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俺はサナエの話に耳を傾けた。
俺がここに来た理由はただ一つ……。それは【どうしてミノリたちが俺を怒ったのか?】……その理由を知るためだ。
じゃなきゃ、軽い記憶喪失になってしまうような場所に来るわけがない。(今回から、それを無くしてもらったため、ほっとした)というか、本当は来たくない。
とまあ、この話は置いといて。そろそろ本題に入ろう。
「じゃあ、今からあの子たちがあなたを怒った理由を教えるわよ」
俺はゴクリ、と生唾を飲み込んだ。
ついに真実が明らかになると思うと、なんだか緊張してきた。
落ち着け! こんなことで緊張してどうする! と自分に言い聞かせると、大きく二回深呼吸をした。
ちなみに、人は冷静さを失うと自分の実力の半分も出せないそうだ。(『緋〇のアリア』じゃねえか)
これを逆に考えると、どんな状況になっても顔色ひとつ変えないやつが冷静さを失うと非常にまずい状況に陥るということだ。
まあ要するに、【何事も加減が大事】だということだ。
「ああ、よろしく頼む」
「コホン、それじゃあ、あの子たちが、あなたを怒った理由を説明するわよ」
サナエが語り始めると、俺は覚悟を決めて一言一句聞き漏らさないぐらいの気持ちで聞き始めた。
なぜなら、今から始まるのは、俺のこれからの人生を大きく左右するものだからだ。
「あの子たちがあなたを怒った理由……それは……」
「それは……?」
「……あなたがゲートの仕組みをあまり知らなかったことが原因よ」
「…………え?」
俺は予想外の答えに思わず、そんな声を出してしまった。ま、待て待て待て待て待て待て! 今の話が本当なら、俺がゲートの仕組みを知らなかっただけで、脳みそを弄られそうになったことになるぞ!
というか、ゲートの仕組みなんて知ってるわけないだろ! 俺が知ってるのは、せいぜい自衛隊が異世界に行く話だよ!!
「どう? 真実を知った感想は」
俺はハッと我に返るとサナエにこう言った。
「どうもこうもない! 今のが本当だとしたら、俺にどうしろって言うんだ? 俺はそもそもゲートなんてものはドラ○もんの『ど○でもドア』と似たようなものだと思ってるんだぞ!」
「それは、あなたの世界での認識でしょ? あの子たちの世界の認識が、そうじゃないのは当たり前じゃない。異世界なんだから……」
異世界……。その言葉がサナエの口から出た時、俺はあいつらが異世界の住人であることを思い出した。そうだ……あいつらは異世界人だ。俺の世界での常識とあいつらの世界の常識に相違点があるのは、当然じゃないか。
しかし……。
「だとしても、俺の脳みそを弄ろうとするのは、おかしいだろ!」
「……そうね。たしかに、それはやりすぎね。でも……」
「でも?」
「……あなたも、半分くらい悪いのよ?」
俺は不思議に思った。
俺がゲートの仕組みをよく知らないからってどうして悪くなるんだ?
そもそもの原因は、あいつらがそういうことを何も言わないままゲートをくぐり始めたせいじゃないか! 俺は何も悪くなんかな……。
「悪いわよ、十分すぎるくらい……ね」
またサナエが俺の思考を読んだ。
まったく、どうして俺の考えていることが分かるんだ? これじゃあ、まるで……。
「あの子たちが使う魔法のようだ……って、言いたいんでしょ?」
「やっぱり……そうなんだな」
「ええ、そうよ。でも、その件はまた今度ね」
「ああ、そうだな」
間違いない。こいつの魔法は相手の思考を読み取ることができるものだ。
厄介な魔法だな……。まあ、今はそんなことよりも。
「俺が半分くらい悪いって、どういう意味だ?」
「そのままの意味よ」
「それが分からないから訊いてるんじゃないか」
「そう、それならその体に直接教えてあげるわ」
サナエの姿は見えないが、何かが近づいてくるのが分かった。
ミノリの時は殺意を感じたが、サナエからはそれが感じられなかったため、俺はその場に留まった。
やがて冷たい何かが俺の右手に触れたが、その冷たさは時間が経てば経つほど無くなり、温かくなっていった。
「じゃあ、今からあなたの脳に直接、私の考えている事を伝えるから目を閉じてちょうだい」
「わかった。手短に頼むぞ」
「ええ、なるべく、そうするわ。じゃあ、いくわよ」
「ああ」
俺は目をゆっくりと閉じた。
「思考回路に接続、インストール!」
____数秒後。
「…………もう開けていいわよ」
俺が目をゆっくりと開けると、そこには。
「なんだよ、これ…………」
巨大な図書館がそびえ立っていた。
それもただの図書館ではない。
図書館自体が動いているのだ。
わかりやすく言うと生命を持った図書館だ。(ハ○ルの動く城じゃねえか)
俺がその大きさや形に興奮していると、いつのまにか図書館の中にいた。
その直後、俺の背後から話しかけてきた者がいた。
「いちいち反応してたら時間切れになるわよ! さあ! さっさと行くわよ!!」
「うおっ!」
俺はそんな声を出しながら、声のした方を向いた。
すると、そこには白いうさぎの耳のようなものでパタパタと飛んでいる球体があった。
その球体には、目が一つしかなく、それ以外に目立った箇所はなかった。
いや、まてよ? と俺は一つの疑問を抱いた。
「なんかこれ、ハ○ーポッターシリーズに出てくる黄金のス○ッチに似てるような気がするな」
俺がそう言うと、その球体は俺の頭の上に止まって。
「私はスポーツには使えないわよ、ナオト」
サナエの声でそう言った。
「え? お前もしかして、サナエ……なのか?」
「ええ、そうよ。ほとんど実体がない私の代わりに、私の使い魔にしゃべらせているの」
「え? どうしてそんなことするんだ?」
「うーん、まあ、その方が話しやすいから……とでも言っておきましょう」
「なるほど。まあ、そういうことにしておこう」
「物分かりのいい人は嫌いじゃないわ」
「そりゃどうも」
俺たちはそんな会話をした後、図書館の中を進み始めた。
しかし、世界中の図書館を見た後にここに来たら、きっと小さく見えるだろうな……。
天井があるのかすら分からない館内を歩いているうちに、目的地に到着した。
「ここは一体、何なんだ?」
「ここは私が得た知識を保管している図書館の中心部よ」
「中心部? ……ってことは、何か大事な情報がここにあるってことか?」
「ええ、そうよ。そして、これがその大事な情報の一つよ」
球体の目が光ると同時にフワフワと一冊の黒い本が飛んできた。
それは俺の手に収まると、ひとりでに開いた。
大きさは大体、大学ノートぐらいで厚さは辞書並み。だが、あまり質量を感じなかった。
例えるなら……そう、その辺に転がっている小石十個分ぐらいの重さだ。まあ、今はそんなことよりも。
「この本の内容を理解することが先決だ、でしょ?」
「俺の思考をいちいち読むのはやめてくれないか?」
「はいはい」
「返事は一回」
「はーい」
こいつのペースに乗せられたら話が一向に進まない。できるだけ無視しよう。
「で? この本には何が書いてあるんだ?」
「えーっとね、確かゲートの仕組みと……」
「仕組みと?」
しばらくサナエの声がしなくなった。何か極秘の情報をうっかり言いかけてしまったようだ。
「サナエ、俺は何も訊くつもりはないから、話を続けてくれ」
「あら、そう。でも、気にならないの?」
「今はゲートの仕組みを知ることの方が大事だからな。それは、また今度でいいよ」
「そう……。なら、この本に書いてある内容を分かりやすく丁寧に伝えるから聞き漏らさないようにしてね?」
「ああ、分かった」
俺が近くにあった木製の椅子に腰を下ろすと、サナエの使い魔が俺の頭の上に止まり、ゲートの真実を語り始めた……。