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私はサアヤとコトリを誘って、例の占い喫茶へ行くことにした。お酒飲んでる場合じゃない。それぞれの仕事上がりに集合して速攻でお店に入って行った。
「あら、いらっしゃ〜い」
ツクシちゃんがいた。良かった! 今日は他の占い師さん達もいるようで、個性的な方たちがお客さんと話していて賑やかだ。
「ツクシちゃん、お願いできますか!」
私はものすごい勢いで突撃した。サアヤとコトリはまだほとんど喋っていない。
「ちょうど、たった今キャンセルが入ったのよ。びっくりよね運命か・し・ら」
そんなわけで、私たちは前回と同じ席に並んで座った。ホワイトボードによる今日の占い付きのおすすめはシナモンティー。気持ちが落ち着けて良いかも。一人で焦っている私はそれを注文した。サアヤとコトリも「じゃあ同じのにしようっと」ということで、私たちの前にはシナモンの香り漂う素敵なカップに入ったお紅茶が並べられた。
「おまたせおまたせ〜」
ツクシちゃんがやってきた。
まずはコトリの進捗報告。
「あれから2回デートして、告白される直前って感じです」
「よかったわね〜でも、今後母親に関するエピソードが出てくるかも。なるべくその場で話し合いで解決できるといいわね」
「わかりましたっ!」
次にサアヤ。
「お見合いパーティーとマッチングアプリに登録したんだけど、まだ決め手にかけるって感じでぇ」
「うんうん。妥協はいらないわ。これだ! って人に会えたら押せ押せよぉ」
「了解です!」
そして私。私の番! 私は早口で捲し立てた。
「会社の男性ほぼ全員、付き合っていない人たちにまで、それどころか見ず知らずの人にまで大切にされはじめたんだけど!」
「あらあら。もしかしたら、彼女が生贄になった歳にあなたが近づいているのかも知れないわね」
「そのせいで、女性社員に嫌われ始めたようなんです」
「うーん、それは大丈夫だと思うわ。時差があるだけで、あなたのおかげで他の女性達もとても助かったんだもの」
「いつまでこんな状態なんでしょう」
「今がピークだとは思うんだけど……イチゴちゃんの前世の彼女の亡くなった歳になったら、あなたの聖女人生も徐々に消えていくのかもしれないし、それでも続いたら彼女の秘められた望みを叶えるとか何らかのアクションが必要になるかもね。そしたら呪縛も解けるんじゃないかしらね。こういうの、専門家じゃないからはっきり教えてあげられなくてごめんね。オホホホ」
時が解決してくれるのか、何か行動しなくちゃいけないのか……
私たちは、ツクシちゃんに別れを告げ、その後軽く飲んでから解散した。店員さんが男の人だったから、おつまみをいくつもサービスされてなんだか居づらくなって早めに終了になっちゃった。一品くらいだったら、「ラッキー」で済んだのにな。
サアヤもコトリも周りからジロジロ見られて、ちょっと私の気持ちがわかったよって言ってた。
その後、驚いたことにツクシちゃんの言う通り、女性社員達も段々とそして最終的にすごく優しくなっていった。お得意様からのお土産は多めにくれるし、他の男性社員から優しくされているところを見ても、微笑ましそうに見ている。私には「お母さん」も増えてしまったのか。
そのうち、我が社では入社シーズンに次ぐ異動の季節となった。国内はもちろん、海外の提携先事務所に勤務になったり戻ってきたり、少しバタつくのだ。今のところ、私には関係ないのだが、歓迎会幹事や、社内案内に駆り出されることもある。
私の部署に、同期で入社したけれど、関西へ配属されてしまったため、会うのが二年半ぶりくらいの男性が異動してくると聞いた。横山夏樹と言って、少ししか喋ったこともないけれど、嫌なイメージはなかったので仲良くできたらいいなと、普通に思った。仕事はもちろんできるから本社に呼ばれたのだろう。
彼の出社日、記憶よりも凛々しく育っていた彼は女性社員からの注目のされ方が半端なかった。若い上に優秀な人材と知られていたため、男女問わず彼と話をしたがった。
笑顔を浮かべ受け答えしているものの、私には上辺だけの笑顔に見えたし、とにかく早く仕事に取り掛かりたいという感じだった。
この人はきっと真面目な人なんだな。でもどうせこの人もそのうち私に優しくなるんだろうなと、ちょっと傲慢な考えが頭をよぎった。まだ同じところで働き始めて日が浅いから、今のうちだけでも対等にいられたらいいな、そんなふうに思っていた。
その二日後が金曜の夜で、彼や他の異動者の歓迎会が開かれたわけだが、彼の周りには女性社員、私の周りには男性社員が陣取るように座っていた。彼は私の様子を見て驚いていたけど、少し嫌な顔をしてから自分の周りの女性たちと和やかに話していた。
あー、私のこと男ばかりを周りにはべらかせて変な女だと思ったんだろうな。せっかくの同期、仲良くしたかったけど、悪い印象ってなかなか頭から離れないと思う。無理かもしれない。それにしても彼もモテモテのようだ。普通に既婚者の主任たちもチヤホヤしている。普段から優しい人たちだけどちょっと珍しい風景。
途中でトイレに行ったら、帰りの廊下でぼんやり立っている彼を見つけた。私はせっかくだからと近づいていって、
「入社式以来だね! 同期としてよろしくね」
と笑顔で言った。そのまま通り過ぎようとしたら、
「チッ」
と、舌打ちが聞こえた。
えっ?
挨拶して舌打ち?