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それから、育榮高校は歴戦の強豪校たちと試合を重ねて、最終的には3位という結果になった。
貴也と森田は、何試合か途中出場させてもらうくらいで、貴也は結局、ゴールは1つも奪えずに終わった。
貴也は今回の春合宿を通じて、以下のように自己分析を行った。
★強豪校相手でも通用する武器
・抜け出しのスピード(初速)
・チェイシングのスプリント回数
★自分がゴールを奪うために重要かつ自分ができていないこと
・シュートのスピードと正確さ
・ポジショニングの予測
★センターフォワードとして全然足りないこと
・ポストプレーに必要な体の使い方
・体や足元のトラップ技術
・ヘディング技術
・ドリブル技術
貴也は、白鳥の衝撃が忘れられず、白鳥を参考として、自分も白鳥のようなポストプレーができるなりたいと思い、ポストプレーができるようにトレーニングに取り組むことにした。
そして、春合宿後に育栄高校は、夏のインターハイの群馬県予選に立ち向かっていくことになる。
群馬県予選は、主に4つの高校が代表校の座を巡って、凌ぎをせめぎ合っており、育榮高校は大筆頭であるものの、安泰なわけでは決して無い。
・前橋育榮高校
・桐龍第一高校
・前橋商業高校
・兼大高崎高校
貴也や森田はまだ2軍メンバーであるため、インターハイで出場するためには、確率としてはかなり低いものの、予選での少ないチャンスをものにするしかなかった。
貴也と森田は予選が始まるまで、コーチや2軍監督から言われた練習メニューをきっちり集中力高くこなし、練習が終わった後も、寮でサッカーの試合を見て、ゲームの流れを読むトレーニングにも取り組んでいた。
そして、ついに運命のインターハイ予選が始まった。
育榮高校は、第1シードからスタートとなり、順調に危なげなく準決勝まで駆け上がっていった。
準決勝の相手は、長い歴史の中で最も育榮高校と代表校の座を争っている、公立の雄、前橋商業高校であった。
試合当日、貴也はなんとなく自分のコンディションの良さを感じていた。
今までの予選で出場できていないため、出場できる確率は低いものの、いつでも出場できる用意をした。
そして、運命のキックオフが鳴った。
試合は前橋商業の堅い守備になかなかゴールが奪えず、後半20分のときだった。
相手ディフェンダーとの競り合いで、3年のエースストライカーの赤井が背中を強く打ち、交代をしなければならなかった。
貴也は赤井に悪いと思いながら、自分が出場してゴールを決めると言わんばかりの視線を、総監督に目配せした。
総監督も控え選手たちの顔を見て、貴也の熱い視線に気づき、貴也を出場させることに決心した。
貴也は自分の名前が呼ばれた時、嬉しいと同時に以外にも冷静な心理状態だった。
そして、今まで練習でやってきたこと、自分が得意としていることを思い出して、冷静に試合で自分がゴールまでに至るプレーイメージを描いて、ピッチの中へ入っていった。
前橋商業のディフェンダーは、貴也がピッチ外で見ていたよりも予想より強く、粘り強い守備だった。
貴也は実はこの時、白鳥のプレーをイメージして、いつもの動きではなく、どっしりと中央に構えてポストプレーをしようとしていたのだ。
味方から一度、パスが来たものの、まだまだ体が弱い貴也は、簡単にタックルで潰されてしまう始末で、いつものようなスピードを活かした動きはなく、味方もパスが出せない状況だった。
その状況にしびれを切らした天才青山は、自身でドリブル突破をし、これまで膠着状態だったのが嘘だったかのように、あっさりとゴールを奪ってしまい、そのまま試合終了となった。