テラーノベル
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翠『 何見てるの ? 』
夢中になってテレビのドラマを観ている妹を横目にすちはマグカップを持ちながら母親に聞いた。
母は『知らないの?』と首を傾げてから洗い物をしていた手を止めた。
_『 最近 流行ってるらしいの 、夢みたいな 恋愛ドラマ なんですって 。 』
翠『 へぇ … 。 』
翠「 … 夢 みたい 、か 。 」
マグカップの中に残る珈琲を口に運びクライマックスに差し掛かろうとしているドラマを観た。
幻想で押し固められたような恋愛ドラマで、
すちはそんなことは現実で存在なんかしないのに、何が面白いのだろうと少し呆れ気味に観ていた。
_『 やっぱり 女の子 は アタック されるのが 好きなのかもね 。 』
翠『 まあ … 、女の子 は そうかもね 。 』
ドラマの中の女性をらんに置き換えて考える。
そして、すちの頭の中に浮かんだドラマの中の男性はなつだった。
翠『 … … 、 』
そこで湧いたあまりにも醜い自身の気持ちに吐き気をもよおした。
唇を痛みがわからなくなるほど強く強く噛んで、眉を寄せて気味悪く赤く染まった目を俯いて髪で隠す。
_『 ちょっと 、顔 すごいわよ ? 』
翠『 ぁあ 、ごめん 。 』
翠『 … 外 出て ランニング でも してくる 。気分転換 、なるかもしんないから 。 』
_『 わかったわ 、23時 には 帰ってきてね 。 』
翠『 ん 。 』
ジャージのジッパーのチャックをしめ、スマホだけをポケットにしまう。
『行ってきます』といういつもはするはずの挨拶を発さないですちは一人静かに夜の闇に消えた。
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翠「 ふぅ っ 、ふう … 。 」
ざっと3kmほどを全くとして休憩もせず走っていた影響ですちは動悸が落ち着かないでいた。
でもそれほど走ったからかすちの頭の中はついさっきと比べ澄み切っていた。
翠「 ぁ 、お金 持ってきてないじゃん … 。 」
翠『 水分補給 大事 なのに … 。 』
すちは今更になって自身が金銭を持たずほぼ手ぶらで来たことに気付いた。
大きな溜め息を吐いて仕方ないという様子でまた走り始めようとした。
_『 おい 。 』
翠『 ぅ ぁ “ ” ッ ッ !? 』
急に先程まで一切として気配を感じなかった背後から誰かがすちの肩に手を置いた。
すちはそれに酷く反応して絶叫にも近い声をあげた。
肩に手を置いた人物は心外と言いたげな絶妙な顔で未だ慌てふためいているすちに視線を合わせた。
_『 お前 … 、こっち が 叫びそうになるわ 。 』
翠『 … ごめん 、なつくん 。 』
おずおずと顔を上げてすちは一瞬その名を呼ぶのを躊躇った。
何故ならその人物はずっとすちを悩ませていたものの芯であるから。
赫『 お前 こんな時間 なにしてんの ? 』
翠『 … そっちこそ 。 』
赫『 質問 を 質問 で 返すな 。 』
翠『 … 気分転換 に 、ランニング … 。 』
赫『 そ 。 』
冷たく淡々と話を進める態度は学校で見せている彼そのままで、一方的に質問されて答えたら一言返される。
感情に波がない、考えをよむことなどもってのほか。
赫『 ん 。 』
そんな人語なのかも怪しいような言葉を綴って、すちの手にペットボトルを投げ込んだ。
冷たい、麦茶の入ったペットボトル。
赫『 それ飲んでろ 。俺 帰るから 、お前 も 補導される 前 に 帰れよ 。 』
翠『 ぇっ 、ぁ っ … ! ありがと ! 』
翠『 … 気をつけて 。 』
自分の言いたいことだけを言ってなつはすちの元を去った。
すちが最後に言った言葉なんかには反応など全く示さず、ただゆっくり帰路についた。
なつが去ったあと、すちは何故かドッと疲れた様子でそれに比例して眠気が襲ってきた。
翠『 ぅ わ 、やば … 。 』
翠『 早く 家 に 帰ろう 。 』
すちはペットボトルの中にある麦茶を一気に半分飲み干して、それからすぐに走り始めた。
翠「 なんで なつくん … 、俺 なんかに … 。 」
少し疑念を抱きながらも所々の家から漏れてくる光を横切る。
坂の上から見下ろす景色は綺麗で、空は星で埋め尽くされた。
翠( あとで 、絵に描こう 。 )
その満点の星空の儚さを絵に繋げるため、それをみせてらんを笑わせる為にすちは家へすぐに帰った。
翠『 お星様 も 、あの子 の 笑顔 嬉しいよね 。 』
そんな言葉を誰もいるはずのない空間に一人彼を想って放った。
聞いてくれても返してくれなんかしないのに。
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赫『 … くそ ッ … ゛、 』
赫『 ぁ − … なにやってんだか … 。 』
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コメント
1件
あおいです🤍 15話、読み終えました。すちがドラマの中の恋愛を“夢みたい”と醒めた目で見つめながら、頭の中でらんさんとなつくんを重ねてしまうところ、すごく苦しかったです。自分の気持ちに吐き気をもよおす描写が生々しくて、胸が締め付けられました。なつくんが突然現れて麦茶を差し出す距離感も絶妙で、最後の「お星様も、あの子の笑顔嬉しいよね」という独り言に、彼の優しさと諦めが滲んでいて切なくなりました。
稀灯 夏成🩵🍸
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