この作品はいかがでしたか?
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「リョウやっと出てくれた」
やはりマオだった。
「この番号は?」
「だって前の番号だと出てくれないから、買い替えたんだよ」
「この間、大学まで来たって先輩が言ってたけど」
「アイツ使えないよね」
「もう連絡したり、大学まで来るのはやめてくれ」
「別にリョウに恋人がいてもいいよ。今までだって他に女がいたでしょ。1番になるまでいつまでも待つから」
話が通じない、物分かりのいい都合のいい関係だと思っていたのに、こんなに考え方にズレがあるとは思わなかった。
「俺たちの関係はあくまでも性欲を満たすだけの都合のいい関係で必要がなくなればそれで終了だと最初に言っただろ。俺にはもうキミは必要ない、他の男を探してくれ浜田真央さん」
先輩から聞いた名前をあえて言ってみると、一瞬間が開いてから「リョウくんわたしのこと調べたの」という緊張した声が聞こえてきた。
「◯◯病院に勤務していることも知ってる。だから、あまりしつこくされたら俺にも考えがある。お互い綺麗に終わりにしてキミは最初の計画通り医者をみつけるといい。それじゃ」
返事を聞く前に通話を切るとベンチのシートに深くもたれた。
目を瞑って気持ちを落ち着かせているとスマホが震え出し、ため息をついて画面をみると親父からの電話だった。
普段から特に連絡を取り合うことがないから一瞬嫌な予感がよぎり通話ボタンを押す事に躊躇しながらも電話に出ると『凌太』と名前を呼ぶ声に力が無く不安になる。
「親父?何かあった?大丈夫?」
『1週間くらい家に帰れないから伝えておこうと思ってな』
「分かった、体を大切に」
『ありがとう。凌太も気をつけて』
「じゃあ」と言って電話を切ったところに電車がホームに入ってきた。
日曜日に瞳と映画を見に行って家に送りながらドライブをしたり、大学構内では二人だったり、いつものメンバーと一緒に過ごしているうちに親父からの連絡から1週間があっという間に過ぎていた。
その間マオからの連絡もなく、ホッとした。
そして親父から今夜話があると連絡が来て帰宅するとリビングにはお袋がソファに座っていてその向かいには親父と見知らぬ青年が並んで座っていた。
その青年は学生服を着ているから高校生くらいだろうかと考えていると親父から耳を疑うような言葉が聞こえた。
「凌太の弟だ」
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