、なにそれ」
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#fw受け
こ う
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『見るな!』
「なんで」
『無理だから!!』
完全に顔を隠してしまう。
葛葉は少しだけ首を傾げてから、その手に触れた。
「どけて」
『やだ』
「いいから」
『無理』
軽く引っ張るが、ローレンも意地で抵抗する。
でも力の差は歴然で——
「ほら」
『あ、ちょ…!』
手が外される。
露わになった顔は、想像以上に赤かった。
目も潤んでいて、完全に余裕がない。
「…っは」
葛葉が一瞬、言葉を失う。
『見るなって言っただろ…』
「無理だわ」
『は?』
次の瞬間、葛葉はそのまま距離を詰めた。
唇が重なる。
さっきまでの空気とは違う、少しだけ静かなキス。
ローレンの思考が完全に止まる。
離れたあとも、顔は真っ赤なまま。
「…やば」
葛葉が小さく呟く。
『な、にが…』
「かわいいね」
ぽつりと、自然に出た言葉。
ローレンは一瞬、固まった。
『……は?』
葛葉は普段、そんなこと言わない。
むしろ絶対言わない。
それを知っているからこそ——
『……っ!!』
一気に顔がさらに赤くなる。
さっきよりも明らかに。
「え、そんな反応する?」
『するに決まってんだろ…!!』
また顔を隠そうとするが、今度はすぐ止められる。
「隠すなって」
『無理!!』
「かわいいのに」
『やめろって!!』
完全にパニック状態。
葛葉はそんなローレンを見て、楽しそうに笑った。
「勉強どころじゃねぇな」
『お前のせいだろ!!』
怒鳴る声も、どこか弱い。
そのあともしばらく、ローレンはまともに問題を解けなかった。
コメント
1件
わあ、もうもうもう…!これ、めちゃくちゃ良いですね!勉強会の設定なのに全然頭に入ってこないローレンの気持ち、すごく分かります。背中越しに教えられる距離、耳元にかかる息…そういう些細な感覚が、逆に意識しすぎて思考を止めちゃうんですよね。葛葉の「かわいいね」が自然に出ちゃったところ、普段言わないタイプだからこそ破壊力抜群でした。ローレンのパニック具合が可愛すぎて、このあとちゃんと勉強できたのか気になります(笑)