テラーノベル
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ツクシちゃんはサアヤの顔を見ただけで、まず言った。
「ふぅん、不倫はしなそうで安心な子ね」
「はいっ! 職業柄クソ偽イクメン見すぎてるからそれは大丈夫でーす」
「ちょっと! 口悪すぎー」
確かにサアヤからはよく不倫してるパパの話をよく聞く。なんと子供達が情報網。小さくてもわかるものなんだねなんていつも言ってた。
「あなたは合コンがいいのかな。なるべくステータスの高い人と付き合った方がいいと思うの。幼稚園勤務をアピールして、包容力を強調、相手を幼稚園児だと思って包み込む感じを全面的に出しなさいな」
「えっ、ちょっと待って!職業言ってないんだけど!?」
「見ればわかるわよ。ほんのりミルクの匂いがするし」
確かに、サアヤは私たちの中で一番女性らしさを意識して頑張っている。でも、いつでも子供達に引っ張られず邪魔や危険にならない髪型をして、服装にも余計な金具やボタンや紐が付いていないものを選ぶ。メイクもいつも口紅がメインだから普段は薄めなのかも。
最初の会話に大きなヒントはあったものの、わかる人にはわかっちゃうのかも。保育士の鏡だね。子供のメンタルに関する勉強もして資格を取ろうと頑張っているサアヤ、幸せになって欲しい。
「さて、最後はあなたね」
私はドキドキしてこの時を待っていた。最近彼氏と別れたばかりなのを先に言った方がいいのかな。
「あなたはねぇ。……ものすごいことになってるわね」
ツクシちゃんは私の目をじっと見ただけで言った。
「え、え、どういうことですか」
「大切にされるでしょ? 特に男の人には」
大切になんてもんじゃないよ。そう思っていたら、
「前世でね、あなたすごいことしちゃったのよ。国一つ救っちゃったのね」
「どどどどういうことでしょうか」
「その国でほぼ男にしかかからない疫病か何かが流行った時に、その国の守り神に乙女を生贄に出したら収まるってご宣託がおりたの。そこで、あなたが立候補して縛り上げられて池に投げ入れられたのよ。そして願いは叶えられたと」
「えっ酷い」
「そうよ。だから、すべての男どもはあなたに恩があるの」
「でもそれって、この世界のことじゃなくないですか?」
「さあどうかしら。この世界かもしれないし、異世界かもね。生まれ変わりっていろいろあるのよ。信じるか信じないかはあなた次第よ」
「困ってるんです! どうしたら普通に愛されますか?」
「そうねぇ。今世で悪女になって、来世にとんとんを期待とか」
「そんなぁ」
「ま、いつかあなたに普通に接することができる人が現れるかもよ。それが運命の出会いってやつね」
またツクシちゃんはウインクをしたけど、私は途方にくれながら紅茶を胃に流し込むことしかできなかった。
「ごちそうさまでしたー」
その後私たちはツクシちゃんと楽しく過ごして閉店の時間になってしまった。途中から占い関係なく仕事や人間関係の愚痴を聞いてもらう大会となっていた。ツクシちゃんはニコニコ話を聞いて、たまにピリッと心に響くような事を言う。
「楽しかったね。また来ようね!」
サアヤが言った。サアヤとコトリは言われた通りに恋愛を頑張って、結果を伝えに来ると約束していた。
いいなぁ。私は悪女になったら行けばいいのかしら。
そのまま、そこから一番近くに住んでいるサアヤの家に三人で泊まって、更に喋りまくって翌日のランチ後に解散した。
楽しかったなーと電車に揺られていたら、目の前に座っていた若い男性に席を譲られた。
「えっ?大丈夫です。すぐ降りますから。ありがとうございます」
妊婦だと思われた? 二日酔いもないし具合悪く見えたとも思えないんだけど。
その彼はそうですか、すみませんと素直に座り直した。なんか、反射的に立っちゃったっぽかった。
その後、帰りに寄ったスーパーで男性の店員が私のカゴの中の食品に半額シールをささっと貼って去っていった。えっ、まだ三時なんですけど。レジの女性は首を傾げながらもそのまま通してくれたので、結構お得に買い物ができた。
ラッキー、なのかな。
その時はまだ、私は異変に気づいていなかったのよね……
週明け、私は職場で普通に働いていた。
前世のおかげなのか、大学受験とその後の大学生活も、勉強を助けてくれる人がたくさんいて頑張ったおかげで、割と名の知れた企業で働けている。
私が所属しているのは企画課。プレゼンやイベント企画をするのはもっと優秀な先輩方だけど、私の仕事はそれをフォローする事務作業や経費を算出して経理さんと話したりするのがメインだ。スター性のある仕事じゃないけど、私は自分の仕事をとても楽しいと思っている。
もちろん私も企画にもっと深く参加できることを目標に頑張ってはいるんだけど。
次の週も普通にらひたすら普通に働いていた。
しかし、最近様子がおかしい。男性社員が優しい。何も悪くないんだけど、ひいきをされているような感じに見えてしまい、女性社員に陰口を叩かれていると噂を聞いてしまった。そりゃあ、大した仕事もできないのにチヤホヤされている若い子がいたら気に入らないよね。
私は困ってしまった。入れ替わり立ち替わりお茶休憩を提案してくる先輩方、残業をさせずに会社の玄関まで見送ってくれる上司。
最近付き合っていない人たちにまで尽くされ始めている。常軌を逸してないか? もうすでに結構ギリギリだと思うんだけど。
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