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ずっと家に居る。
なんて贅沢な時間なんだろう。
初めて亮のマンションに来た時に
この素晴らしい眺望を見て驚いた。
また、ゆっくり眺められる幸せ
ただ違うのは、カフェインレスの紅茶にミルク
をたっぷり入れて飲みながら、
お腹の赤ちゃんと一緒に見られること。
また…
亮と再会した時のことを思い出している。
「新しく来られた藤堂課長です」
そう紹介された時の衝撃‼︎
「嘘!」
それが、2年も前に私を見つけていて、
同じ部に異動して来る為に頑張ってたとは…
ホントに驚いたし、嬉しかった。
それから…素直に、
恋人として付き合ってくれて居たら…
もっと楽しい3年間になっていたはずなのに、
亮は、私が『結婚出来ない!』って言ってたから、
恋人ではなく、都合の良い女を演じさせてたんだ。
それが突然、『恋人だった!』とか、『婚約者だった』とか『政治家になる!』『舞と結婚する』とか
何がなんだか分からないまま…
バタバタと時が過ぎた。
ようやく、ゆっくりと喜びを味わう時間が出来た。
「亮、幸せだよ。ありがとう〜」
「赤ちゃん、私たちの所に来てくれて、ありがとう。元気に生まれて来てね。」
素敵な景色を見ながら、涙が流れた。
もっともっと昔のことを思い出した。
高校1年生の時、初めてテニス部の《《藤堂部長》》と話したこと。
「私、やっぱり生意気だったかなぁ?」
「きっと、亮じゃなかったら、干されてたよね」
「でも、あの時に告白されて、パパと付き合い出したんだよ〜」と、赤ちゃんに話しかけてた。
「パパは、ホントに良く気が利いて、周りの意見をどんどん取り入れて、素晴らしい部長だったのよ。」
「ママは、そんなパパが大好きで、すごく幸せだった。」
「パパが大学生になって、少し距離が出来て、でもママは好き過ぎて、パパを困らせちゃったの。」
「だから、離れちゃったんだよね。大好きだったのに…」
「今なら分かる。子どもだったんだよね。」
「やっぱり、ママは昔からパパが大好きなんだよね。これからは、ママがパパを幸せにして、赤ちゃんも幸せにする♡だから、元気に生まれて来てね。」
そのまま、眠気が襲い、ウトウトと眠ってしまった。
*****
「舞!」
「ん?」
「良かった〜」と抱きしめられた。
「ん?あ!ごめんなさい、眠っちゃって…」
「返信がないから、何かあったのか?と思って急いで帰って来た。」
「ごめ〜ん、気持ち良くてウトウトしてた。」
「ううん、良かった」
「ありがとう〜♡」って舞もぎゅーっと抱きしめた。
「ダメだな、こんなことで心配になって慌ててる俺、舞が好き過ぎて…」
「亮!嬉しいよ、ありがとう〜」
涙が流れた
「ん?大丈夫か?」
「うん」ジーっと見つめる舞
亮は、指で舞の涙を拭い
自然に2人、唇を重ねる
「悪阻、大丈夫?」
「うん、もっと〜♡」
「喜んで♡」
「ふふ」
「あー舞〜好き〜♡」と、ソファーに座ってる舞を
抱きしめる
「あ、ご飯の用意しなきゃ〜」
「もうちょっと…」
「でも…」
「ゆっくりでイイ。あとで一緒に作ろう。」
そう言って、キスをする亮
そして、お腹を撫でる
「あんまり、負担をかけちゃダメだよな。ごめんな赤ちゃん。」
「ふふ」
「でも、キスだけならイイかな…」
そう言って、優しいキスを何度も何度も…
舞から離れられなくなっている
「愛してる♡」
すごく驚いた!
こんなにハッキリ、初めて聞いたかもしれない
「ね〜」
「ん?」
「もしかして、今までで《《今が》》一番愛されてる?」
「そうかもな、ずっと好きだけど…今はずっとこうしてたい!」
「ふふ、私も愛してるよ♡」
「舞〜♡」
キスが止まらない…
「あー抱きたい」
「ふふ、それは無理だね」
「うん、分かってる。だからいっぱいキスする」
「う〜ん…」
何度も何度も…
「落ちついた?」
「うん、一晩中してられるけど…これ以上したら、全身にしちゃうから…」
「ふふ」
最後に熱い熱いキスをもう一度して、抱きしめられ、
ようやく離れた亮
「ご飯の用意する?」
「うん、しようか…」
そーっと起こされ、ようやくキッチンへ
でも、料理を手伝いながらも、時々キスをする亮
「もう〜♡」
「ふふ♡」
ようやくイチャイチャ出来るようになったような気がする。
赤ちゃんは順調に育ち、翌週、クリニックへ行った時に、「もう大丈夫だね。じゃあ母子手帳をもらいに行ってくださいね」と言われ喜んで役所へ行った。
その日、亮は、忙しそうだったから、クリニックへは一緒に行けなかった。
母子手帳をもらって嬉しくて、帰りに亮の仕事場を覗いてみた。
スタッフの方が居らっしゃって
「こんにちは」と話しかけた。
いつもなら、にこやかに「こんにちは」と返してくれるのに、何やら驚いておられる。
「あ、急に来てしまってごめんなさい。近くまで来たので…主人は?」
「あ、いらっしゃい。今ちょっと来客中で…」
「忙しいですね。いえいいんです。ごめんなさい。時間があればいいなぁと思っただけなんで…では、失礼します。」
そう言って帰ろうとした時、奥の部屋のドアが開き、
中から亮と女の人が出て来た。
「え?舞!」
「あ…」見覚えのある女の人だった。
「あら〜奥さん!ホントに奥さんになったのね。良かったわね。覚えてる?あの時は、どうも…」
亮が大学で言い寄られてる女が居るから、婚約者の役をして欲しい!と頼まれて、最後に会った人だ。
何度も頼まれたけど、この人が最後の人、ド派手でインパクトが凄かったから覚えている。
でも、どうしてココに?
何をしてたの?
2人きりの部屋で…
「この度は、おめでとうございます。
お祝いに来ただけよ。ふふ、じゃあね。」
香水の匂いがプンプンして、気分が悪かった。
「舞、どうしたの?急に…」
「帰る…」
「舞!」舞の腕を掴む亮
「ごめんね、忙しいって言ってたのに急に来ちゃって…なんだ、こういうことだったんだ。そりゃあ忙しいよね。」
「舞、何言ってるの?ゆっくり話そう、中に入って」
「何を?言い訳を?そんなの聞きたくないよ」
「舞!ごめん心配させて…」
スタッフさんの前だったが、構わず舞を抱きしめる亮
舞は、驚き、我に返り
「離して、中に入るから…」
そう言って、亮の部屋の中に入った。
「ホントにお祝いに花を届けに来てくれただけなんだよ。」と、高価な鉢植えを指差す。
「大学の時の同級生からって、何人か合同でしてくれた物だから…」
「ふ〜ん、そうなんだ。前からあの人が来るって予定入ってたの?」
「ううん、ホントに急に…」
「そうなんだ。ごめんなさい、私、勘違いして…」
「ううん、クリニック、一緒に行けなくてごめんな。」
「今日だけは、一緒に行って欲しかった。だから…あの人と会うためかと思っちゃった…」
「違うよ、ごめん…」
「ううん。見て〜母子手帳貰えたよ。嬉しくて…
だから、早く見せたくて…」
そういうと、涙が溢れた舞
「舞…」
「あ、ごめん、どうしたんだろう〜嬉しいはずなのに、なぜか涙が…おかしいね、私…」
亮は、優しく舞を抱きしめた。
「すぐに見せにきてくれて、ありがとうな。ホントに良かった。」
「これからは、私、もっと強くなるね!
ママになるし…何でも自分で出来るように…
もう亮に迷惑かけないように…」
そういうと、また涙が溢れた
「ううん、2人で一緒にだよ。1人で頑張り過ぎないで!ごめんな、今日みたいに、忙しい時はあるけど…」
「ううん。ありがとう〜あ、余計、お仕事の邪魔しちゃったね。ごめん。」
「ううん。舞のことより大事なことなんてないよ。
頑張って早く仕事終わらせるから、家で待っててね。帰り1人で大丈夫?」
「うん、ゆっくり帰るから大丈夫。」
「じゃあ、気をつけてね。ゆっくりゆっくり。」
「うん、じゃあね。」
スタッフさんにも、「お騒がせしてすみませんでした。お邪魔しました。」と頭を下げて帰った。
事情は、分かったけど、あの女の人の顔と声が頭から離れない。
もう亮に関わらないで!
会いに来ないで!
その気持ちが消えなくて…
帰り道、また涙が流れて、止まらなかった。
「ホントに奥さんになったのね?」
そう言われて…
あの時、ホントは婚約者なんかじゃなかったし、
亮はずっと恋人だったって言ってくれたけど、
ホントは、恋人でもなかった。
だから、婚約者のフリが出来たんだ。
『亮、バカだなあ、こんな女に引っかかって…』って思ってた。
でも今は、結婚したから、妻だから、
もう亮に近づかないで欲しい!
誘惑しないで欲しい!
何もなくても、そう思ってしまう。
きっと、自分に自信がないからだ…
亮を誰にも取られたくない!
ずっと、1番じゃないって思って来たからかなぁ〜
どんよりした気持ちで家まで帰った。